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追加記録 おねだり上手な

 これは、第十八研究所におけるホウショウとナミカゼの記録である。


 大型軍徒用格納庫。白っぽく、冷たい床。空調は、ややあたたかめに設定されていた。

「おかえりなさい、先生。ホウショウね、ずっとね、待ってたんだよ。待ってたの。楽しみにしてたの。先生は?」

 ナミカゼの横に座りながら、くるりと尾を巻いてホウショウが問うた。

「待たせてしまってすまないな。……小官も楽しみにしていたさ、もちろん」

 つん、とホウショウの額にキスをするナミカゼ。目は愛おしげに細められていた。


「……辛い思いをさせて、申し訳ない」

 床にこびりついた、幾重にも重なった知らぬオスの体液の匂いを感じながらナミカゼは言った。

「平気って言えばね、嘘だよ。嘘になっちゃうよ。でもね、ホウショウが生きてて、ナミカゼが帰ってきてくれるならね、それでいいの。ホウショウ、それだけで頑張れるから」

 ぎゅうっと、翼で抱きしめるホウショウ。そのぬくもりに、やはりナミカゼの心はほだされてしまう。



「それでね、あのね、先生……えっち、してもいい?」

 身を低くして、ねだるようにホウショウが言った。

「気が早いな……小官、帰ってきてまだ五時間だぞ」

「それはそうだけど、次、いつ出発か分からないもん。帰ってくるのもいつか分からないもん。ねえ、ダメ?」

 うるうるとした上目遣いに、ナミカゼの理性が揺らぐ。こういうところ本当にずる賢くなったというか、あざとくてズルい……といった具合である。


「ホウショウ、待つならね、子供育てながらがいいの。じゃないと嫌なの……だって、寂しいんだもん」

 ぼそりとホウショウは言った。その言葉は、ナミカゼを縛るのには重すぎると承知しているから。しかし言わずにはいられない、そんな未熟な自分を自覚しているから。だからこそ、強くは言えなかった。


「……きみのボディコンディションは?」

 根負けした様子で問うナミカゼに、ホウショウの尾がゆらりと立ち上がった。

「完璧だよ、すごく良好。先生のためにね、すごく良好にしたんだよ」

「小官は、明日も訓練の予定があるのだが……」

「じゃあ、訓練に行けないくらいにしてあげるよ。もう、立てないくらいにしてあげる」

 ふわりと翼を広げるホウショウ。同時に、甘い香り……強制発情のフェロモンが部屋に充満した。

 

「卵、いっぱい作ろうね。ね?ナミカゼ」


 以下、記録の大部分を割愛する。何らかの規定に抵触する恐れがあるためである。

 ……一つ付け加えるとすれば。研究所の誰もそれを止めなかったし、孵卵器はバッチリ用意されていたことだろうか。




  一週間後、メイミィ本土攻略隊の基地にて。

「教官、今度の作戦でのアドバイス聞きたいんすけど……」

 起床設定時刻より早く目が覚めたアカギが、隣のナミカゼに声をかけた。

 いつもならナミカゼの方が早く起きているのだが……この日はどうしてかまだ夢うつつの状態であり。ムニャムニャ寝言を言いながらうなされている様子は心配な反面、珍しくて面白くて。アカギはしばらくその寝言を記録していた。


「ホウショウ様やめてくださいーって感じの寝言だったんすけど、大丈夫っすか?お疲れなら、教官は後方待機にするように司令部に申請入れておくっすけど」

 アカギはあっけらかんと、そう提案してみたわけだが。


「……忘れてくれ……」

 羞恥が限界値に達したナミカゼは、しばらくアカギと顔を合わせることができなかった。

割愛した部分はpixivの方に投稿しました。

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