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チートな真眼の少年は、異世界を満喫する! ~金髪幼女を助けたら、未亡人のママさん冒険者とも仲良くなりました♪~  作者: 月ノ宮マクラ


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074・5枠の魔法

(はぁ~、残念)


 落ち込みながら、僕は歩道を歩く。


 先を行く3人の美女は、そんな僕の様子に苦笑している。


 レイアさんは、


「シンイチは、本当に常識を知らないのね」


(うぐぅっ)


 傷に塩を塗り込む、容赦なしのエルフ様。


 泣くぞ、僕。


 恨みがましく見るけれど、むしろ逆に彼女は愉快そうに笑っていらっしゃる。


 じ、女王様か?


 そんな僕に、クレフィーンお母様が優しく言う。


「シンイチ君。確かに魔法は5種類しか覚えられませんが、実際は、その時の用途に合わせ、不要な魔法回路は削除して、必要な魔法回路を都度、覚え直していくのが通例なのですよ?」


「え……?」


 僕は、目を丸くする。


「魔法回路って削除できるんですか?」


「はい」


 長い金髪を揺らして、お母様は頷く。


(ええ~?)


 そうなんだ?


 アルタミナさんも頷き、


「例えば、クエストの場所が寒冷地なら保温魔法、砂漠なら冷却魔法、洞窟なら光源魔法……みたいに、1つの回路枠をクエスト毎に切り替えるのさ」


「へぇ……凄い」


「ま、貴重な古代魔法は消さないけど、近代魔法の分は、結構、ポンポン変えてるよ」


「なるほど、そうなんですね?」


 そっかぁ。


(つまりは、ゲームでいうスキル枠が5つしかない感じかな?)


 と、理解する。


 簡単に切り替え可能で、出てくる敵やマップに合わせて、スキルを選ぶのと同じ。


 あれ……でも、待てよ?


(近代魔法の石板って、1枚何百万円もするよね?)


 僕は聞く。


「あの……石板、使い捨てですか?」


「そうだね」


「…………」


「だから、収入の低い間は、似たようなクエストを連続で受けるのが当たり前かな。私たちは、毎回、変えてるけどね」


 あっさり言う、煌金級の美人さん。


 か、金持ちめ……。


(これが、ゲームと現実の差かぁ) 


 実際のスキル切り替えは、上級の冒険者のみが行えるらしいや。


 お金が稼げるようになれば、より多くの状況に対応でき、更に稼げるようになっていく――そんな成功者の法則ですね。


 僕は若干、遠い目。


 お母様は苦笑する。


「それとですね。古代魔法は別として、実は冒険者ならば、5つの内2つの魔法はほぼ確定しています」


「え、確定? 2つ?」


「はい、身体強化と回復です」


 彼女は、白い指を2本、立てる。


(ほぅ……?)


 見つめる僕に、クレフィーン先生は言う。


「この2つは必須になりますね。あるとないでは、生存率が全然違います。私たち3人も全員、習得していますよ」


「へ~、そうなんですか?」


 僕は、お母様の友人2人を見る。


 彼女たちも頷く。


「そうだね」


「冒険者が最初に覚えるのは、この2つのどちらかよ」


 と、おっしゃる。


(なるほど)


 僕も頷く。


 じゃあ、僕の買いたい石板リストには、この2つも絶対に含めよう。


 先生方の助言、守るの大事。


 アルタミナ先生は、


「残る3枠は、もう人それぞれかな。魔法で戦いたい人は攻撃魔法で、物理で戦いたい人は補助魔法で埋める感じだね」


(ふむふむ)


 耳を傾ける僕。


 赤毛のレイア先生も「サポート役に徹する人は、解毒、強化、探知あたりかしらね」と更に補足してくれる。


 勉強になるなぁ。


 学校の勉強は苦手だけど、こういう勉強は大好き。


(不思議ですな)


 と、思うよ。


 学習意欲の湧いた僕は、聞く。


「じゃあ、3人はどんな魔法構成にしてるんですか?」


「私たちかい?」


 と、黒髪の美女。


 3人は顔を見合わせる。


 そして、


「冒険者はあまり手の内を言うものじゃないけど、ま、シンイチ君ならいいかな」


「あ、ごめんなさい」


「いいよ。私はね、古代魔法が2つと身体強化に回復。最後の1枠は、物理防御強化だよ。今回は例の大角竜との近接戦闘があったから、被弾時のダメージ軽減用にね」


「おお……」


 なるほどね。


 赤毛の美女も片手を腰に当て、教えてくれる。


「私は古代魔法1つに、身体強化と回復。残りの2枠は、探知と耐熱の魔法よ」


「探知と耐熱ですか?」


「ええ、探知は半径300メートルの存在を把握できるわ。アルと2人で活動してるから、先手を取られると辛いの。だから、その備えとして常備してる魔法ね」


「へ~?」


「耐熱は、今回の竜の火炎ブレス対策で習得したわ」


「なるほど」


 僕は頷く。


 やはり、2人とも色々考えてる。


(じゃあ……)


 期待を込めて、視線を3人目の美女へ。


 金髪のクレフィーン先生は、


「私は、4枠は冒険者を引退した時のままですね」


「へ~?」


「古代魔法が1つ。それと、回復、身体強化、虫除けの3つです。虫除けの魔法は、村での農作業時にも役に立ちましたね」


「おお、農作業でも」


「ええ。あと、残りの1つは変えましたが、それは……」


「それは?」


「それは……内緒です」


 と、紅い唇に白い人差し指を当て、少し困ったようにはにかむ。


(ええ~?)


 僕、落胆。


 友人2人も驚いていたので、彼女たちも知らないみたい。


(う~む、何の魔法だろう?)


 き、気になる。


 ジッ


 僕は、金髪のお母様を見つめてしまう。


 すると、


 ヒィン


(あ)


 真眼が発動しちゃった。




【クレフィーンの隠した魔法〈静寂の祈り〉】


・精神安定の魔法。


・精神的苦痛を緩和する。


・夫の死後、娘と生きていくために、強い不安に苛まれたクレフィーンが習得した近代魔法である。


・村での迫害の日々も、この魔法により辛うじて乗り越えられた。




(え……あ)


 僕は、言葉をなくす。


 精神安定……精神的苦痛……生きていくため……。


 ああ、


(そっか……)


 クレフィーンさんの隠していた繊細な部分に、僕、勝手に触れてしまったみたいです。


 僕はうつむき、


「……シンイチ君?」


 その様子に、お母様も気づく。


 僕は謝る。


「ごめんなさい」


「え?」


「今、秘術の目が発動しちゃって……それで……」


「あ……」


「…………」


「……そうですか」


 クレフィーンさんは、少し困ったように笑う。


 友人2人は「?」という表情。


 お母様は、吐息をこぼす。


「シンイチ君は悪い子ですね」


「…………」


「ですが……少しだけ、安心しました」


「え?」


「勇気がありませんでしたが、私は、自分の弱さや苦しさを誰かに知って欲しかったのかもしれません。そんな自分の心に、私も今、気づきました」


「…………」


「秘密を知って、貴方はそんな顔をしてくれる……そのことを、不思議と嬉しく感じています」


「クレフィーンさん……」


 その言葉に、僕は驚いてしまう。


 お母様は、優しく笑う。


 白い手を伸ばし、


 ギュッ


 僕の身体を、ゆっくりと抱き締める。



「――ありがとう、シンイチ君。どんな魔法よりも、今は、貴方の存在そのものが私を癒してくれていますね」



(……っ)


 やばい。


 胸が熱くなり、涙が出そう。


 クレフィーンさんの温もりや匂い、慈愛の心が僕を包み込んでくる。


(お、お母様ぁ)


 キュッ


 僕も傷だらけの彼女の心を慰めるように、少しだけ抱き締め返す。 


 どうか……!


(どうか、もうこの人が、そんな魔法を使わなくても大丈夫な日々になりますように……!)


 そう強く願いながら。


 そんな僕の様子に、何かを感じたのか、


「……ふふっ」


 長い金髪を揺らしながら彼女は嬉しそうに微笑み、その青い瞳を静かに伏せたんだ。

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― 新着の感想 ―
それぞれ個性が出ていますね、そしてクレフィーンさんの弱さを見抜いて癒す存在となっているシンイチ・・・素晴らしい。
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