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なゆら2(ツー)


「それはそーと、これどーなってるんだ?一台で2アカウントは出来ないはずじゃ……」


 俺はなゆらのエロティックモードを直視するコトができず、あらためにパソコンの方へ目をやった。すると、俺となゆらのアバターが同時にいるのが不思議なのだと気がついた。


「ヴァーチャルマシーンにゃ」


 なゆらは慣れた手つきでマウスを操ると、背後に有るヴァーチャルマシーンの画面を開いてみせた。


「お、オマエ、いつのまにそんな知識を……」

「クグったにゃ。最近一人で暇だったからにょ~」

「あ、ああ。なるほど……なるほど、なるほどねえ~」


 俺はまた沙耶華さんとの夜をなんとなく思い出してしまった。


「おいヒコ。そ~いえばおヌシ。夜な夜などこへ行っておった?」


 するとそれに答えるようになゆらが聞いてきた。ダモんといい、なゆらといいコイツらは心が読めるのではないか?と思うほどだ。


「そしてそれは今朝あの小娘とお手てを繋いでおったことと関係があるのではにゃいのか?」


 ぐっ、やっぱスルドイ。俺はなんとなく、なゆらと少し通じ合えた気がして隠し事をするのが辛くなっていた。そこでダモンに誘われて沙耶華さんに家庭教師をしてもらっていたことを打ち明けた。ただしダモンにクギを刺されたなゆら達のルールについてや、沙耶華さんとの最後の夜の件はもちろん言わなかった。


「……まあ、実際のところは家庭教師と言っても、躾や哲学、武道といったところだから役に立ったのかどうかわからないけどな……」

「ナルホドなのにゃ、でも、役にたっておるよーにみえるにゃ」

「そか?」

「うぬ。体つきも少し逞しくなっておるし、何より決断力が数段上がっておるようにみえるにゃ」

「ほ、本当か?そ、それは、まあ、あの坂を毎日登っていたしなあ」


 しかし、沙耶華さんの個人授業のコトを考えるとどうしてもあの夜のコトを思い出してしまう。


「そ、そういえば、これこらどうやってなゆらを隠すかだな」

「心配するでにゃい」


 そう言うとなゆらはフワリと浮かび上がった。


「え?」

「ワッチはこうして飛べるし、他人に見られないようにすることもできるにょ。よーするにさわれるようになった、というのはヒコ側の問題にゃ」

「はい?」

「ヒコがゲームと言えども、ワッチのコトを認め、約束を交わしたからワッチにさわれるようになったのにゃ。しかもそれもワッチがそう望んだ時だけのようだにょ」

「や、だってさっきは……」

「あれは冗談にゃ」

「な、なに!」

「だってヒコがあまりに必死だったんで違うとは言い出せなかったのにゃ」

「…………」

「そんな目で見るにゃ~それは信じてない時にする目にゃ!」

「スルドイなやっぱ」

「ぬ?だがしかし、コレで第二段階にゃ。まあゲーム的に言うならばレベル2といったところにゃ。これで夜に外にも出られるようになったにゃ」

「第二段階?するとダモンもこの状態ってことか」

「のよーだにょ。ヤツはおそらく小娘と何か契約をしたのであろう。この現実世界で有効な契約をな。さすれば第二段階、もしかしたら第三段階まで進んでいるやもしれないにゃあ」

「にしてもなゆら。オマエいろいろ知ってんじゃないか!なんで黙ってたんだよ!」

「知って黙っていたワケじゃないにゃ。さっき思い出したにゃ」

「さっき?」

「レベル2にゃ」

「あ、ああ~そういうコト?」

「おそらくワッチは……」

「なんだ?」

「いや、話したらマズかろうもんな」


 うむ、たぶん話せない何かのルールがあるんだな。だからダモンはなゆらが覚えていないコトを教えてはイケマセン、と言っていたのか……


「したもんで、コレからは不思議の魔少女なゆら2と呼ぶにゃ!」

「ぜってー呼ばねー」


 その後、ノートパソコンの小さなモニターを左右に分割した狭い画面で「まじか☆らんど」をした。新婚旅行だ。こんなイベントがあったのか~やってみなくちゃ分からないこともあるもんだ~と、少し新鮮な思いではあったが、何よりなゆらはふたりでゲームをしているのが嬉しいらしくてずっとニタニタしていた。

 こうしてみると、なるほどなゆらはカワイイ。が……


「おい、なゆら、ヨダレが出てるぞ」

「…………」

「なゆら~~~!」

「…………」

「なゆら2!」

「なんにゃ?」

「お、おまえマジか?それ。もう話しかけないぞ?」

「それはダメなのにゃ~」

「ま、いいや。それよりなんでウェディングドレスのままなんだ?」

「はにゃ?」

「アバターの服だよ!」

「あう~~~………………」

「答えろ!」

「恥ずかしいからにゃ」

「何が?いや、いまさら何か恥ずかしいコトがあるのか?おまえに」

「…………」

「ええーい、いいから着替えろ!おまえもしかして、ランニングにステテコとか、ハゲのヅラとか、そーいうフザケたカッコをする系か?そーなんだろ?」

「しかたないのにゃ。ヒコタンがそこまで言うなら着替えるのにゃ」

「ひ、ヒコタン?」

「ナユちゃんコロモチェ~~~~ンジィイイイイイ!バトルモォードォォォォオオオ!!!!」

「普通に言えよ!って、え?ナニソレ、何の衣装?てか武装?」


 なゆらのアバターは、純白のウェディングドレスを脱ぎ捨てて衣装を変えた。その姿はある意味予想通りであり、あらゆる意味で予想を超えていた。

 辛うじて見えている下地の服は学校の制服のようだったが、その上にガンベルトやら、手榴弾やらが巻きつき、背後にはバズーカやランチャーを背負い、片手には巨大な剣、片手には光線銃のようなものを持っていた。しかし、その全てがなんだか派手なカラーで塗られており、カタチもポップだった。


「ええと……ナユ?なゆらちゃん?なんで、そんなカッコウなのかな?」

「うへへへへ~カッコイイか?作ったにゃ」

「いや、カッコウイイとは言ってないぞ?どうしてそんなヘンテコなカッコウなんですか?って聞いてるんだよ」

「あげないぞよ」

「くれとか言ってねーし!」

「したらばヒントだけ教えちゃる。ヒントはマジファクトリーにゃ!!!」

「いや聞いてねーよ!それってアレだろ?アイテム精製所、マジファクトリーで作ったってんだろ?普通じゃん、このゲーム内では極めて普通にやる独自アイテムの取得方法じゃん」

 「まじか☆らんど」の中で服やアイテムを入手する方法は主に3つ。①ゲーム内通貨であるマゴルで買う。これは財力にモノをいわせられる反面、レアアイテムはまず手に入らない。②ダンジョンとかイベント攻略でゲットする。イベントによってはかなりのレアアイテムも狙える中心的な方法。③マジファクで生成する。これはほとんど唯一オリジナルアイテムを作る方法だったがゲーム内のソースを多く消費するため様々な条件が課されていた。まあ、この他にも、他人に貰うとか奪うとか拾うとかも有るにはあるが、一般的にはこの3つが主流だった。

「うにゅぅう~~~おヌシ~~~知ったかだにゃ」

「知ったかじゃねーよ。基本的なコトだよ!」

「にゅぅううう。」

「だーかーらー!なんで、そんなカッコウしてるんだ?って聞いてるんだよ!」

「おヌシはアホか?」

「な!おまえに言われたくないよ」

「このカッコウ見て、これから茶畑にいくとでも思うたか?海水浴に行くとでも思うたのか?お?どうにゃのら?」

「んなこた思うわけねーだろが!」

「んじゃ聞くなや。ボケたんが!」

「ヌヌヌヌ、オオオオオオオ!むかついた!激むかついた!もう知らん!」

「う、嘘にゃ~~~~、可愛いあの子は千尋の谷から落とすっつーやつにゃ~」

「そ、それは、旅をさせろだろ!てか使うトコ違うし!」

 って結局突っ込んでるのな俺。チキショウなゆらにはペースを崩されるぜ。

「ヒコよ。これはバトるため……にゃ。マジバトルんにゃ」

「何カッコつけてるんだよ。でも、なゆらは世界をフラフラしてる周遊系のプレイヤーかと思ったらバトル系なのか」

「バトル系~?にゃんだか分からんが、備えあれば大樹の陰にゃ」

「…………そか。日本語ってほんと難しいってのだけは分かったよ」



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