30.雑談 後編
「ユウバリは幼児趣味の可能性あり。記録。ミネカゼに検証データ共有を申請」
「おっとノカゼちゃんそれはいけない、小生はあれ……ミネカゼを敵に回したくないんですよ。てかミネカゼ型全員怖いんでほんと敵にならないでくださいほんと」
若干焦った表情のユウバリ。実際、サクラと喋る度にミネカゼに睨まれたためである。下手なことを言ったら何かしらの報復をされそう、たぶん軍規の穴を突くような陰湿なのを……となんとなく察してしまうほど恐ろしい目つきで。
「大丈夫、ミネカゼ型怖くない。なお対象はシオカゼ姉様に限定」
「つまり他の全員怖いってことじゃないですかあ……」
どっこいしょ、とユウバリは体を起こした。
「赤ちゃんはどこから来るの?と訊かれたときは焦りましたよ。嘘を言ったら質問攻めで面倒になるし、ほんとの男女の交わりを言ったら刺されると思いましたもん」
「サクラは話したりない雰囲気がありましたものね。で、どのように答えましたの?」
「軍徒はシャーレの人口培地で生成するとお答えしましたね。これなら、嘘もほんとも言ってないでしょう?」
ユウバリは軽く笑った。嘘でもほんとでもないという言葉に、軍徒という存在の異常性をブラックユーモアとして滲ませながら。
「うまく躱しましたわね。わたくしではその切り返しは思いつかなかったですわ」
同じアーカイブレベルでも頭の回転には個体差があるのか、救護隊として先にアーカイブ更新を受けている身としてはなんか不服というか悔しい……と考え込むキヌガサ。
「ヤツガレだったら、コウノトリさんがーって言っちゃうかな。言ってみたいけど、後々大変になっちゃうよね……」
その話を聞いて、サクラはミネカゼに詳細を聞きに行く可能性がある。そうなると絶対めんどくさいだろうなあ、とマミヤは思った。
「ジブンなら、生殖機能の説明を行うと判断。図解添付解説可。および体格と性別から交配実験に適した組み合わせパターンを提案。アオバ隊なら……」
「うむ、ノカゼ。ちょっと具体的過ぎて怖いからその話はここでやめておこうかの」
ぶっ飛んだことを言いだしそうなノカゼをそっと止めるヒカワマル。
非難するでもなく、嘆きも悲しみもなく。ただ会話の流れとして、暗い心地はいなされた。
ああ本当に、優しくて器用なひとたちだ、とユウバリは思った。
「……誰かさんにも見習ってほしいですねえ」
誰にも聞こえないような小さな声で、ユウバリはそうこぼした。




