第一回部長争奪ゲームバトル2
土曜の朝、いつもなら家でダラダラしている時間だが、俺は学校にいた。なるほど、今更ながら週末の学校というのは無人というワケではないということに気がついた。部活動なのか、委員会なのか、図書室に来ているのか、そんな生徒たちがパラパラといた。グラウンドではすでに野球部の走りこみの掛け声がする。体育館ではキュッキュッとバスケットシューズの音が響く。
靴を履き替えた。中央廊下を通り、突き当りを左にすすむと建物の裏に抜ける扉が現れる。その扉を開けスノコがひかれた道を渡って行くと旧校舎だ。我がゲーム研究部の部室は一階の左の一番奥にある。要するに学校敷地内の一番隅にあるのがゲー研というワケだ。
俺はめずらしくだいたい時間通りに到着したが、居たのは部長だけだった。
「あらめずらしく早いのね彦丸君」
「いや、めずらしくみんな遅いっすねえ」
「ねえ彦丸君。聞いてもいいかしら?」
「はい。なんでしょう?あらたまって。告白ならOKですよ!」
「フフッ。やっぱ少し変わったわねキミ」
「そうっすか?」
「ええ。前はそんなこと言う子じゃなかったわ」
「ああ……そうかもしれませんねえ。すみません」
「謝ることはないわよ」
「で、なんすか?」
「そ、その~別に深い意味はなくて、ほんと興味本位で申し訳ないんだけど、二階堂さんと彦丸君ってどうなの?」
「あ、ああ~とくに、なんもないすよ」
「ほんと?でも、じゃあなんで、こんな部に来たのかしら」
「アレですよ。アレ」
「アレ?」
「なんちゃって国語教師」
「三上先生?」
「素顔を見たんですよ。たぶん」
「あ、ああ~ナルホド。でも、それはかわいそうに……」
「なんすか?」
「先生は、そのう……」
カガリ先輩も口に出しにくいのか小声になったので、耳を近づけると耳元でささやいて教えてくれた。なんだかいい香りがしてドキドキしてしまった。しかし、内容はといえば…………
モーホだ。やっぱり予想通り、三上先生はモーホモンだった。がしかし、俺らみたいなガキには興味が無いらしい。それを聞いてひと安心したオレはつい口を滑らせてしまった。
「それでBL好きの部長とノジコと気があうんすね!」
「は?何言ってるの?だ、だ、だ誰がBLですって?キミの頭というか脳みそというか人格は腐ってるんじゃない?だから変態だとかミミズ野郎とかミジンコの方がまだ生きている価値があるだなんていわれるのよ!」
「す、スミマセン……でも、そ、そこまでは言われてないです」
や、ヤバい。やっちまった。いつかのパターンだ。果てしなく続く地獄の螺旋だ……
「すみませんで済んだらケンミジンコだってミトコンドリアだっていらないわよ。謝るならヒトゲノムそのものに誤りなさい!いいえ、それでも足りないわ!私は人にも満たない下等な存在で有りながら、朝飯を喰らい二足歩行し、今日も恥辱の中を生き延びてしまいました!って10回言いなさい!さあ!」
「え……」
「早く言いなさい!この腐れちん……」
ガラガラガラーッ
「おはようございます」
その時、救いの女神が降臨した。
「さ、さ、沙耶華さ~ん」
思わず俺は沙耶華さんに泣きついてしまった。
「彦丸さんどうしたの?この人にイジメられた?でも、もう大丈夫よ。私がいるから」
「沙耶華さんってばマジ女神!」
俺はまたひざまずきたくなるのを抑えるのに必死だった。
「な、な、なんですか!まるで私がなにかしたみたいじゃないの」
「篝部長、言葉は時に何ものにも替えがたき凶器となるのですよ」
沙耶華さんのこの一言のあと、地球時間にして1.5秒ほど空白の時があり、俺は二人の視線のちょうど真ん中で発生した火花で今にも破裂しそうだった。
「およっすー」
「オハヨウゴザイマスデス」
「みなさーん、おはようございましたか?」
その時、みんなが一団となってやってきた。するとサスガに部長も我に返ったように見えた。あのままだったらヤバかった。カガリ先輩ってホント怖い……
「あれ?なんだかこの部屋3気圧くらい気圧が高いようですな」
「なにバカなこと言ってんだよ先生は。先生のせいで遅れたっていうのに」
三上先生はなにげにスルドくて、ガモはやはりバカだった。ノジコは……やっぱ読めない……
「み、みなさん揃ったようね」
自分を取り戻したのか、取り戻そうとしているのかカガリ先輩は声を張り上げた。
「みなさんが揃ったところでもう一度確認しておきます。10時になりましたら……あと、5分ほどですが、「まじか☆らんど」にいっせいにアクセスしていただきます。その後、イベントスペース「EDOO」に移動してイベントエントリーしてください。ただし、エントリー前に仲間一名とチームを組んでおいてください。エントリー後は脱退や変更はできません」
「ブチョー!そいやあ気になってたんだけど、そのイベントスペースってサーバー落ちしたりしないの?」
「心配しないでくださいガモ君。それはノジコさんに専用サーバを提供してもらっていますので」
「ああ~なら何よりだ。あんなサーバを用意できるのは日本でノジコくらいなもんだからな。あ、沙耶華さんもできるかな」
「ノジコの親はコンピュータ会社なんですよ。世界的なね」
名前を出されたせいか、沙耶華さんは話が見えないような顔をしていたので俺は説明してあげた。
「ノジマ……コーポレーション……」
「そう、そう、そうです。やっぱ知ってますか。なので、ほとんどスーパーコンピューターみたいなのを使えるらしいですよノジコ」
「そう……ノジコさんが……」




