第6話 氷上の悪魔
それは突然だった。
<ストックキャニオン>の補給施設建設エリアに突如として爆発が巻き起こった。同時に、まるでそれが合図だとでもいうようにすぐさま警戒態勢が敷かれた。ローテーションで休んでいた者や、休眠していた者たちは飛び跳ねたかのように起きはじめる。
<タケミカヅチ>の中で警戒を続けていたハルトはすぐに攻撃が行われたポイントに目を移した。
「始まった......!」
「みたいだな」
ハルトと共に<ストックキャニオン>側の警戒に当たっていたシルバが呟く。恐らくハルトと同じように発射地点を既に見極めているはずだ。
警報が鳴り響く中、その方向に目をやると驚愕の光景が広がっていた。
ハルトやシルバだけじゃない。
恐らく、この場にいた者たち全員が同じような表情をしている。
空だ。
発射地点は、空からだった。
そして、影が七つ。
「ワイバーン⁉」
ワイバーンにまたがった<パイレツァ>が六機。そして、もう一機、未確認の新たなWSが同じようにワイバーンに乗り込みながらこちらに向かっていた。
WSがビーストに乗り込む。
それだけでも異常(ゲーム世界にいたハルトでさえもそう思わざるを得ないぐらいに)な光景だというのに、更に異常なのは海賊たちが完全にワイバーンをコントロールしていたことだ。
「おい坊主、こいつぁ......」
「ええ。たぶん、そうなんでしょう」
実際にこれに似た現象を引き起こした黒幕を知っているハルトとシルバは互いの顔をモニター越しに確認しながら頷いた。二人の頭の中にはシドという男の名が浮かんだだろう。
だが、そのシドの駆っていたWSは現在この場にはいない。
となると、一番怪しいのはあの新たなWSだ。
ボディカラーは青竹色。少し薄めの印象を与えるそのボディカラーとは対象に頭部カメラは真っ赤で、全体的に機体のシルエットは細い。
足は爪先の部分が曲がって上を向いており、右手には少しゴツい形をしたライフルを携えている。
あれにシドが乗っているのか、それともその仲間が乗っているのかは解らない。だがしかし、この異常な光景を演出した一人であることは間違いなかった。
「まずいぜ、こりゃ」
シルバが額に汗を浮かべながら言った言葉にハルトも同意する。
「みたいですね」
その言葉を皮切りに、上空から銃弾の雨が警戒部隊を襲った。
空を飛ぶWSはこの場にはまだ存在しない。となれば、制空権は常に向こう側が手にしたようなものであり、空という戦場は未だかつてなかったことと、予想にもしなかった場所からの攻撃に先手をとられてしまった<ストックキャニオン>の警戒部隊が次々に倒れていく。
「くっ......!」
「ちっ!」
ハルトとシルバはすぐさま機体に搭載された<A.I.P.F.>を展開。出現した魔力によって構成された防御壁が銃弾の雨を弾き飛ばしていく。だが、護るだけでは勝てない。
とはいえ。
なんとか反撃を試みようとする警戒部隊の対空攻撃はいとも簡単にかわされてしまう。突然の、それでいて予想外の奇襲によって戦列を崩されてしまった今の部隊ではそれも難しいだろう。
「奴らめ、ずいぶん好き放題あばれてくれるじゃねぇか」
「まさか全員がワイバーンを持ち出してくるとまでは予想できませんでした」
パターンからしてシドが関与していることは疑っていた。だから、ワイバーンを使った攻撃はある程度かんがえてはいた。しかし、まさか海賊たち全員分のワイバーンを用意するとは思わなかったし、不可能だと思った。
なぜならばワイバーンはそこまで弱いビーストではない。レベル的には中の上には位置する。
それをあれだけの数を用意できるとまでは思わなかった。
「うわああああああああああああ⁉」
誰かの叫び声。
それが誰なのか、ハルトには解らなかった。だがその直後に耳に入ってきたのは叫び声ではなく、WSが爆散する音のみだった。耳に叫び声――否、断末魔が頭の中にこびりつく前にまた別の断末魔が聞こえてくる
「ひゃははははははははははは!」
「死ね死ね死ねぇ!」
耳障りな声と共にゴウッとワイバーンがWSを背に乗せ、飛翔する。ビーストは自前の翼で飛行しているのではない。翼から発せられる<飛行魔法>のエネルギーによって飛んでいるのだ。
それはこのワイバーンも例外ではない。
翼を一度ふるえばそこから魔方陣のようなモノが出現し、飛翔する。
背に乗り込んでいる<パイレツァ>はただ下に向けてマシンガンから弾を放つだけである。そもそもこの距離まで敵がこないのだから近接専用のブレードを持たないのは当たり前か。
一分もたたない内に次々と爆炎が周囲に広がっていく。その狭間でさっきまで対空射撃を行っていた味方機がただの鉄塊に成り果ててゆく姿を視界にとらえる。
濃密で永いようで短い時間が流れ、ハルトとシルバはついに動き出した。
出現した敵は七機。内、海賊の操るWSは六機。となれば、残りの十機は要塞側の方へと向かっていることになる。
更によく見てみると、海賊たちの装備にも違和感があった。前回の戦闘の時とは違う。まったく別の物。
「ありゃ、北の大陸で造られた物だな?」
「やはり、そうですか」
「間違いないな。現地での地形データを直接入力することで精度を上げるタイプのようだが......そうか、だからわざわざ短時間の奇襲を仕掛けたんだな?」
現在、海賊たちが所持している<Dガイドマシンガン>は、北の大陸で製造された物であり、現地の地形データを直接その場で入力することで射撃精度を向上させるという代物だ。
特に今回の戦闘のような動かない的、つまり敵拠点を攻略する際に効果を発揮するタイプの武装である。だが、製造場所が北の大陸である為に入手は難しい。
それこそ、あんな海賊たちが一日二日で手に入れられるものではない。
間違いなく、第三者が絡んでいる。
「ったく、厄介だぜこりゃ」
言うや否やシルバは<A.I.P.F.>を解除して<カーディア改>を走らせた。旧型ではあるが、マリナによって無理やり手をくわえられたこの機体は運動性が向上している。
身軽な動きをみせながら敵の攻撃をかわしていくと、走りながらサブマシンガンを放つ。轟音が響き渡ると当時にオレンジ色の線を描きながら弾丸が大気を切り裂いていく。
その射撃はこの場にいた誰よりも的確で、敵のワイバーンの翼を掠めるにまで至っていた。次に、シルバは腰に装備していたバズーカを取り出して狙いを定める。
「坊主!」
「了解!」
シルバの合図と共に、二人は行動を起こした。
「おい見ろよ、アイツら手も足も出ないぜ」
「へっ。こりゃここの<大地の恵み>はいただきか?」
この海賊たちが言うように、地上では未だかつて経験したことのない「空を飛ぶWS」(厳密には少し違うが)に対する対処法が解らずに慌てふためきながらただ倒れていくだけだった。
いつも彼ら騎士団に追われる身であった海賊たちにすればこれほど面白い光景は無い。
あのイレギュラーだった黒いWSも空にいれば怖くもなんともなかった。その隣にいる、銀色のWSも。
「<銀色の亡霊>も無様に地面を走っているぜ」
「それじゃあいっちょ、仕留めますか」
彼らはさながら獲物を追い詰めた狩人のような余裕で銃口を銀色のWSへと向ける。だが次の瞬間、<カーディア改>の素早い射撃行動と共にバズーカから一発の弾が放たれた。
慌てて回避行動に移るが、次の瞬間にバズーカが爆ぜた。
「ッ⁉」
いや、違う。
そう思った瞬間には既に視界全体に黒煙が広がっていた。スモークだ。
ようはただの目くらまし。
しまった、と思った時にはもう遅い。
轟!! と。
黒煙を斬り裂き、一機のWSが目の前に出現した。黒煙が広がってからこの漆黒のWSが目の前に現れる間のタイムラグが短いが為に何が起こったのか、理解が出来なかった。
「な?」
呆気なく。
海賊の機体が爆散した。
隣にいたもう一機の<パイレツァ>のパイロットは一瞬、何が起こったのか理解出来なかった。
真実を言えば、<タケミカヅチ>は地上を走り、<ストックキャニオン>の岩壁を駆けあがり、更に背中の大型スラスターでジャンプしてここまで接近したのだ。
距離的にはギリギリだが、<タケミカヅチ>の出力とハルトのスキルによるブーストがあって初めて出来た芸当である。
「お前⁉」
「二機目!」
だが、海賊たちにそれが理解できるはずもなく、また、させるまえに。
<タケミカヅチ>は腕のワイヤーアンカー<空絶>を射出し、<パイレツァ>の頭部を捉える。アンカーに頭部をガッチリとホールドされた<パイレツァ>はそのまま引き寄せられて胸部コクピットに対艦刀の刃を突き立てられた。
爆発する前にもはやただの鉄塊と化した<パイレツァ>を踏み台にして跳躍。それが乗っていたワイバーンの背に着地すると、再び次の獲物に向かって飛び出す。
残り五機、と頭の中でカウントするとハルトは次の獲物に向かって飛び出した。
ここまで来ればもう彼の独壇場だ。
デスゲーム時代もミッションで敵がフライトユニットを使用した部隊で襲撃にきた際にこうしてなんとか跳躍して敵を倒しつつ、倒した敵を足場にして次の敵へと――、という風にして戦っていたことがあった。
まさに今はそんな状況だ。
とはいえ、まさかそれをビーストを操るWS相手にするとは思わなかったが。
<タケミカヅチ>の動きは敵が反応することが出来ないぐらいに速い。まさに一瞬とも言っても差支えないスピードで敵を一気に仕留めていた。
「空中の敵はハルトに任せて、残存部隊は空中の敵を一機ずつで構いませんから集中的に叩いてください!」
アイリスの指示に従い、残存する警戒部隊と固定砲台は一機に対して集中攻撃を行い始めた。地上から放たれた猛攻が敵の海賊機単体を襲う。
元々、海賊たちのプランは空中から奇襲をかけて敵が対応できない内に叩いてしまおうという物だ。
冷静に立ち回られればこういった集中砲火で一機ずつ落とされる。
この場にある戦力は元々かなりの数が揃っている。それだけの数がいっせいに一機のWSを襲えば回避は難しく、その結果が目の前に現れる。
地上からの一斉掃射に対応しきれなかった海賊機が紅蓮の炎に包まれて爆ぜた。
それとまったく同じタイミングでハルトが別の機体を破壊した。
残り、三機。
そして、<タケミカヅチ>が別の機体に跳びかかろうとした直後だった。別のワイバーンが急速に接近しているのを察知したハルトは<夜桜壱式>を逆手に持って展開。襲い掛かってきた青竹色のWSの一撃を受け止める。
『お前がシドの言っていたイレギュラーか』
「シド、だと?」
聞こえてきたのは男の声。シド、という名を出したという事はシド本人ではなく、尚且つその仲間であるということだ。それらの情報を得たハルトはシドであるという疑念を消去し、目の前の敵に集中する。
敵の近接ブレードを弾き、同時に両者間の距離が開く。
飛行手段をもたない<タケミカヅチ>は――落ちる。
「......!」
この敵を目の前にしてこのまま地上に落下するのは不味い。
そう感じたハルトは急遽、<空絶>を打ち出して青竹色のWS――<ウィンター>の乗るワイバーンに突き刺す。刃型に変形した<空絶>は深々とワイバーンの頭部に突き刺さることで絶命させるに至っていた。
両者は落ちる。
落下していく。
だが、落下しながらも<ウィンター>はライフルから銃弾を<タケミカヅチ>に連射する。ハルトは機体の<A.I.P.F.>を展開して耐え凌ぐ。
しかしその隙を突いて、<ウィンター>は手に所持していたライフルを変形し、近接戦用ブレードを展開した。白銀の刃が日の光に照らされて輝きを放つ。
ブレードを保持したまま<タケミカヅチ>に斬りかかる。シールドとブレードが激突し、周囲に青白いスパークが迸った。
『さあ、始めようか。俺たちだけの楽しい時間を』
空中で激突した二機はそのまま、激しい落下音をたてながら大地に降り立った。
同時に。
両機は弾かれたかのように距離を取る。
周囲には落下時に巻き起こった砂塵で互いの姿がおぼろげになっている。しかし、<ウィンター>が<タケミカヅチ>の前に立ちはだかるようにして警戒するようにブレードを構えているのがかろうじて見えた。
ハルトの前に立ちはだかるWS、<ウィンター>は赤い目をギラつかせながらまるで獲物を見るように<タケミカヅチ>を睨みつけていた。
『見せてもらおうかイレギュラー。お前の力を』
言うと。
<ウィンター>は大地を蹴り上げて加速する。細身の機体の印象通りというべきか、スピードはかなりのもので、途中で跳躍。空中で踊るように回転しながら斬りかかってくる。
ハルトはそれに応えるように<夜桜壱式>を展開。
漆黒の刃と白銀の刃が激突する。
その後始まる激しい刃の応酬。
両者の攻撃が激突するたびに、火花が迸る。その応酬でハルトは敵の実力がシドに近い物を持っていることを悟った。
(こいつ、強い。......けど、)
拮抗したように見えた戦いで先に仕掛けてきたのはハルトだ。一歩踏み出し、<タケミカヅチ>は一撃を上段に振るう。
(ここで大ぶりの一撃? バカな)
<ウィンター>は姿勢を低くし、上段に振るわれたハルトの一撃をかわす。直後に、がら空きになった胸部に<タケミカヅチ>とは正反対の<ウィンター>のコンパクトな突きの一撃が迫る。
「――――!」
だが、ハルトはそれを待ち構えていたかのように開いていた左手の平でブレードを受け止めた。本来ならばWSのマニピュレータでブレードを受け止めれば傷つくのはWSのマニピュレータの方である。下手をすればその部位が破壊される可能性すらある。
いや、そもそもタイミングが完全に合致しなければこんな芸当は不可能である。まさに神業としかいいようのないタイミングでなければ。
「なっ⁉」
驚愕のあまりベルは思わず目を見開く。
<タケミカヅチ>の手のひらに集約された紫電がブレードの切っ先と激しく衝突している。バチバチと音を立てながらブレードの一撃を見事に防ぎきっていた。
――零距離圧縮炸裂砲<鳴神>。
<タケミカヅチ>の左手から迸る紫電が炸裂した。
ブレードは崩壊し、更に<ウィンター>の右腕にまで紫電の一撃が襲い掛かる。
二機のWSの周囲を、閃光が塗りつぶす。
今の一撃で、間違いなく、いや最低限の結果として<ウィンター>の右腕はもっていけたはずだ。
後はトドメをさすだけ。
そう思い一歩、近づいた時だった。
気づく。
「?」
<タケミカヅチ>の周囲を冷気が包んでいた。温度が一気に低下した、ようにも感じる。白煙が辺りに蔓延する。
そして不思議な事に、ピキッパキッという音と共に一歩踏み出した<タケミカヅチ>の足が氷を踏みつぶしていた。
いや、ありえない。
ゲーム時代にしても、このエリアに氷が突如出現するなどというギミックはなかった。
では、この突如として出現した氷は?
『――――まさか、これを使う事になるとはな』
声。
そして、人影。
白煙の向こう側から現れたのは人影だった。サイズは全高十メートル前後。WSサイズのもの。
青竹色の機体、<ウィンター>。
だが、様子がおかしい。
機体の装甲の所々がスライドして赤く輝いている。そしてハルトの眼には<ウィンター>の周囲には何か特殊な空気が渦巻いているように見えた。
そしてもっとおかしいのは、<ウィンター>を中心として大量の氷が広がっていることである。その光景はまるであの青竹糸のWSが氷を僕として引き連れているように思えた。こんな光景はゲーム時代にも見たことがない。
幾多の<Wizard Soldier Online>の戦場を経験したハルトでさえも未知の光景であった。
「なんだ......これは?」
『さあ、なんだろうな』
ベルの声はどこかこの様子を楽しんでいるように思えた。そしてハルトは敵WSの右腕に視線を移す。そこには確かに、右腕があった。
<鳴神>は<タケミカヅチ>の持つ武装の中で最強の威力を有する物だ。その一撃は巨大ビーストをも一撃で葬り去ったほどのものであり、いくらブレード越しとはいえWS一機の右腕をもっていくことは容易い。
だが、それの直撃をくらったはずの目の前の機体の――氷に包まれた右腕はそこに健在である。
ベルは<ウィンター>のコクピット内でほくそえんでいた。まさかこの段階ではやくもこのシステムを使うはめになるとは思わなかったが、まあいい。
空中投影されたウインドウには<WIZARD SYSTEM>という文字と制限時間――つまり、稼働限界時間が表示されていた。稼働限界を示すゲージは減少を始めている。早急に決着をつける必要があった。
「制限時間は三分、か。さて、その間にどれほど楽しめるかな?」
未知の<ウィザードシステム>が織りなす光景にハルトが驚愕していると、その間に<ウィンター>が動き出した。跳躍したかと思うと、地面に落下することなくそのまま空を自在に舞っていた。
フライトユニットの可能性を一瞬、思い浮かべたが違う。
足から生み出された氷が足場を作り、その上を<ウィンター>が滑っている。
これは間違いなく、氷の系統に属する魔法だった。
WSは歩く大規模魔法と呼ばれている。しかし、それだけのパワーをもった人型の巨人を動かすのに魔力を使うのが精いっぱいであり、出来たとしても魔法を兵器に転用するのがせいぜいである。
人のサイズでならばこれだけの魔法を発揮するのは実力のある者ならばそう難しくはない。しかし、このようなWSサイズの魔法を自在に操るのは基本的には今の技術では――攻撃魔力を打ち出すという人間サイズでは基礎中の基礎のことが精いっぱいの今の技術では――不可能だ。
だが実際に今、ハルトの目の前でそのような光景が広がっている。
「くそっ! なんだコイツは!」
「撃て!」
異変を感じ取った近場の部隊が<ウィンター>に向けて発砲を行う。だが、あろうことか<ウィンター>は氷に包まれた右腕をスッとその部隊の方向に向けると、パキパキとその周辺の大気が凍結し始めた。直後に出現したのは氷の壁である。
部隊が放った一撃は氷の壁によって遮られ、遮断される。
『雑魚共が。邪魔だ』
言うと、<ウィンター>は右手のライフルを向けると、一撃を放った。ライフルから放たれたのは収束された魔力攻撃。
驚いたのは収束に<A.I.P.F.>を使用しているわけではない。
なのに、収束しているのだ。
一機のWSが撃ちぬかれた。そして爆ぜる。だがその直後に、その部隊の全WSを吹雪が包み込んだ。見てみれば、<ウィンター>の周囲から大量の吹雪が放出されていた。
青竹色のWSは再度、ライフルを構える。
その銃口に吹雪が集約され、魔力エネルギーの発光現象が起こっていた。
その光景に恐怖した警戒部隊のWS四機はその恐怖を振り払うかのように一斉にマシンガンを連射する。だが、その弾丸は氷の壁に遮られて届くことはない。
『滅べ』
ライフルから、吹雪が集約されたエネルギーの塊が一斉に襲い掛かった。まるで嵐のような一撃は一瞬にして四機のWSを凍結し、その直後に氷像と化した四機のWSは砕け散る。
ハルトは、目の前の光景が何なのか、理解することが出来なかった。
未知のシステム。
それが、自分の目の前に立ちはだかっている。
『これこそが、我が主が授けてくださった<ウィザードシステム>。さあ、次はお前の番だ、イレギュラー』
氷上の悪魔の眼がギラリと赤く光る。
まるで魔術師の如く氷を操る鋼鉄の巨人のその目の色は、血塗られた色だった。




