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動き出したゲー研の未来


「お、変態王子!」

「うるせーガモ。イキナリなんだよ変態王子って」


 ここんところ放課後は沙耶華さんのところに行っていたから久しぶりに顔をだした。本当はすぐにでも帰りたかったが、なんとなく生徒達のプレッシャーが嫌だったのでズラして帰ろうと寄っただけだった。部室には先生以外は全員いた。めずらしくなゆらは調べたいことがあるから「家のパソコン借りるにゃ!」とか言って先に帰ってしまっていた。


「いやオマエさ、前の校門前での奇行でヘンタイってあだ名がついてたろ?今回沙耶華お嬢様との件でマレ王子とか言われてるみたいだから、くっつけてみた」

「そんなのくっつけなくていいんだよ!」

「ああ、それよりいいタイミングで来たな。今日は先生から何か発表があるらしいぜ」

「なんだよ辞めるのか?「ボカぁ~もう疲れましたですよ。したがいまして辞めることを決断するに至りましてまいりました~」みたいな?」

「はは、似てる似てる!」


  ガラーーーッ


「なんだい?彦丸君辞めるのかい?そ、それは困ります!というコトでしょうか?」


 三上先生が慌てた雰囲気で入ってきた。


「先生!言ってることはギリギリでなんとか分かるけど違うよ」

「そうでしたかガモ君もなにかトゲがある言い方ですが、それは安堵の想いを隠しきれない状態ですね」

「先生、もしかして今廊下で入ってくるタイミングをはかってなかった?」

「い、いえ、す、鋭いですね。さすがはアレ王子」

「先生までそれを言う?てかビミョーに間違ってるし。それはそーと、発表ってなんだよ」

「はあ~~~いやね、そのことで、なんて言おうかと悩んでましてねえ。ドアの前で考え込んでいたらヒコ君が辞めるだなんて言うのが聞こえたもので……」

「で?」

「あ、ああ。みんな揃ってるみたいですね。そ、そろそろ来る頃だし、言うことに決断するに至りましょう」


 三上先生は時計をチラッとみると、また焦ったようだった。


「……」

「…………」

「………………」

「早く言えよ!」

「わ、わかりましたよ!もう!実はですね~部の存続のコトなのですが……」

「え!廃部がきまったんすか?」

「いえガモ君。そーではないのですが……」

「じゃ、なんだってんだよ!焦れったいな!」

「そ、そんな責めないでくださいよ。存続の許可は下りました」

「え!」

「ただし……」

「ただし?」

「条件が」

「条件?」

「そーです。条件があるのです」

「無理難題をふっかけて結局潰そうとかそういうこと?」

「いやあ~そ~いうわけでもないのですが……」

「もう焦れったい!はっきり言ってくださいよ!」

「え?」


 ノジコが初めて大きな声で怒鳴ったのでみんな驚いた。


「ああーノジコさんスミマセン。条件と言うのは、新しい部員の入部を認めること。そして、新しい部長を選出すること、と、言うコトなのです」


 三上先生は、ついに言い切った!とでもいうようにうなだれて肩で息をしていた。


「新入部員の件は別に大歓迎として、部長の交代ってのは納得できないな」

「彦丸君。でも、それは仕方がないよ。本来、部長は三年生は出来ないのがキマリだからね」

「そんなコト言ったって部長。二年って言ったら俺とこのアホ王子しかいないんだぜ?」

「どっちがなっても廃部ね……」


 いつになくノジコが話すのは、ノジコにとってもこの部は必要だと思っているからだろう。


「久しぶりに口を開いたと思ったらずいぶん失礼だな?ノジコ!でも、俺はともかく、ガモが部長になったらオシマイって点にはうなずけるな」

「んっだとー!パソコンも使えない奴がゲー研の部長が務まるかよ!」

「まあまあまあ~。それについては新しく入部希望の方からもご意見があるようなので、しばしお待ちください」

「は?なんだよそれ新入部員のくせにエラソーだな」

「だな。その点はガモの言うとおりだ。しかたがない。どーしてもって言うなら俺がやるしかないか」

「だから、それはねーって言ってるだろうーが!」


 ガラガラガラーッ


 その時、扉が勢い良く開いた。誰かが立っている。一瞬、逆光で目が眩んで誰だか分からなかった。


「その点は私にお任せください」

「さ、さわ、やか、沙耶華さん???」


 ドアを開けて入ってきたのは沙耶華さんだった。


「あら。今日はいないのね。彦丸さん」


 沙耶華さんは俺の肩を見てなゆらがいないことに気がついて言った。


「あ、ああ、なゆらは家で……」

「あれ?彦丸君は親密な間柄なのでご存知かと思いましたが、知らなかったのですねえ」

「三上先生。不要な発言はお控えください」

「は、はい。これは沙耶華さん、申し訳ございませんでした」


 三上先生はカガリ部長といい沙耶華さんといい、この手の女子……キツイ女子に弱いようだ。いや、男は誰でも弱いのかな?(美人に限る)


「え~~それではあらためまして入部希望者を紹介します。二階堂沙耶華さん、その人です!」

「はじめまして、みなさんこんにちわ。二階堂沙耶華です。入部に関しては部長の承認が必要とのことですが、あなたが部長の篝彩音かがりあやねさんですか?」

「え、ええ」

「入部に関して、なにか試験とかあるのですか?」

「いえ……とくに……」


 少し迷ったあとカガリ部長はぼんやりと返事をした。


「え?ブチョ。あれは?あれやらなきゃダメっしょ」

「ガモ……思うんだが……あれやめないか?」

「あ!沙耶華さんだからって贔屓しようっていうのか!やっぱオマエ……」

「ちがうよ!アレのせい……ロビんボのせいで……何人が部を辞めていったことか……」

「そうね。彦丸君のいうとおりね」


 カガリ部長は部員の顔を見回した後に言った。


「でも部長!俺は反対だな。あれがあってこそのゲー研と思うぜ俺は」

「わ、私も、そう思う……」


 ノジコも小声で意思表示をした。このあたりのコダワリが俺にはよくは分からないが、たしかにゲー研はじまって以来の伝統だとは聞いている。


「なんですか?その……ロビんボ?って言うのは」


 もちろん、沙耶華さんに分かるはずもないので聞き返してきた。


「伝統といいますか、入部時に、みなさんそれぞれゲームで使用するゲーム名、すなわちゲー名を決めるのが習わしになっているのです」


 カガリ部長は当たり障りはないが、極めて事務的な説明をした。


「そうですか。私はそれでも構いませんよ?」

「みなさんそーおっしゃるんですけどねえ~これ自分達で決めるんじゃないのです」


 今度は三上先生が口を挟んだ。


「では誰が?」


 コンッ コンッ


「コイツです」


 三上先生は部室の隅に転がってる古いパソコンのモニターをたたいた。


「それが……ロビんボ?」


 沙耶華さんは意味がよく飲み込めていないような顔をしていた。


「ロビんボというのはですねえ……ローB型ボックスプログラムのことで、この部の創設時からあるという、得体のしれないコンピュータプログラムなのです。部員のアダ名=ゲー名を作り出すという、ある意味、ゲー研の神的なプログラムなのですよ。コイツが、その……ときどき……とんでもないアダ名をつけるワケでして……」


 先生の説明は長くなりそうな気がしたので俺は横から説明した。


「部員はゲームやチャットなどで呼び名を設定するときに、ロビんボで決められたゲー名を使わなければならないんですよ。それがウンチュウとかアホンコとかゲノゲノンとか付けられると、やがてみんな辞めていってしまうんですよ」

「……そう……ちなみにみなさんのゲー名は?」

「俺はピコ。彦丸だからなのかピコ」

「俺はガムシロ、蒲生士郎がもうしろうだからかな?」

「そして部長がカガ~リン、こっちのがノジコ。先生はミッタんだ」

「ミッタん……」


 沙耶華さんはさすがに驚いたように三上先生の方をチラっと見た。


「いいわ。はじめましょう」


 やはり決断は早かった。


「じゃあ、名前を漢字、カタカナ、ひらがな、アルファベットでそれぞれフルネームで入れてください。入力し終わったら[登録]ボタンをクリック!」


 カタカタカタ カタカタカタ……

 手早い操作で沙耶華さんは入力していった。ほんとうに沙耶華さんってなんでもできるんだなあと思うのと同時に、ヘンなゲーメイがつきませんよーにと思ってモニタを見ていた。


--ニカイドウサヤカ……ノ、ゲーメイハ……ニーシャ--


「ニ、ニーシャね……」


 すこし安堵の表情をしたところを見ると、そんなに気に入らない、ということでもないらしい。


「それでは入部を認めてくださいます?」

「喜んでニーシャ」


 部長が入部の了承を伝えると。沙耶華さんはキッとした顔つきでみんなのほうに向き直った。


「さあ、これにて私は晴れてゲーム研究部の部員となったわけですが、もうひとつ、部の存続の条件が有りましたね?ガモウさん?」

「ん?ああ、新部長の件か。あ、俺のことはガモでいいよ」

「その件は俺が頑張るよ」

「ノジコさんはどうなのですか?」

「私は……」

「ノジコさんは気が進まないようね。部長になる条件はひとつ。現在二年生であること。ですので、ガモウさん、彦丸さん、そして私が候補となります」

「え?もしかして……」

「彦丸さん。私は朝決めたと言いました。私は今後自分のやりたいようにやるためにこそ、この部に入ったのです。ですので私が部長になって差し上げます」


 お~~~ぱちぱちぱち


「先生、ぱちぱちぱちじゃねーだろ。仮にも部長が今日入部したばっかってのはどうかと思うよ」

「では彦丸さん。勝負しますか?」

「え?勝負?」

「なんでも構いませんよ。いつでもね」

「オイオイオイ!なにを勝手に二人で話してやがるんだよ。俺も候補だろ!それにここはゲーム研究部だ!勝負ならゲームで勝負だろーが!」

「ほっほっほ。面白いですねえ。カガリ部長どうでしょう?ゲーム勝負で部長を決めるのは不謹慎ですか?」

「いいえ先生。ガモ君が言うように、ここはゲーム研究部。ゲーム勝負で決めるのは妥当です。しかし、なんのゲームにするか……それが問題ですね」

「「まじか☆らんど」にしよう。今、いちばんゲー研で熱いゲームだ」

「それでは私が細かいルールを決めましょう。後日連絡したいと思いますが、みなさん宜しいですか?」

「はい!カガリ部長についていきます!」

「ったくガモは調子がいいな。まあ、俺もそれでいいですケド?」

「私もかまいませんわ」


 候補である三人はルール作りには参加できない、ということで、ルールはカガリ部長と、三上先生、それにノジコで行うことになった。それにしても驚いた。沙耶華さんがゲー研なんかに入るなんて……やっぱあの時の窓の外の女の子は沙耶華さんだったのかなあ。それで三上先生のことが好きになったとか?

 とりあえず、ルールができるまで時間がかかりそうなのでその日は早々に引き上げた。



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