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50.重巡洋艦級軍徒 マヤ

 8月15日12時20分。真矢は奇妙な、爆発音のような音を聞いた。事故でもあっただろうか、と真矢は思った。

 12時30分。真矢の家に雷が落ちた。崩れ落ちる屋根、我が家だった瓦礫が真矢へと落下してきた。叫ぶ慎也の声を聞きながら、真矢が死を直感した瞬間。突如飛来したシロが、それを防いだ。

 そこからは、様々な衝撃が一度に真矢に襲い掛かった。

 

 玄関先にいた真矢と慎也に対し、家の中にいた両親は瓦礫に潰されて死亡していた。

 泣き叫ぶ真矢のもとに、上空から火球が落ちた。慎也は咄嗟に庇い、シロの翼の陰へと真矢とともに隠れた。

 同時に、シロの胸部装甲が展開され。真矢と慎也はそこに倒れ込むように逃げ込んだ。

 シロはふたりをのせて素早く離陸した。生体認証を経て起動したシステム。モニターに映し出されたのは、軍による空襲の惨状。雷と、機銃を携えたヘリコプター群に破壊されていく街並み。航空機から投げ捨てられた爆弾により炎上する山並み。黒煙と嵐に埋もれていく、当たり前であったはずの光景。

「なんで、なんでこんなひどいことするの、返して、返してよ!!」

 真矢は、降り注いだ理不尽に絶望し、激怒した。


「【返せないなら死んでよ!!死ねよ、みんな死んで!!!】」


 この瞬間、歌方真矢は重巡洋艦級軍徒・マヤとして覚醒した。瞳は深紅に染め上がり、軍徒回路起動と同時に突破型能力上限解放(リベラゼーション)を実行し。その頭上に赤いヘイローを出現させた。

 それに連動し、シロ……重巡洋艦級軍徒アタゴも全回路を解放した。


 マヤの能力は、BOSSシステム音声の自然言語型使用。端的に言えば、ボスの声を借りて軍徒への命令の上書きを行う能力。アタゴの能力は、その音声の広域拡散であった。


 この能力を前にして、アカツキ、イカヅチ、イナズマ、ヤカゼ、タカナミ、オオナミ、トネは友軍機へと突撃、あるいは軍徒内で殺し合いを行い、自殺した。


 イセは先日のコールメイデンへの対策として、不明確な命令に対する拒否権を与えられていたため、これを拒否し抵抗した。しかし、能力上限解放(アンロック)状態にあるマヤの強制力はすさまじく、イセも体の制御回路を失った。


 そして最終的に、イセはエネルギー制御プログラムを自己破壊し、暴走型能力上限(オーバードライブ)を実行。黒のヘイロー出現の3分後、周辺一帯を巻き込んで自爆し、死亡した。


 

 8月17日7時27分。

 マヤが気付いたときには、その身は地下室のベッドの上。首には、爆弾入りの首輪があった。


「お前は人間ではない」


 革命軍副長、元海軍中佐はマヤに対し淡々と説明を行った。


 歌方真矢は軍徒であること。しかも革命軍で製造された、特別人型個体であること。シロは全身パーツの九十五パーセントを機械化した、マヤと同じ生まれながらの革命軍個体であり、アタゴという名前があること。マヤは十七年前に施設から盗み出されたこと。革命軍も国軍も、ずっとマヤを捜索していたこと。その争奪戦の結果が、先日の惨劇であること。そして、マヤの身は現在革命軍の基地の中にあること。これからマヤは、革命軍として戦わなければならないことが語られた。同時に、逆らえば自分の首輪が爆ぜることも知らされた。



8月17日21時5分。

「……悪かった、ずっと隠してて」

 慎也は深く頭を下げた。

 十七年前、ハイキングの途中遭難した慎也。発見されたとき、抱きかかえられていたのが真矢であった。当時から国の情勢は危うく、保護院では人体実験の噂もあり。歌方家は真矢を家族として引き取ることにした。

 身元を示すものはなく、赤子の手には「MAYA」とだけ印字されていたという。

 真矢が二十歳になったら打ち明けよう。打ち明けた後、きとんと一人前に立派に巣立っていけるように、家族として愛し、育てよう。慎也と父と母は三人でそう約束した旨が語られた。

「血は繋がってなくても、俺はお前を妹だと思ってる。昔から、今も、これからも。……って、かっこよく言ってやるんだって、親父と約束したんだ」

 慎也は笑った。何百回、何千回と見せてきた、兄としての笑顔であった。

「だから心配すんな。いつも通り、兄貴を頼っていいんだからな」

 慎也はマヤの頭をワシャワシャと撫でた。怯えも遠慮もない、いつも通りガサツな兄の手であった。

 マヤはそのぬくもりに涙をこぼした。この涙こそ、自分が兵器でない証拠だと、自分に言い聞かせながら。

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