表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
チートな真眼の少年は、異世界を満喫する! ~金髪幼女を助けたら、未亡人のママさん冒険者とも仲良くなりました♪~  作者: 月ノ宮マクラ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

87/99

087・いざ、遺跡突入!

 朝が来た。


 生憎、曇天の空で、太陽も高い崖に隠れていて、周囲はまだ薄暗い。


 3人の美女は、早起きで。


「おはようございます、シンイチ君」


「や、おはよ」


「あら、起きたわね」


 と、僕が目覚めた時には、すでにベッドから降り、冒険者用の装備を身に着けていた。


(う~ん、みんな、元気ですな)


 負けてられない、と、僕も起きる。


「おはようございまふ……っ」


 と、寝ぼけ気味に挨拶。


 少し噛んだ……。


 笑う3人の前で、赤面しつつ探索用の装備を着込んでいく。


 やがて、朝食の時間。


 天幕の外で、大鍋でたっぷりの肉と野菜を煮込んだスープが作られ、塩味の強いパンと一緒に配給が行われていた。


 管理局員や王国兵が並んでいる。


 僕らも並び、配給を受け取る。


 遺跡の探索中は、例のスティック状の『携帯食料』のみになる。


(……うん)


 これを食べたら、しばらくまともな食事はなし。


 しっかり味わおう。


 自分たちの天幕に戻って、4人で談笑しながら食べていると、急遽、パディナ室長とオルクス隊長が訪れた。


 はて……?


 驚く僕らに、2人は、


「昨夜の件を聞いたよ。本当にすまなかった」


「隊長である自分の監督不行き届きです。誠に申し訳ありません」


 バッ


 と、頭を下げた。


 昨日の一幕が2人の耳にも届いたらしい。


 報告を受け、朝一で慌てて謝罪に来てくれたそうで、本当に申し訳なさそうな顔である。


 僕はいいけど……。


 チラッ


 実際、誹謗された亜人美女2人を見る。


 でも、彼女たちは、


「別にいいわ」


「うん、代わりにシンイチ君が怒ってくれたからね。私たちは、それで充分だよ」


 と、笑い、僕を見る。


(へ?)


 僕はポカン。


 見れば、金髪のお母様も笑っている。


 責任者2人は、困惑したように僕を見る。


 え~と?


 なぜか、僕の返事待ちみたいな空気。


 何となく、


「えと、謝罪は受け入れます。僕も大丈夫です」


 と、答えた。


 責任者の2人は安心した表情だ。


 亜人の美女2人も微笑み、クレフィーンさんも満足そうに頷く。


 ただ体面上、何もお咎めなしとはいかないらしく、例の3人は罰として1週間の便所掃除と隊全員分の装備の手入れ作業を命じると、責任者の2人は約束してくれた。


 ま、好きにしてください。


 彼らも去り、やがて、食事も終わる。


 しばしの食休み。


 そして、予定していた時刻も迫り、


 ガシャッ


 アルタミナさんが戦斧を手に、椅子から立ち上がった。


「よし、行こうか」


「うん!」


「はい」


「ええ、そうね」


 僕ら3人も席を立つ。


 僕は1度、深呼吸。


 天幕を出る3人の美女に続き、正面の巨大な壁にある古代遺跡へと歩き出したんだ。



 ◇◇◇◇◇◇◇



 500年前の建造物。


 長い年月で風化し、威容を漂わせる遺跡は、一部が崩れている。


 カラン


 砕けた足元の石片を意図せず蹴り、僕らは、遺跡の入り口前に立った。


 真っ暗な長方形の穴。


 扉は砕け、7割が足元に倒れている。


 カチッ


 僕らは、腰ベルトに吊るしたランタンを灯した。


 それでも、視界は暗い。


 クレフィーンさんが右手を掲げ、


「――光の羽根」


 パアッ


 白い手のひらから、鳥の羽根のような光が3枚、舞い上がり、彼女の頭上でフワフワと漂う。


 彼女が前方に手を伸ばす。


 フワッ


 2枚の光の羽根が前に出る。


 光の羽根の1枚は、僕らの頭上に残り、前に出た2枚の内の1枚は5メートルほど先、もう1枚は10メートルほど先の空中で揺れながら、周囲を照らす。


(光源の魔法だ)


 凄い、明るい。


 足元を照らすランタンと違い、20メートルぐらい先まで視界が開けている。


 アルタミナさんも頷く。


「うん、いいね」


「はい」


 クレフィーンさんも微笑む。


 レイアさんも目を閉じ、


 キィン


 両手を広げると、目に見えない何かが広がる。


「探知魔法も発動したわ」


「ありがとう、レイア」


「別に」


 美貌のエルフさんは素っ気ない。


 4人のリーダーである彼女は、僕を見る。


 ドキッ


 僕も姿勢を正す。


「シンイチ君は私たちの後ろに続いて。絶対に前に出ないように。この探索中は、必ず指示に従うこと。――いいね?」


「はい」


 彼女の言葉に、しっかり頷く。


 僕は、新人。


 しかも、素人だ。


 プロの先輩冒険者の言葉には、素直に従いましょう。


 彼女も笑い、


「シンイチ君は素直でいいなぁ」


 と、満足そうに頷く。


 ……これまでのクラン員には、従わない後輩もいたのかしら?


 ザッ


 彼女は前を向く。


「よし、これから遺跡内に入る。行くよ!」


「うん」


「はい」


「ええ」


 黒獅子公の号令に、僕ら3人は頷く。


 緊張と興奮。


 ドキドキ


 僕の鼓動が早くなる。


 遺跡の周囲、僕らの背後では、拠点にいるパディナ室長とオルクス隊長、管理局員、王国兵の皆さんが、僕ら4人の背中を見つめていた。


 皆の視線の中、


 タン


 黒獅子公が足を踏み出す。


 僕らも続く。


 500年前の古代遺跡の入り口から危険な闇の中へ、僕ら4人の姿は巨大な生き物の口に飲み込まれるように消えていった。


 

 ◇◇◇◇◇◇◇



(へぇ……?)


 これが、遺跡?


 僕は、初めて見る景色に目を瞠る。


 入り口を潜った先にあったのは、遥か前方まで延々と続いている石造りの通路だ。


 天井は高く、ぼんやりしか光が届かない。


 多分、20メートルぐらい?


 もっとあるかも……?


 通路は幅も広く、2車線分ぐらいあった。


 通路上には、太い柱も点在していて、けれど、何本かは真ん中が欠けたり、完全に倒壊したりしていた。


 柱や壁には、装飾も施されている。


 緻密な彫刻だ。


 赤や青、金色などに彩色もされていて、けれど、長年の風化で色が落ちている部分も多い……残念。


 床にも、模様が刻まれている。


 う~ん?


(何かの宮殿みたいな……?)


 そんな印象だ。


 天井や壁が崩れたのか、通路上には石の瓦礫も散見してる。


 躓かないよう気をつけ、


 コツ コツ


 足音を響かせ、僕らは進む。


 歩きながら、


「シンイチ君」


「ん?」


「遺跡の探索で1番大事なことはわかるかい?」


「え? えっと……」


 突然の質問だ。


 僕は答えに困り、アルタミナさんは小さく笑って教えてくれる。


「現在地を見失わないこと」


「現在地……」


「そう。自分が今、遺跡のどこにいるか? 入り口からどちらの方向にどれだけの距離、移動したか? 道順を覚えているか? それが大事なんだよ」


「…………」


「もし迷子になれば、最悪、永遠に出られない」


「永遠に?」


「うん。実際、位置を見失って、やがて光源の魔力や燃料が尽き、暗闇の中で身動きできずに餓死した冒険者は多いんだよ」


「…………」


 ゾクッ


 想像するだけで怖い話。


 レイアさんも言う。


「道順や入り口の場所がわかれば、魔物に襲われた時も退路がわかるのよ」


「あ、うん」


「わからないとね、逃げる決断も遅れるし、運が悪いと袋小路に追い詰められて、嬲り殺しになることもあるの。だから今回、私も位置把握の魔法を覚えてきたわ」


「へぇ……なるほど」


 僕は感心してしまう。


 クレフィーンさんは、


 パサッ


 荷物から、1枚の紙を取り出す。


 地図だ。


 昨日、室長さんが見せてくれた遺跡の地図を、彼女は広げていた。


 ランタンで照らしながら、地図の1点を白い指が差す。


「今は、ここです」


「うん」


「地下2階層に通じる階段はここで、入口から続くこの赤い線が最短経路になります」


「そうなんですね」


「はい」


 彼女は頷き、


 パタン


 地図を閉じる。


「ここでクイズです」


「え?」


「私たちはここから、どのような道順で歩けばよいでしょうか?」


(……はい?)


 僕、唖然。


 クレフィーンさんは笑っている。


 え?


 もしかして、今の一瞬で地図を暗記できたかってこと?


 位置を把握って、そういう……?


 亜人の美女2人を見る。


 彼女たちも笑顔で『どうかな?』『どうかしら?』って楽しげに僕を見ていた。


(いや、わかるか!)


 と、言いたい。


 多分、地図の重要性を僕に教えたいのだろう。


 それはわかる。


 わかるけど、


(素直に降参するのも嫌だなぁ)


 と、思う。


 だから、僕は卑怯な手を使う。


 いや、これも実力です。


 と言い訳して、


 ヒィン


 空中に文字が浮かぶ。


(ふむふむ)


 そこに書かれた文章を読み、それを口にする。


「ええと、真っ直ぐ112メード進み、突き当りを右折。道なり進み、三叉路を左、その先を右。進むと崩落して通路が塞がってるから、通路の右側4つ目の部屋の崩れた壁を抜けて奥へ。それで――」


「…………」


「…………」


「…………」


 大人な美女3人は、ポカンと口を開けていた。


 やがて、


「わかった、わかったよ、シンイチ君」


 と、アルタミナさんが両手を下に動かして、僕の言葉を抑える仕草をした。


(――ん)


 僕も口を閉じる。


 彼女は苦笑し、


「私たちの負け。降参だよ」


 と、顔の横に両手を上げた。


 赤毛エルフさんも「貴方の目、反則よ」と不満そうに言う。


(えっへん)


 僕は、逆に胸を張る。


 クレフィーンさんは困ったように笑い、頬に手を当てる。


「シンイチ君は、本当に凄いですね」


「えへへ」


「その目……秘術の力を使われると、私たちの冒険者としての経験や知識、常識が通用しません。むしろ、貴方の柔軟な思考の邪魔をしそうです」


「え……?」


 いや、そんなことは。


 僕は驚く。


(でも……)


 確かに、もし明かりが消えて真っ暗闇でも、真眼君の文字は見える。


 文字を信じて歩けば、問題ないような?


 現在地もわかるだろう。


 あれ?


(僕、本当に凄くない?)


 新しい自分の可能性に気づいちゃう。


 ……いや、でも、待て。


 凄いのは『僕』じゃなくて『真眼』だ。


 もし、何らかの理由で突然、真眼の力を失ったら……?


 ゾゾゾッ


 せ、背筋が震えるぜ。


 僕は慌てて、


「いえ、冒険者としての基礎知識と勉強は大事です! これからも色々教えてください!」


 ギュッ


 両手で、お母様の白い手を強く握った。


 彼女は驚いた顔。


 友人2人も目を丸くしている。


 真っ直ぐ見つめていると、クレフィーンさんの美貌がなぜか赤くなり、「あ、う……その……」と言い淀む。


 え、駄目?


 焦った僕は、顔を近づけ、


「お、お願いします、クレフィーンさん!」


「っ……は、はい!」


 コクコク


 僕の懇願に、至近距離にある彼女の美貌は何度も頷いた。


 よかった。


 ホッと、僕は息を吐く。


 握っていた手を離すと、クレフィーンさんは自分の両手を揉むように撫でる。


 そして、恨めしそうに上目遣いで僕を見る。


(あ、痛かった?)


 僕は謝ろうとする。


 でも、その前に、


「もう……シンイチ君は、悪い子です」


「うっ」


「ですが、わかりました。これからも私が色々と教えますので、しっかり覚えてくださいね」


「あ……はい!」


 僕は、大きく頷く。


 金髪を揺らしながら、お母様もクスッとはにかむ。


 ……おお。


 少女みたいに可愛らしい。


 大人な美女のそういう表情は、凄く素敵です。


 ドキドキ


 少し、胸が高鳴ってしまう。


(こ、こんな危険な遺跡の中なのに……いかんいかん!)


 僕は胸を押さえ、自分の感情を戒める。


 と、見れば、僕らの様子にレイアさんは左右に首を振り、アルタミナさんも苦笑を浮かべている。


 え、何?


 クレフィーンさんも、潤んだ青い瞳で僕を見つめる。


 視線が熱い。


 な、何だろう……?


 なんか、僕の頬も熱くなる。


 と、その時だ。


 ヒィン


 突然、真眼が発動。


 目の前の空中に『赤文字』が浮かぶ。




【警告】


魔導人形ゴーレム1体が接近中。


・距離、343メートル前方。


・現在、桐山真一たち4人の存在を補足し、排除しようと近づいてきている。


・戦闘力、170。




 ……ふぁっ!?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
基礎は大事、きっと真眼君もそういうと思った・・・けど、此処でゴーレムが接近してきたがどう対応する? 戦闘力170は厄介。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ