そして、夢は叶う
スキル習得は嘘にしても、俺の神速の鼻フックは本物だ。
アホ亜人がフガフガ言ってる。俺は刀剣を鞘に納めるイメージでヤツの鼻から指を引き抜き、そのままさりげなく亜人の服の裾で指を拭った。
「にゃ、にゃにすんだテメー!」
「や、そのスミマセン。
百万とか言うからつい興奮しちゃったの・・・かな?」
「かにゃじゃにゃいぞまったく!
初対面の相手にはにゃフックとかどんにゃ教育受けて来たんだ!」
「や、まぁほら、それはイロイロと。
てか百万はなんぼ言っても嘘でしょ?」
猜疑心を隠さずに見つめてみた。
一瞬爆発しそうな気配を見せたあと、亜人は大きく深呼吸した。
「まったく、これだから駆け出しは。いいか?
ゾルはにゃにゃ級(7級)とは思えにゃいほど耐久力が低く、動きも鈍い。しかし状態異常を引き起こす凶悪にゃ攻撃と遠距離攻撃に対する高い耐性スキルを所持しているお陰で討伐数が少にゃい。
簡単に言えばリスクにリターンが釣り合わにゃいんだ。
強者はもっと強くて安定した戦果をあげられる魔物を狩るし、弱者には手に負えにゃい。そんにゃわけでゾルの魔晶物は価格が高騰してるんだよ!」
「な、にゃんだって〜!?」
「お前喧嘩売ってんのか!」
めっちゃ胸倉掴んで来るんですけど、
なにこの人怖い。
「売ってない売ってない!
や、ホント、俺って5000ゼニーのナイフレンタル代すら払うのに困窮するレベルの素人っすよ?
いきなり百万とか言うから気が動転しちゃって」
その返答に納得したのかどうか。
荒い鼻息を一つついて、亜人が俺の胸倉から手を離して椅子に座る。
遅れて俺も椅子につくと商談が再開した。
「で?どうしますかにゃ」
「や、どうって百万でしょ?そりゃ売りますよ」
一年間この資金を活用して上手くやり過ごせば、あとは冒険者資格を返却して酒場でも食堂でも、どこででも雇ってもらって楽に安全に楽しく稼ぐんだ!
ヒャッハー。
そして1年後、俺の冒険は終わった。
俺は、生き残ったのだ。
ーーー1周目/ラッキーボーイムサシ・完ーーー
おまけ。
〜1年後、冒険者引退直前のムサシ〜
【トラストリア帝国/国民証明証】
名前/ムサシ・ヤオマ
人種/ドーリアン
職業/冒険者
レベル/10
パッシブスキル/ビギナーズラック
アクティブスキル/ストライクアロー
次回からは2周目突入します。
あ。
どなたか存じませんが評価ありがとうです。
ストックが尽きても頑張る気になれます。