表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/17

崖っぷちで叫ぶ時

ゾルについての説明は簡単だ。

重さ1トンある真っ黒い水滴を思い浮かべて貰えばいいだろう。

牛ほどではないが、それなりの大きさと濃密な質量を備えた楕円型の流体。

俺の腰くらいの高さのその塊に、俺は渾身の力を込めてナイフを振り下ろした。

『ロォォォン』

『オロォォォ!』

俺の攻撃に反応して2匹が唸る。

たぶんこれが混乱の状態異常を招く『パニックボイス』なんだろうなー。

7級×2匹に囲まれて混乱とか、必死と書いて必ず死ねるぞ。

とか考えてるって事は運よくレジスト出来たっぽいな。

よし!

交戦中の一匹を盾にするように立ち回り、もう一匹の攻撃を封殺する。

情報が確かならゾルの攻撃手段は3つ。【体当たり】

【パニックボイス】

【ポイズンミスト】

ここまで接近して馬乗り状態な今、交戦中の固体にしろ、コイツの向こうにいる固体にしろ、体当たりはほぼ無効化出来ている。

パニックボイスは嵌まれば怖い。が、混乱に陥る確率はそれほど高くないらしい。現に本日2回目の発動=パニックボイス計×4を受けた今も、俺はクールな紳士のままだしな。

とか、一瞬余裕こいただけでブチ切れるのは止めませんか?

一瞬の気の緩みを感じ取ったのか否か、ゾルが自身の持つ最悪の攻撃を放った。

『ジュェア!』

ゾルを攻撃した際に流れ出た奴の黒い体液に魔力が放たれ、次の瞬間には紫色の霧という形を持って敵の魔法【ポイズンミスト】が発動した。

「クッソが!」

霧状とは言え魔法。

息を止めればなんとかなるはずもなく、

耐性スキルも対抗魔術もそれに準ずるアイテムも無い。

そんな俺に出来る最高の対策は状態異常になる前に逃走する事だろう。

だが、今ここで距離を取れば体当たりで潰されるだろうし、運よく逃げおおせた所で行き着く先は必死の戦場。

そうと知れればここはヤケだ。

毒に侵される前に、倒す。

俺が死ぬかお前が死ぬか。

「やってやるぁ!!」

蹴りも交えてナイフを振るう。

なりふり構う余裕なんてない。

次の瞬間に状態異常の毒になる可能性が俺の生存本能に火を点ける。

・・・かと言って秘められた才能がっ!

とかっていうフィクションじみた展開にならない所が苦しいけれど、死にたくないって言う思いはそれでも強烈だ。

腕の疲労とか体力の配分とか、無駄な思考を放棄してゾルを八つ裂きにする。

「オォォォォ!!」

一匹目が力尽きて魔石になる。

その寸前には身を翻して二匹目のゾルに取り付いた。

そのゾルもパニックボイスとポイズンミストを併用して、俺の野性をツンツンして下さると来たもんだ。

喉から血を吐く勢いで叫び、恐怖を押さえ付けて腕を振るう。

次は死ぬ、

次は死ぬ。

そう思いながら振り下ろした俺の右腕は、

ついにゾルの肉体を貫き通した。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ