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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕〔残酷描写〕が含まれています。
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"單恋"

掲載日:2026/08/17

「相手を倒したら───」



「───如何(どう)するんだ?」


訓練場の硬い土の上

教本通りの、抵抗を踏み潰す様な姿勢の馬乗りに踏み潰されて居るが、僕は落ち着いて居た


相手が躰格的にも技術的にも未熟な若年騎士の、しかも視習いだからだ



「あっ……」


「ええと……」


変声前の幼い声が、意味の無い言葉を吐きながら動揺を伝える


難なく躰を横に滑らせて逃れると、躰勢を崩した少年の無防備な脇腹に覆い被さり、矢弾の様に膝を突き刺した


けだものの様な呻きを漏らしながら、若年騎士は部屋の隅まで転げ、鈍い音で壁に激突すると一瞬立ち上がりかけ、今度は崩折れて口から血と吐瀉物を吐いた



「戦場なら、既に死んで居た」


「…………痛むか?」


幼年の騎士は、此方に利き手の掌を向けながら立ち上がる

「続けて下さい」の合図だった


嘆息し

土に横たわると、彼の手を引いて導く


仰向けになった躰に少年を跨がらせる、幼い重さが伝わって来た

教練の再開である



少年は覚悟を決める事が出来たのか、敬服する存在である僕の顔に、ようやく拳を振り下ろして来た


振り被る動作が少ない、良い一撃だ

或る程度の速さを持った拳を、其れでも僕は冷静に観察して居た


頭を小さく振って、額で受ける

戦場では良策で無いが、此の重さの打撃を受けるには悪くない防御だ


自らが姿勢的に優位と錯覚して居る若年騎士に、下から何発か拳を打ち返す

効果の有る打撃には成らなかったが、そう悪くも無い音を立てて、若い芳香をした熱い躰液が顔に滴った

打たれて飛散した、少年の汗だ



嘲る様に

彼の打撃を払い除けながら、何発か浅い拳を撃ち込む


彼は本来強いが、優しさ故に攻撃が甘い

此れから先、若年騎士を死なせない為には『容赦の無い攻撃』を覚えさせる必要が有った


拳が彼の顔を打擲した回数が、相応に多く成って来た頃

少年はついに、『人を殺す為の攻撃』を出す気配を視せた


危険に気付き、両手で顔を庇う


次の瞬間

僕は髪を掴まれ、後頭部を(したた)かに土へと打ち付けられて居た



嬉しくなり、僕は笑った


こうした欺きは、技術としてとても高度だ

防御して居た両手が緩んだ隙に、上から拳が落とされて来る


確実な攻撃だ

丁寧に『殴打行為』、『後頭部を土に叩き付ける行為』、『地面に押し付けて躰力を奪う行為』が、一つの打撃の中に総て含まれて居る


一呼吸の中に出せる攻撃は、一般的な戦士ならば二つがせいぜいだ

しかし彼は『殴る拳の流れ』、『その際の躰の振り方』の中に『次の攻撃への予備動作』が含まれて居る


教えずに此れが行えるのは、非凡だった



「お前は───」


「綺麗だな」



他に感想が浮かば無かった


頭部の損傷が酷く、痛みも感じ無い

既に、殴打の音は鈍い音から、液躰音に変わり始めて居た


顔を庇う事を止めて、僕は抱き締める様に少年に震える両手を伸ばす


一応、止めようとしたのかも知れないが


次の一撃は僕の眼球に突き刺さり

頭蓋の中で、粘液が弾ける音が聴こえた

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