073・知らなかった事実(しくしく)
本日、まさかの注目度ランキング(連載中)の8位に入っておりました!
嬉しい!
そこからこの作品を見つけ、ブクマ、評価して下さった方、本当にありがとうございます!
よかったら、これからもゆっくり楽しんで下さいね。
また、いつも読んで下さる皆様も本当にありがとうございます!
どうか皆さんにこれからも、少しでも面白かった、楽しかったと思って貰えるようにがんばります♪
それでは本日の更新、第73話です。
よろしくお願いします。
「あの……明後日、クエストなんですか?」
冒険者ギルドを出て、4人で大通りを歩きながら、僕は気になったことを聞いてみた。
黒髪の美女は頷く。
「そうだよ」
「私たちのクラン、これでも王国トップの一角だもの。半年先までクエスト予約が埋まってるのよ」
と、赤毛のレイアさんも言う。
金髪のクレフィーンお母様も微笑み、
「ええ、彼女たちは凄いんですよ」
と、友人を称賛する。
(へ~?)
そっか。
さすが煌金級のいるクラン、それだけの期待と信頼をされてるんだ?
僕は聞く。
「ちなみに、次はどんなクエストで……?」
「『古代遺跡の番人』討伐、だね」
「番人?」
「遺跡の次の区画に通じる唯一の扉前にいるらしくてね。王立遺跡管理局の調査隊が先に進めなくなってるんだ」
「あらら」
「騎士と王国兵、20人ぐらい死んでる」
「…………」
ええ……?
(その番人、やばくない?)
僕は、恐る恐る訊ねる。
「……大丈夫なんですか?」
「まぁ、多分?」
「…………」
「私たちに来る指名依頼は、こんなのばかりだしね。いつものことだよ」
あ……察し。
ギルド長、心配する訳だ。
これが、このクランの難易度の基準。
そう言えば、他のクラン員も全員ついていけなくて辞めたって言ってたじゃん。
(そっかぁ)
僕、遠い目。
アルタミナさんは苦笑し、
「ま、今回からフィンもいるしね。それに、シンイチ君もいるからきっと余裕さ」
ポン
と、僕の頭に手を乗せる。
――嘘だ!
と、思うけど、でも、僕を心配させまいという気遣いも感じるので文句は言うまい。
つ~かね?
(どんな危ない場所だって、クレフィーンさんも行くんなら、僕も行きますよ)
万が一あったら、やだし。
そうなったら、ファナちゃんに申し訳ないし。
だいたい、もしそうなった時、彼女に何て報告するんだよ……そんな嫌な役目、絶対したくありません。
だから、
「――ん、がんばります」
と、僕は素直に言う。
アルタミナさんは驚いた顔をする。
獣耳がピンとして、細長い尻尾がパタパタ左右に踊りだす。
嬉しそうに笑い、
「ふふっ」
クシャクシャ
と、僕の髪を乱暴にかき混ぜたんだ。
相棒のレイアさんも「ふぅん?」と少し感心したような顔をして、クレフィーンさんも優しく笑う。
(はいはい……)
僕は、飼い主に撫で回されるワンコの気持ち。
ま、好きにしてください。
そんな僕に、
「うん、頼りにしてるよ、シンイチ君」
と、黒髪の美女は、頬を赤くしながらはにかんだんだ。
◇◇◇◇◇◇◇
「――で、今日、明日の2日間は自由時間になるんだけど、シンイチ君? どこか行きたい所とかある?」
突然、聞かれた。
(へ?)
彼女は笑って、僕に言う。
「せっかく王都に来たんだ。どこでも案内するよ?」
(おお)
もしや、クランの福利厚生ですか?
見れば、クレフィーンさん、レイアさんも頷いている。
僕は考え、
「じゃあ、魔法石板屋に!」
と、回答した。
3人とも、キョトンとしている。
お母様が確認するように、
「魔法石板屋……ですか?」
「はい」
「その、王都には聖教の大神殿もありますし、名物の噴水公園や歌劇場、美術館、娯楽施設、美味しいレストランなど、他にも様々な観光スポットもありますが……」
「あ、大丈夫です」
「…………」
お母様、何とも言えない表情。
別にね?
王都に来た以上、観光はいつでもできるんだし、急ぐ必要ないじゃん?
(それより、魔法石板だよ!)
このアークレイン王国の首都なら、クレタの町よりたくさんの石板があるはず。
そう、
(――僕は、魔法を覚えたいのだ)
日本に比べて、異世界はあまりに危険が多い。
その現実は、今日までに実感しまくりだ。
だからこそ、自衛手段を早く、多く手にしておきたいのである。
幸い、貯金も500万円以上あるし?
近代魔法も2~3個は買えそうだし、古代魔法も魔力紋が適合するなら値段次第で買っておきたいよね、うん。
レイアさんは肩を竦め、
「本人が希望してるなら、いいんじゃない?」
「う~ん、まぁ、そうだね」
アルタミナさんは物足りなそうな表情だけど、同意する。
お母様は困った顔。
息を吐き、長い金髪を揺らして頷く。
「わかりました。王都には、品揃えの良い魔法石板店も多いので、色々、巡ってみましょう」
「うん、お願いします」
僕は、笑顔で答える。
そんな僕に、クレフィーンお母様は苦笑する。
と、その時、
(……そう言えば、3人は魔法、どれくらいの数、覚えているんだろう?)
ふと気になった。
古代魔法はともかく。
近代魔法に関しては、魔法石板を使用すれば、ほぼ確実に覚えられるという。
つまり、
(金さえあれば、いくらでも……だ)
そして、引退したクレフィーンさんはともかく、現役の2人は冒険者トップの報酬額を得ている方々である。
もしかして、100とか200?
いや、それ以上……?
ドキドキ
ちょっと、黒髪の獣人さんと赤毛のエルフさんを見つめてしまう。
2人は視線に気づき、
「ん? 何だい?」
「何よ?」
「あ、いえ、その~、お2人は今、魔法をどれくらい覚えてるんですか?」
「え?」
「は?」
美女2人は、唖然とした顔。
僕は、今、自分の考えていたことを伝え、期待を込めて、もう1度、数を聞く。
すると、3人の美女は顔を見合わせる。
(???)
何だろう?
僕、変なこと言ったかな?
不思議に思う僕を、3人は見る。
金髪のお母様が頬に手を当て、幼い子供に教えるように口を開く。
「その、シンイチ君」
「はい」
「あのですね……実は、人が魔法を使うための魔力回路は、古代、近代の種類を問わず、人体には最大5つ分しか形成できる容量がないんですよ」
「……え?」
僕は、黒い目を瞬く。
(5つ……?)
黒髪の美女も頷き、
「6つ以上の回路は、人体への負荷が大き過ぎてね」
「試した人間は、100パーセントの確率で死んでるわ。だから、現在は5種以上の回路を形成できないよう、石板自体に安全装置がついてるの」
と、赤毛の美女も続ける。
そ、そんな……。
(つまり、人は魔法を5種類しか覚えられないの?)
クラッ
僕は額を押さえ、よろける。
な、何てことだ……。
(将来、何百種類もの魔法を使いこなす『大魔法使い』みたいな存在になれるかもと密かに思ってたのに……!)
うう……。
我が夢、破れたり……しくしく。




