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チートな真眼の少年は、異世界を満喫する! ~金髪幼女を助けたら、未亡人のママさん冒険者とも仲良くなりました♪~  作者: 月ノ宮マクラ


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070・7度目に当たる剣

【木剣を当てる方法】


・目の前の相手を無視し、『真眼』が表示する文字通りに行動する。


・6回の攻撃ののち、1回の防御。7回目の攻撃が当たる。


・真眼君を信じよ。




(……おお)


 マジか?


 いや、信じるよ、真眼君。


 君を信じたから、僕は今日まで異世界で生きてこれたんだ。


 これからも、


(――信じる!)


 ギュッ


 僕は、木剣の柄を強く握る。


 目の前には、凄まじい威圧感を放つ巨漢のギルド長が立っている。


 右手の木剣は下げたまま……。


 でも、隙に感じない。


 僕が斬りかかった途端、あの木剣が動いて、その瞬間に叩き殺されそうな予感をビンビン感じる。


 ヒィン




【もう1度、助言】


・相手を無視せよ。




(う、うん)


 僕は深呼吸。


 だけど、強い気配は嫌でも目に入り……あ、そうだ。


 グッ


 目に力を込め、わざとピントをずらす。


 ぼやぁ……。


(よし、これで見えないぞ)


 もう怖くない。


 いや、正直、怖いけど……でも、目の前に誰もいないつもりで、これ以上は考えちゃ駄目だ。


 あとは、真眼君の文字だけを見るぞ。


 と、その時、


 ヒィン


 空中に、青い文字が浮かぶ。




【斬れ】


・文字の場所を、指示通りに攻撃せよ。




(お?)


 よし、やるぞ。


 僕は木剣を振り被り、【斬れ】の文字に斬りかかる。


「やあっ!」


 バキン


 ぎゃ……っ!?


 斬りかかった木剣が、無造作に振り上げられたギルド長の木剣で弾かれた。


 伝わる、強い衝撃。


(……手、痛ぁ)


 僕は涙目だ。


 え、何だ今の?


 ギルド長の木剣、霞むような速さだったぞ?


 あかん……。


 あれ、当たったら死ぬ。


 ゾクゾク


 背筋が震える。


 意識して無視してるのに、これだけ恐怖を感じるってどんだけだよ……。


(く、くそ)


 でも、信じる。


 僕は、真眼君を信じるんだ。


(頼むぜ、真眼君)


 ギュッ


 ジンジンと痺れる両手で、もう1度、自分の木剣を握り直す。


 そして、


 ヒィン


 青文字が浮かぶ。




【上から斬れ】




(!)


 僕は素直に従う。


 ブンッ


 振り下ろした木剣は、巨漢のギルド長にサッと横にかわされた。


 木剣の先が、床石を叩く。


 ガチッ


(くっ)


 手、痛い。


 でも、痛みも無視。


 同時に、


 ヒィン



【斜め下から上に斬れ】




(えいっ)


 即座に、僕は、文字目がけて木剣を振る。


 カン


 軽く弾かれる。


(まだまだ!)


 ヒィン




【横薙ぎに払え】




(むん!)


 ビュッ


 ギルド長は、1歩、後方に下がる。


 その目の前を、僕の木剣の先は通過する。


 ヒィン




【全力で斬れ】




(たあっ!)


 全力で振り下ろす。


 ガン


 真横に構えたギルド長の木剣が、僕の木剣を受け止める。


 次の瞬間、


 グン


(うわっ?)


 力任せに押し返された。


 僕は、後方に転びそうになり、


 ヒィン




【耐えて斬れ】




(んぐっ)


 後ろ足で必死に耐え、振り子のように反動で前に踏み出し、木剣を振る。


 ギルド長は、横に回避。


 瞬間、


 ヒィン


(!)


 赤文字が表示。




【しゃがめ】




 パッ


 考える間もなく、僕は膝の力をカクッと抜く。


 身体が下がり――直後、


 ボッ


 僕の髪を掠めて、ギルド長の横薙ぎに振るった木剣が頭上を通り過ぎる。


 同時に、


 ヒィン




【全身全霊で突け】




 恐怖を感じる間もなく、青文字が表示。


 条件反射で、



「――やぁああ!」



 僕はしゃがんだ状態から勢いよく立ち上がるように、木剣を真っ直ぐ、思いっきり突き出した。


 厳つい顔に驚きが浮かび、


 シュッ


 ギルド長は太い首を捻って、突き出された僕の木剣を回避する。


 ……あれ?


 僕は驚き、間合いを取る。


(今の……7回目の攻撃だよね?)


 え?


 かわされた?


 あれ、当たるんじゃなかったの?


 し、真眼君~?


 木剣を構えたまま、僕は内心、焦った。


 だけど、真眼君は答えない。


 そして不思議なことに、目の前のギルド長も自分の首を左手で触りながら、何もしてこない。


 いや、


(……殺気が消えてる?)


 なんか、戦う気がなくなったみたい。


 え、何で……?


 戸惑う僕の前で、彼は大きく息を吐く。


 僕を見て、


「――ああ、わかった」


 と、呟いた。


(え?)


 僕は黒い目を瞬く。


 巨漢のギルド長は首を振りながら、


「いや、よくわからんことがわかった、と言うべきか……お前は本当にチグハグな奴だな、坊主?」


「? えと……」


 僕、困惑。


(意味、わかんないんですけど……?)


 と、僕の表情に気づき、ギルド長は苦笑する。


 大きな手で、


 パン


 僕の背中を叩く。


(ぐへっ?)


 い、痛~い。


 悶える僕に、


「よし、手合わせは終わりだ」


「え? あ、はい」


「今後、あの3人について行くのは大変だと思うが、もし何か困ったことがあったら俺に言いに来るといい。――ま、がんばれよ」


 と、白い歯を見せて笑った。


 屈託がなくて力強い、頼れる男の笑顔だった。


 あ……うん。


 何かわからないけど、認めてもらえたのかな……と思う。


(――ん)


 僕は、気を付けの姿勢。


 侍のように木剣を下向きに腰の横で持ち、深い角度でお辞儀する。


 礼節、大事。


「ありがとうございました」


 ペコッ


 ギルド長は「おう」と頷くと、大きな背中を向けて片手を上げ、振り返らずに去っていく。


 入れ替わりに、


「シンイチ君!」


 と、金髪のお母様が駆けてくる。


(あ……クレフィーンさん!)


 僕は、表情を輝かす。


 彼女の後ろからは、友人2人も歩いてくる。


 先に辿り着いたお母様は、僕の前にしゃがむと上下に視線を動かして、


「怪我は、ありませんね?」


「うん」


 僕は頷く。


 お母様は安心したように「ああ……」と微笑み、僕の身体を抱き締めた。


 ムギュッ


(お、おお……!)


 女神様からの勝利の抱擁。


 うへへ……。


 そんな僕らの元へと、友人2人も到着する。


 笑いながら、


「やるじゃないか、シンイチ君」


「まぐれにしても、大したものね」


 なんて言う。


(???)


 何のこと?


 不思議に思っていると、


「おや、気づかなかったのかい? 君の剣がギルド長の首を掠めていたんだよ」


「え……?」


 あ、そうなんだ?


 全然、気づいてなかったよ。


 そんな僕の態度に、3人は顔を見合わせる。


 赤毛のエルフさんが、


「グレイシャン・ダーレックに剣を当てられる人物なんて、この世にそう何人もいないのよ?」


 と、少し真剣に言う。


 ふ~ん?


「そうなんですね」


 僕は頷いた。


 その反応に、2人は苦笑、1人は首を振り嘆息する。


 でも、そっか。


(真眼君は、正しかったんだね?)


 うん。


 僕には、そっちの方が大事。


 目を閉じて、


(ありがとう、真眼君)


 心の中で感謝。


 その様子に、クレフィーンお母様は優しく笑い、まるで子供にするように僕の髪を撫でてくる。


 えへ……。


(なんか、気持ちいいや)


 そんな僕の耳元に、お母様は唇を寄せる。


 その口を開き、



「――ふふっ、よくがんばりましたね、シンイチ君。とても格好良かったですよ」



 と、甘い祝福の声を響かせたんだ。

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― 新着の感想 ―
取り敢えず実力を認めてくれた・・・と見るべきか。
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