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57.報告官の銃弾 前編

 これは、革命軍ガオドゥ司令部における記録である。


 6月20日。

 報告官は、タブレットでアタゴの資料を読み返していた。


 BOSSシステムの技術を盛り込んだ機体としては先にタカオが建造されていたが、完成直後に格納庫が襲撃に遭い。産声を上げることなく爆破された。その後継機として建造されたのが、アタゴ。

 BOSSシステムの使用と拡散を同一機で行おうとしたからこそタカオはなかなか完成せず破壊されたという反省から、BOSSシステムと拡声機能分離が試みられた。それが、アタゴとマヤ。

 あと五年もすればマヤもアタゴとともに前線に出られるだろうと期待されていたところで、事件が発生した。マヤが盗まれたのである。

 結果、革命軍にはアタゴだけが残された。しかしアタゴはマヤでなければ動かせない。万が一国軍の手に渡った際にその戦域を広げるリスクを抑えるためであった。

 しかしマヤが行方不明となれば、誰もアタゴを動かせない。五人の勇敢な団員がアタゴに乗り込んだが、システム起動と同時に共有演算データ量に脳が耐えられず死亡した。故に、アタゴは呪われた機体と呼ばれることとなった。

 遠隔操作で通常航行は可能だが、実戦となるとそのタイムラグが致命的になる。実際に、一度国軍に見つかったからこそアタゴは負傷し、ガオドゥのB47格納庫にて修理が行われていた。


 

 6月30日。B47格納庫……山の中の洞窟に偽装されたそこに、マヤが出現した。

「間違いありません、生体反応完全に一致……重巡洋艦級軍徒、マヤです!」

 革命軍には歓喜の声がわき上がった。

 すぐにマヤを捕獲する意見もあったが、先の戦闘でアタゴは中破しており、修復にはまだ時間がかかる。国軍が警戒を強めていることからも、しばらくは静謐方針が取られることとなった。


7月21日。B47格納庫にマヤとともに野犬らしき犬が侵入。アタゴでこれを追い払った。

「……この動き、訓練されています。野犬じゃありません、軍用犬です」

「いよいよ国軍も、我々を嗅ぎつけたということか」

 報告官は重々しく述べ、副長はそれに静かに答えた。


 8月1日。イセとイカヅチが来港することが告知された。

「たった二頭ではないでしょう。おそらくは、連合部隊です」

「……空港にはゾンジュオの軍用機も来ている。おそらく、近いうちに決戦が始まるだろう。迎撃準備を急げ」


 8月14日。夜間軍事演習には聴覚特化型のアカツキ型が三頭、嗅覚特化型のユウグモ型が二頭。加えて、視覚特化型のミネカゼ型が参加していた。街一つを探すにしては大掛かりすぎるほどの布陣。それだけ国軍は本気であると革命軍は察した。



 8月15日。国軍が攻撃を開始。対象は、ガオドゥ市内全域。焼夷弾をばら撒きながら、基地と格納庫を炙り出さんとしていた。

 アタゴを逃がす意見も出されたが、今はマヤの回収を優先すべきという副長の判断により、アタゴは緊急出撃となった。そして寸でのところでマヤを救出し、その場を離脱。

 そこで、マヤは覚醒した。

「エネルギーシグナル、マヤと合致!ヘイロー出現確認!赤色のヘイロー……報告にない形態です!」

「おそらくエラーだ。誰にも許可を取っていないからな」

 そうしているうちに、アタゴの回路も自動で全開放された。

「操縦をマヤとの共鳴自律制御に移行させろ」

「で、ですが副長、マヤは戦場を知りません、この状況で移行しても撃ち落されるだけです!それに、アタゴだって自律制御なんて一度も……!」

「構わん。やれ。……生まれる前からアレらは共に戦場に立つようプログラムされている。問題などない」

 報告官は、ぐっと言葉をこらえ。言われるがまま操縦をマヤへと託した。


 結果、マヤはイセとトネの連合部隊を全滅させた。覚醒と同時に超弩級戦艦級を討ち取ったというのは革命軍と国軍双方を揺るがす大事件であった。


 一方アタゴは、イセの自爆を受けてなお中破のまま航行を強行、基地へと帰投した。速やかな離脱判断により命拾いした形であり、搭乗者が二名とも軽傷で済んだのは奇跡としか言いようがなかった。

「……離脱判断は、マヤが?いや、マヤにそんな判断能力なんてあるのか……?」

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