ゲームの日
「お!ヒコ!おっかえり~にゃ~!」
そんななゆらの声を聞いた時、なんだか少し気持ちが楽になるのを感じた……のもつかの間……
「おい!なんで勝手にパソコン開いてるんだよ!何してた?おい!いったい何をヤッてたんだ!」
「いや、このゲームが……どうにもひっかかるにゃ」
なゆらが見ていたのは「まじか☆らんど」だった。なるほど、本当にそのへんの記憶がないのかもしれない。自分の故郷に模したゲームに惹かれるのはそのせいか。俺はちょっとだけなゆらが可哀想な気がしてなゆらのアカウントも作ってやった。
「ゲームネームはと……ナユでいいか?」
「おお!イイ!イイ!」
なゆらはいつにもまして嬉々とした表情をした。
「そ、そうか?じゃあナユでいいな。よし。俺がいない時にはこれで遊んでいいぞ」
実際のところ、このゲームで自分を思い出し帰ってくれるならそれはそれでありがたい。
「どうしたにゃ?今日はやけに優しいにゃ」
「そ、そんなことはないだろう」
俺はダモンに聞いたことをなゆらに話すべきか迷っていた。と、いうのも、ダモンには口止めされていたからだ。ダモンいわく
「本人が忘れていることを他者に教わるとマズイことになりますので、他言は無用にございます」
とのことだったからだ。
「と、言っても今はダメだぞ!もう俺も「まじか☆らんど」やりたくてたまんなかったんだから」
「いっしょにできんのか?」
「パソコンが1台しかないからな」
「オヤジさまのは?」
「ダメに決まってるだろう!そんなことしたら超怒られて、このパソコンも取り上げられかねないぜ」
「ぬうぅぅぅう」
「まあ、見てるだけならいいけどな」
「にゅぅぅぅうううう」
「ログイン、ログインっと」
ID:ピコ PASSWORDS:●●●●●● ENTER
--ピコが「まじか☆らんど」第65サーバにログインしました--
「ガムシロにノジコにミッタん、それに、ミョンにグレイド。お、みんな来てるな」
フレンド登録がされていると、誰がログイン中なのかが一目で分かる。ガムシロはガモ、ミッタんは三上先生、ノジコはチエコと、リアルの友達はみなゲー研のメンツだった。ミョンとグレイドっていうのはおそらく「まじか☆らんど」のAiだ。「まじか☆らんど」ではシステム上Aiもユーザーも区別がないからチャットなんかで確認するしかないが、まあどっちでも構いやしない。
ガムシロ:「お、ピコ。今日は遅いじゃないか」
ノジコ:「勉強するわきゃないのにねん」
ピコ:「うっせーよ」
ミッタん:「今日はどうするのです?なにか予定が?」
ピコ:「俺南の砦の方行きたいんだけど。ミョンとグレイドは離席中?」
ミョン:「ワタシはいるよ。いつでもいるよでもグレイドはいないみたいよ。買い物だよ」
ピコ:「なんだ、頼れる方がいないのか」
ミョン:「…………」
ガムシロ:「おいイジメるなよな」
ピコ:「冗談、冗談。とりあえず集まろうぜ。ナムルタワーの前でいい?」
ノジコ:「オケ」
ミッタん:「かしこまりました」
ミョン:「ほほ~い」
ガムシロ:「あ、ワリイ、俺別チームに誘われてるんでパスな」
ピコ:「あの女の子だけのチームか?」
ガムシロ:「い、いやあ、どうかな……」
ピコ:「あいつら、ホントに女の子かなあ……」
ガムシロ:「ま、いいだろ!んじゃ、また~」
ピコ:「爆死しろ!」
--ガムシロは別サーバに移動した--
--ピコはナムルタワーに移動した--
ゲーム内にはナムルタワーのように自分のアバターを見せ合うチャットスペースがあった。そこでオープンチャットして情報交換したり、仲間を集めたりするのだ。
ピコ :「しかし、みんなのアバター、代わり映えしねーなー」
ミッタん:「ボクは変わりましたよ。ほら」
ピコ :「あ、ホントだ。羽がついてら。ラキ。さては課金したな?ずり~」
ミッタん:「はて?なんの濡衣でございましょう?」
ミョン :「ミッタん、ズル、ズル、ミッタん」
ノジコ :「まあまあ。それにしても最近ユーザー増えてきたわねん」
ピコ :「そだなあ。アバターも凄いヤツが増えてきた。まあ、課金ユーザーだろうけどな。ほら、あそこにも凄いヤツがいるぜ」
ミョン :「どこだかな~もし?」
ピコ :「ほらあそこの鎧野郎。ええとサヤ……女か?」
サヤ :「…………」
ピコ :「あれ?Aiだったか?」
サヤ :「違いますよ」
ピコ :「いくら課金したんだ?その装備高いだろ」
サヤ :「課金?」
ノジコ :「なんだかほんとAiっぽいすな」
サヤ :「Ai???」
ミッタん:「まあ、どちらでもよいでわないですか」
ピコ :「まな。それがどこの誰でも例えAiでも関係ないのがココの良い所だからな」
サヤ :「…………」
ピコ :「サヤ、見たところフレンド0っぽいけど申請していいか?」
サヤ :「え、ええ」
ノジコ :「ワタシもー」
ミッタん:「それではワタクシモ」
サヤ :「あ、ありがとう」
ーーサヤがフレンド申請を承認したーー
ピコ :「コレからウチら南の砦に行くけどサヤも来る?」
ミョン :「行こ行こサヤ行こ」
サヤ :「ありがとう。でも、今日はつかれたのでやめておくわ」
ピコ :「そか。ま、今度な!あ、そだ。チームも登録しておいてくれよ。そしたら次も会える」
サヤ :「あ、うん。いろいろありがとう」
ピコ :「んじゃ、みんな行くぞー」
ーーチームゲケンノツルギは南の砦に移動したーー
やべ、もうこんな時間だ
ピコ :「眠。俺落ちます……バイ」
さすがにみんなすでにねてるのか?返事がないや。
ノジコ :「おやすみんさいなー」
お、さすがは廃人ノジコ、まだ起きてやがったか。
ピコ :「ノジもほどほどになーおやすみー」
ノジコ :「うす」
「やっと終わったんか?」
それまで騒ぎもせずにゲーム画面をじ~っと見ていたなゆらが口を開いた。
「ん、ああ。退屈だったか?」
「んニャ」
「そか。俺は寝る。が……布団に入ってくるなよ」
「ニャ厶。ゲーム、やってもよいかの?」
「あ、ああ。でもほどほどになー」
今日はゲームやりすぎたな。やっぱ沙耶華さんのがフラストレーションだったのかな?なんて考えながらなも、あっという間に俺は寝てしまった。
次の日の、朝
「ん、あああ~~~っと。よく寝た。なんだかいつもより、よく寝た気がするぞ」
いつもと違う雰囲気に天井を見上げたままぼんやり考えた。
「あ、なゆらだ。なゆらがいない?」
飛び起きた俺は部屋を見渡した。ナユラはパソコンにかじりついてゲームをしていた。
ほっ
「いや、ほっ、っじゃねーよ!俺!」
なゆらが突然いなくなったと思って胸の奥がキュッとしたのを必死で否定した。
「オイ!なゆ!一晩中やってたのか?」
「にゃ」
「やりすぎたろーオマエ~」
「フヒヒヒヒィ~にゃ」
「オマエ眠くないの?」
「別に~」
「そか。って、やべ!寝坊してるじゃん俺!もう!起こしてもくれなくなったのかよ!」
その日も結局、朝食抜きで慌てて家を飛び出した。なゆらはさすがに疲れて寝てるのか?と振り向くまでもなく気がつけば、シッカリと肩に乗っていた。しかし、眠いのか肩の上で器用にコクリコクリとうたた寝をしたままだった。
「そんな眠いなら家に残ってればいいのに……」




