大垣夜行
窮屈な浅い眠りの途中、突然目の前が明るくなった。
どこかの駅に停まったらしい。冷たい空気が入ってくる。
客たちの寝息の中に轟音を響かせ、貨物列車が走り去っていく。
せっかく催してきた眠気が覚めてしまった。
仕方なく、冷たい空気の中を歩く。
寄り添って眠る親子がいる。
抱えた荷物に潰されるようにして眠る夫婦がいる。
宴会をした様子のまま寝ている若者がいる。
起きて何か話している恋人たちがいる。
一人でカップ酒を飲む老人がいる。
線路と子守唄を奏でながら、列車は走り出した。
窓の外に街灯りの天の川が流れていく。
俺はどうしてこれに乗っているのだろう。
朦朧とした頭に、そんな問いが浮かんできた。
馬鹿馬鹿しい。
理由なんてない。
きっと、意味なんてない。
眠気が戻ってきた。寝ることにしよう。
明日の朝は早いのだから。
いつしか窓には真っ暗な海が広がっていた。
貧相な夜行列車は、今日も曙の終着駅へと走っていく。