第一回部長争奪ゲームバトル
つぎの金曜日の放課後、部室には部員全員が集まった。なゆらは授業はちゃんと受けていたが、放課後は先に帰ってしまった。レベル2だかになってからはやはり故郷のことを思い出したのか俺以上に「まじか☆らんど」にはまっているようだった。
「ええ~それではみなさん。集まりましたねえ。そうしたら早速、第一回部長争奪ゲームバトル大会の始まりでーす」
「先生、なんか軽いよ?ノリが」
部室は旧校舎の使われていない教室なので、一応机や椅子があった。壇上には三上先生と部長、ノジコが立ち、俺とガモと沙耶華さんは生徒が座る方へ座っていた。
「ええと……この三日間、ボクら三人は起きる間を惜しんで寝ながら作業を続けましたところを教頭に指摘され危ないところだったワケであります」
「ええと……寝る間を惜しんでやってたら授業中とかに居眠りしちゃって、教頭に怒られて、即廃部になりそうだった、ということでしょうか?」
「お、ガモくんそのとーりです!」
「えと、続きは部長お願いします!」
「そうてすね、わかりました。それでは私の方から今回の勝負について説明します。まずバトルは明日の土曜日の朝9時から午後5持までとします。場所はこの部室。そしてパソコンは部のパソコンを使用してもらいます」
「え!マジ?このボロでやんの~?」
「ええガモ君。公平をきするためそうして頂きます」
「ちっ」
沙耶華さんも少し不服そうな顔をしていた。
「そしてこのバトルの勝者が部長を選出する権利を持つものとします。ルールの方はノジコさんから説明します」
なるほど、環境的にはまったく同じ状態でってコトだな。確かにそれぞれ家で、なんてなったら沙耶華さんどんなマシーンでやるかわかったもんじゃないものな。スパコンとかくらい軽く用意しそうだ。
「えと……ゲームは初めに決めたようにMMORPG「まじか☆らんど」内で行われます。たぶん大丈夫とは思いますケド……アバターの名前はゲー研のゲー名で、お願いしマス……」
さすがに部長と違ってノジコの説明はたどたどしかった。ルールはだいたいこんなところだ
バトルはカガリ部長とノジコと三上先生で作ったダンジョンイベントにて行うこと。その際、各人のレベル調整のためコレまでに得ている一切の装備は持ち込めず、基本装備のみでのスタートとすること。そして「まじか☆らんど」のゲーム性を考慮して仲間システムを導入。参加者の3人は部員以外、つまりカガリ、ノジコ、三上先生以外の部外のユーザーを1名を仲間として参加することができる。勝敗の判定は二つ。ひとつはイベント内のラストイベントを一番早くクリアした者。ただし、このイベントは時間制限があり、時間内にクリアできなかった場合イベント世界が消滅してしまう。その時は最終ポイント数で勝敗を決めるものとする。なお、ポイントは小イベントクリアや敵を倒した際に得られる。イベントが始まったら、他の世界との行き来はロックされる。また、三上先生、カガリ部長、ノジコの三名もゲーム内におり、進行監視を行う。
「って部長とかノジコってダンジョンマイスターの資格持ってんの?」
ガモが驚いて尋ねた。
「ボクも持っていますよ」
「え!ウソ!先生が?それはちょっとショックだ」
「なぜですか?ガモくん。もしやボクのことをバカにしてませんか?もしかして、ですが」
俺はダンジョンマイスターがなんだか知らないのでピンと来なかったが、ガモの悔しそうな表情をみるとスゴイことらしいというのは分かった。
「まあ、ほとんどの設計はノジコさんにやってもらいましたが」
部長に指示されると、ノジコは少し照れくさそうにゲーム画面を開き、イベントマップを見せた。
「スゲーなノジコ……でも、それってこの学校?」
もちろん、ダンジョン全体は見せなかったが、それはこの学校のようだった。
「じ、時間が、な、なかったので、て、手抜きで、す、スミマセン。ちょっと学校の設計データを拝借し、して、しまいまシタ」
「設計データって……ど、どっから持ってきたのか……は、聞かないほうがよさそうだな」
「質問があります」
それまで黙って説明を聞いていた沙耶華さんが手を上げた。
「仲間というのは誰でもよいということですか?そして、その仲間の装備はどうなりますか?」
「そうですね。このゲームの特徴の一つは仲間とのつながりだと思います。それを尊重し仲間システムを導入しよう、という事ですが、その相手はゲー研とは無関係の人、もしくはAiとなります。そのため、その相手までは私たちのルールに縛ることはできない。と考えています」
ノジコに代わって部長が答えた。
「じゃあ、その仲間がキーってことか……」
なるほど、ガモの言うとおりだ。俺たち三人が素の状態だとしても、仲間の装備が強ければ優位になる。さて、俺は誰を誘うかだな……。装備、装備と……。って考えるまでもない。俺は友達が少ない。なゆらしか……いない、よな?
その日はまだもう少しイベントの調整をしたい、ということで早々の解散となった。
◇◆◇◆◇◆◇
「ただいま~」
家に帰ると遠くに母さんの返事を聞きながら自分の部屋へ登っていった。
「おかえりなさいませーお旦那さま~~~にゃ」
「そこはご主人様だろ」
相変わらず半分カラダを浮かせてくるくる回ったり、ふざけたポーズをしながらなゆらは「まじか☆らんど」をしていた。
「なゆら~頼みがあるんだが」
「かしこまりましてご主人さま~~~」
「聞いてる?」
「うにゅ」
「まだ、なにも言ってないけど?」
「ワッチがヒコの頼みを断るワケがにゃいのにゃ~~~」
「そか。それは助かる。明日一日かかるんだが……」
「え!明日?それはダメにゃ」
「オイ!言ってることが違うじゃないか。だいたいオマエ用事なんてないだろ?」
「失礼にゃ。明日はにゃんま大使のにゃんにゃか大行進があるにゃ!」
「なんだよそれ」
「知らんのか!あの有名なにゃんま大使を!」
「ごめ、知らんって、それ「まじか☆らんど」か?」
「そうにゃ。スペシャルイベントにゃ」
「だがしかし頼む!そこをなんとか!」
「ぬむぅ~~~。したらばワッチの願いを聞いてくれるか?」
「願いって、な、なんだ?」
「いっしょに寝るにゃ」
「そ、それはダメだって言ってるだろ。ホントは俺だって……いや、なんでもない。俺がさわったときに出すなゆらの声は他人に聞こえるって分かったじゃないか。そして、オマエの声は大きい。夜中にあんな声出されたら……絶縁だろ?俺」
「うにゅぅぅぅうううう~~~ではイヤにゃ。にゃんま大使のにゃんにゃか大行進に参加したいにゃ」
「だからなんだよ!そのにゃんま大使って!」
「かの偉大なるにゃんま大国の大使であらせられる……」
なんか話しが長そうなので俺は諦めた。
「しょうがない、いいだろう」
「いいのきゃ?添い寝~~~~~!今するか?すぐ寝るか?」
そう言うと飛びついてきた!
「今寝るわきゃねーだろ!ボケ!」
「にゅう~~~ボケたん言うたな!」
「言ってねーよ!しかしこっちにも条件がある。明日のバトルに勝ったらだ」
「バトるぅ?」
なんだかなゆらの口元に歪んだ笑いが浮かんだ気がしたが、今は突っ込まないことにした。気が変わりでもしたらヤバイ。




