↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
1/1

白線の内側、消去不能の履歴ファイル、老給仕と冷めないスープ

 二輪に乗って昼間の公道を駆ける。制限速度を優に超えて加速する。ヘルメットを被っていても感じる風に頭の中が洗われる。渋滞する車たちも関係なかった。中央線が白い間はバイクのステージである。ずっとずっと加速する。まるで何かから逃れるように。けれどバイクを追うものは何もない。ただ大きな屋敷が構えているだけだった。相当走ってきたはずなのにいつまでたっても視界から消えない。それが余計に苛立たしい、自分の弱さが際立つようで。幼さを突き付けられるようで。そんな思いをサイレンの音とパトランプの光が切り裂いた。スピードを出しすぎなのは分かっていた。それでいいとすら思った。けれどもっと意外なことだった。追い抜き続けていたが、いつの間にか中央線はオレンジだった。スピード違反は承知の上でやっていた。なのに捕まった理由は禁止区間での追い越しだった。ここでもひどく惨めさを突き付けられるようだった。せっかく家を出ても何一つ自分でコントロールできない。年だけ取っても子供だった。こっそりバイクの入手法を調べて免許も取った。初めて自分で何かをできたと思った。そんなものはまやかしだった。

 頭を白一色にした熟練の老給仕が夕食をワゴンに乗せて主の部屋に入ると、パソコンが開きっぱなしで誰もいなかった。検索サイトが開きっぱなしである。「家出」、「バイク 免許」、「教習所 金額」残っていた検索履歴はこの有様だった。孫のようにかわいがってきた主の部屋で見たいものではなかった。運んできたスープが湯気を立てている。それにあてられたように老給仕の目頭にも熱いものが上る。そのスープはなかなか冷めてくれなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。