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どぐされ黄金卵

作者: えんせい
掲載日:2026/10/10

 時代遅れの紙広告が、1枚揺れていた。地下鉄の電車は私を確実に、目的地に運んでくれている。といってもそれもとても曖昧なものだが。

 トレンチコート内のホルスターに収まっている2丁のよく手入れされたリボルバーはいつも私の心を落ち着かせてくれる。この世界で信用できるのは確実にくる死と他人を従わせることのできる暴力ぐらいのものである。

 電車の振動は、ゆりかごみたいで気持ちよく、ついうとうとしてしまう。とその時目の前に座っている、ぼろぼろの服を着た、おっさんと目が合う。おっさんは口をぽかんと開けている。中には前歯2本が欠け、茶色と、ところどころ黒に溶けだしている歯が見える。おっさんは立ち上がり私のとなりに座る。息が臭い。

「姉ちゃんバウムクーヘン食べへんか?」

 頭がおかしいのかこいつは。

 私は無視する。

「あのなバウムクーヘンとバームクーヘンの違い知ってるか?バウムクーヘンのほうが本場なんやで」

 それは知らなかったがどうでもいいことだ。

「いい店知ってんねん、次の駅出たすぐのところに屋台で売ってるバウムクーヘン屋さんがあるんや、そこ案内してやる」

 それは奇遇だ、私も次の駅で降りる。だがそろそろいい加減にしてほしい。私がそんなにバウムクーヘンを食べたそうに見えるのだろうか。こいつの頭の中には私の頭がバウムクーヘンで出来ているバウムクーヘン星人に見えるのだろうか?

 そろそろ我慢の限界に達した私は拳銃に手をかける。

「な!バウムクーヘン!」

 拳銃を取り出して、男のこめかみに銃口を突き付ける。

「それ以上話すとぶっ放す」

「おーこわ」

 ピポン!ピポン!目的地を告げるチャイムが鳴りドアが開く。引き金を引かなくてもよかったが私は我慢できなかった。

 ぱん。

 ぶちゃ!

 おっさんの脳髄がまとめて吹き飛ぶ。飛び散った脳みそと血と頭蓋骨が隣のサラリーマンのおっさんにかかってしまう。特に頭蓋骨などは素晴らしい勢いで飛び出したためか頬に少しめり込んでいるのもある。ごめんなおっさん。サラリーマンのおっさんは全く意に介さずハンカチで顔を拭くと、スマホでニュースを漁り始める。こんなこと日常茶飯事だものな。

 私は、急いで閉まる寸前のドアに体を滑りこませる。少し挟まってしまったがまあ外に出れたの良しとしよう。階段を使い外に出ると、本当にバウムクーヘン屋があった。いいバターの臭いが漂ってくる。あのおっさんの言っていたことは間違いではなかったのだ。私は少し罪悪感を感じバウムクーヘンを買うことにする。

 一切れ3ドル、まあまあ安いな。

「お姉さん3切れ頂戴」

「はいありがとうございます。あのお客さん・・・血が付いてますけど大丈夫ですか」

「ああこれ、ちょっと地下鉄でおっさんを撃ち殺しただけ、これ返り血ね」

「え!ちょっと待ってください、その人うちの常連さんかもしれません」

 私は詳しくおっさんの特徴を伝えた。

「その人、週に3日は買いに来てくれてはったのに・・・・・」

 ごめんお姉さん。私のマグナムは男のチンコと一緒ですぐぶっ放したくなってしまうのだ。

 私は、罪悪感を感じ+5切れ追加で注文する。バームクーヘンあいや間違えた、これぞほんとのバウムクーヘンだなと思うほど確かに絶品だった。塩気が利いていてそれがバターの濃厚さを引き立ててくれている。香りもとてもいい。

 お姉さんを、めちゃくちゃべた褒めした後私はぴゃっと歩き出す。何しろ人が多いのだ。ぼさぼさしてたら押しつぶされてしまう。ぴゃぴゃぴゃと人を避けて私は歩く。それにしても人が多いな、この人の数だけ物語があるなんて到底信じられない。まあさっき一つの物語終わらせちゃったけど、えへっ。

 それにしても多い。人の背中ばかり見て歩くのはちょっと疲れるので空を見たら鳩さんがバサバサバサと飛んでいる。いいなこいつらには翼があって。今だけ私に分けてほしいな。そんなこと考えていたらあげへんわと言わんばかりに私のすぐ近くに糞が落ちた。なんやこいつ撃ち殺したろか。

 さてさてさて、私は目的地の大型ショッピングセンターに到着した。また人が多い。もう勘弁してくれ。エスカレーターに乗って3階に行く。3階はフードコートになっていてこれまたぎょうさんの人でにぎわっておる。

「おーい!おねえさん!このコップ打ち抜いてみてよ!」

 チャラチャラした男が私に大声で話しかける。隣にはえらく別嬪な奥さんがいる。床には血統書ついてるやろ!ていう犬が行儀よく座っとります。でもなんで私が銃持ってるって分かったんやろ。まあ世の中には色んな能力を持った人がおりますでな、この人もまあその一人やろ、金持ちそうやし。

「あなた、私に当たったらどうするつもり」と隣の奥さん。

「そん時はそん時や!」

「そうね私もなんだか面白くなってきたわ」

 これこれこの感じ、社会的に成功してる人間はどこかぶっ飛んでる気がするのは気のせいか。でもそれはいわゆる社会に適合できないという飛び方ではなく、場を飲み込んでしまうぶっ飛び方なのだ。まっ私にはない能力やな。私にできるんは・・・

「当たっても知りませんよ!動かさんといてくださいね!」

 拳銃を取り出し、照準を合わせる。距離は15mくらいか。後ろに家族連れがいてかわいい赤ちゃんが座ってるが、まあギリギリ大丈夫やろ。まさに腕の見せ所。

 ぱん。

 よっしゃ命中や!中に入っていたコーヒーが穴から漏れ出てわんちゃんにちょっとかかる。後ろの赤ちゃんも毛髪をちょうどかすめる程度だ、まさにパーフェクトや!

「お見事!」

 チャラ男は、空いた穴からコーヒーを飲みほした。

 私の自尊心は大いに満足。よっしゃ今日はいい日や!さてここにはもう用はないしと歩き出そうとした瞬間。

「君!もしかしてどぐされ黄金卵を探してるの?ここにはないよ」

 とチャラ男。えっ!嘘!ガビーン!

 どぐされ黄金卵。5億年前の謎の超文明ポリポリクチャラブスカヤが作ったとされる、謎の物質。それを今日、私は探して何となくここに来ていたのに、無い!嘘!

「スゴ技を見せてくれたお礼に教えてあげよう!伝書鳩を使いなさい」

 え!鳩!?いつの時代やねん。そんなこと思ってたら突然私の肩に真っ白い鳩が乗ってクルックゥなんて鳴きやがんの。可愛い。撫でちゃいたい。少しだけ顎を触ってやる。結構カサカサやな。あと目がぶっ飛んでて怖い。話の通じなそうな目してるな。今日撃ち殺したおっさんみたいな目やな。それと比べると烏の方は外見は怖いけど目をよくよく見てみると意外とかわいくて理知的な瞳だったりするのだ。

 鳩ちゃんの足首には、小さいケースが付けられている。メッセージを入れろということだろう。つーかあのチャラ男は一体何者なんだよと思っていたら案の定もうどこにも姿が見えないのだった。

 私はガムの包み紙を取り出して、マジックの細い方でメッセージを書く。


 おい!どぐされ黄金卵よこしやがれ!


 これで良し。と思っていたら。向かいのビルの高層階辺りでピカッと何かが光った。もしかしてこの光景を見るために鳩を送り込んだんか!それで私が鳩に呑気にメッセージを書いてる滑稽な姿を見てそれを笑っているのだ。さっきの光は恐らく双眼鏡の反射光だろう。許せん!私は銃を構えた。めちゃくちゃ遠い。でもねらえへん距離ではない。

 ぱんぱんぱんぱんぱんぱん。

 たっぷり6発ぶち込んでやった。手ごたえあり。かすりはしたやろ。リロードする。

 ぞろぞろぞろぞろぞろ。

 ありゃまずい。どうやら怒らせてしまったみたいだ。ビルから大量の武装した兵士さんたちがわんさか溢れ出してくる。こりゃ腕が鳴りますな。よっしゃ!私は銃を両手持ちする。

 ばばばばばばばばばばばばばばばばあばばばばばばっばあばっばばばばばばばばばばばばばばばばばっばばばばばばばばばばばばばばば。

 向こうの人ら相当怒ってはるみたい、めちゃくちゃ容赦なくこっちにマシンガンを連射してくる。でも周りの人らは全く動じず飯を食っている。こんなの日常茶飯事やもんな。

 ばばばばっばばばばあばっばあばっばばばばばばっばばばばばばばばばばばばばばばばばばっばばばばばばばばばばばっばばば。

 やべえやべえ!位置替えやんと隠れてる柱が削りきられてしまうがな。隙を見てさっと移動。1階に階段を使って降りる。

 ばばばばっばばばばあっばばばばっばばばばばばあばばb。

 ばばばばばばばあばばばばばばばばば。

 へへっ!そこにはもう私いませんで!よっしゃこっちのターンや!あいつら上ばっかり警戒してて下に降りた私に気づいてへん。今は腹がら空きでっせ。

 ぱんぱんぱんぱんぱんぱんぱんぱんぱんぱんぱんぱん

 OK全員やれたな。なかなか面白かったど。でも修行が足りへんかったみたいやね。来世で修行してきや!

 私はビルの中に侵入する。あー疲れた。エレベーターつーかお、いや待て待て上から止められでもしたら閉じ込められてそれでゲームオーバーやからな。めんどくさいが階段を使っていきまひょか。

 1階、2階、3階、4階、5階、6階、あかん目回ってきた、さっきからぐーるぐるやもんな、あれちょっとまて!ぐーるぐるってちょっと変えたら〇oogleになるやんか!おもしろ!いや別にそうでもないか、よしあとちょっと!急ぎましょ、7階、8階、9階、10階、11階、12階、はー疲れた、13階、14階!よしあと1階や!うぉ!ちょっと!びっくりした!あとちょっとってとこでボス部屋やのに、サメ人間が上から降りてきたやないか!サメ人間?文字通りサメ人間。体は人間、頭はサメ、それ以上の説明が必要ですか?ついでに補足しておくとこいつの瞳には死にかけのところをボスに助けてもらったんや、だから絶対ボスは俺が守る!俺?海で悪さしてたサメですけど・・・と書いてある・・・感じがする、自信はないけど。

 サメ人間は、出会い頭にいきなりローキック!痛ぇ!私はコンクリに体がめり込む!めちゃくちゃ強い!こいつはヤバい!

 ぱんぱんぱん

 あかん!銃弾、弾きよる!そりゃそっか鮫皮やもん!ワサビもすれるもんが弾をはじき返すのは今や世間の常識ですよ!もちろん私だけの小さい小さい世間だが・・・糞ったら!

 ぱんぱんぱんリロード。

 あかん!ヤバい!

 ぐちゃ!

 間一髪で避けたけど、サメ人間の叩いた壁はめちゃくちゃぶっ壊れてる。あれもろにくろうたら死んでまうな。てゆーかさっきのキックで骨いっちゃったぽい。めちゃいたい・・・し・痺れが・・・。

 どガン!

 うお!ちょっと待て!こいつには勝てへん!あかん!説得しよ!

「おいお前!資本家にこき使われて悔しくないんか!」

 どガン!バギン!がっちゃん!

 ほぁ!無理無理説得無理!仕方ない腹くくるしかないやんけ!私はナイフを取り出す。

 タイミング見計らって・・・今や!サメ人間のフカヒレを切り落としたる!その間から銃弾を全弾ぶっこむ!いけえええええええええええええぱんぱんぱんぱんぱんぱん!

 

 サメ人間死ぬ。私の勝ち。フカヒレは後でスープにしよ。


 15階のボス部屋到着したら、ボスは腹から血流して死んでました。多分最初のが当たってたんやな。ラッキー。んで、どぐされ黄金卵は机の上にありました。ラッキー。


 帰りも当然電車に乗ります。ピポン!ピポン!ドアが開いたらおっさんの死体がまだありました。まだ片づけてへんのか・・・ごめんなおっさん、口にフカヒレ突っ込んどいたるからこれで我慢してや。


 おしまい

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