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チートな真眼の少年は、異世界を満喫する! ~金髪幼女を助けたら、未亡人のママさん冒険者とも仲良くなりました♪~  作者: 月ノ宮マクラ


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060・王都も間近(ムニュン)

 ――王都アークロッドを目指す旅は、続く。



 難所の山岳地を超えた地点で、その日は1泊、翌日、最初に見えた街で、僕らは報告のために街の役所に立ち寄った。


 突然の黒獅子公の来訪だ。


 役所の人は驚き、街長も出てくる大騒ぎ。


(まぁ、ね?)


 自分の管理区域で、王国の有名人が野盗に襲われたのだ。


 責任問題とか、あるんだろうね~。


 ま、アルタミナさんに気にした様子もなく、野盗に襲われた地点や拠点の場所を教え、諸々後始末をお願いする。


 ちなみに、拠点は山中の崩れた古城跡だ。


 その要請に、もちろん向こうは快諾。


「すぐに討伐隊を編成します!」


 とのことだ。


 ……ふむ。


 話が早い。


 でも、これ、黒獅子公の報告だからだね?


 仮に僕が同じ報告しても、新人の未成年の冒険者1人の発言じゃ、すぐ動いてくれなかったかもしれない。


 逆に『なんで、拠点を知ってるんだ?』と疑われそう。


 社会的立場と信頼。


 なるほど、


(――これが権力か)


 3人の女冒険者にペコペコする大人たちを見て、僕は、その意味を感じたよ。


 凄いなぁ。


 そして、多分、


(こういうのが、正しい使い方なんだろうね?)


 と、思う。


 僕の視線に、


「?」


 黒髪の美女は微笑みながら、かすかに首をかしげていた。



 ◇◇◇◇◇◇◇



 3日目の移動は、順調だった。


 街道も平坦な道になり、周囲は草原と雑木林が広がり、遠くには水色に霞む山脈が見えている。


 見晴らしも良く、


(なんか、平和……)


 魔物や野盗の姿もない。


 午後になると、別方向からの街道が合流して、道が広くなった。


 だいたい3車線ぐらい?


 たまに、すれ違う馬車もある。


(……王都から来たのかな?)


 人の多い乗合馬車や荷台に荷物を満載した荷馬車も多く、歩いている旅人を何人か追い越したりもした。


 やがて、夕方。


 宿場村の1つに到着。


 明日は、王都に到着するので、本日はここで宿に泊まるとのこと。


 黒髪の美女さんは、


「風呂で、汗を流そうか」


 と、笑う。


(おお……)


 嬉しい。


 ずっと竜車旅だったので、お風呂入ってなかったのだ。


 たまに、お湯で濡らした手拭いで身体を拭くぐらい。


 しかも、3人とも男の僕がいるのに、平気で服の下をモゾモゾさせるから、正直、大変だったんだぞ?


 でも、


「気になる?」


 とか、


「たかが15年しか生きてない人の子に見られても、平気よ」


 とか言われる。


 クレフィーンお母様は、


「あ……ご、ごめんなさいね。こんなおばさんの身体じゃ、見るのも嫌ですよね」


 と、慌ててたっけ。


(めっちゃ見たいです!)


 と、叫びたい。


 紳士な日本人男児として、僕は必死に耐えましたよ。


 褒めて?


 ちなみに、天使ちゃんはキョトンとしてました。


 …………。


 ま、そんなこんなもあったので、嬉しいのだ。


 で、宿泊。


 久しぶりの屋根の下での食事も楽しみ、お風呂も満喫、そのまま就寝し、朝になった。


 何事もなく、4日目の出発。


 竜車は街道を進む。


 道中、他の街道が次々合流し、本線は6車線ぐらいになった。


(さすが、王都)


 王国の各方面からの道が繋がっているんだ。


 同じ方向に進む馬車、竜車も多くあり、たくさんの車両が列となって進んでいく。


 僕らも、列の中の1台だ。


 周囲は、田園風景が広がり、まばらに家屋も見える。


 広い平原地帯だ。


 あと面白いのが、街道はもう石畳なんだけど、一部、違う色の石が混ざってる。


 その正体が、


 ヒィン




【光石】


・夜間に発光する石。


・暗闇の中でも街道の位置がわかるため、夜間でも馬車、竜車などが移動できる。


・交換時期、約10年ごと。




(へ~?)


 言わば、異世界テクノロジーって奴だ。


 面白いね。


 なんて思っていると、


 クイ クイ


「お、お兄様」


 と、ファナちゃんに袖を引かれた。


(ん?)


「どうしたの?」


 と聞くと、


「あ、あれ」


 と、金髪幼女の小さな人差し指は、窓の外の空を差す。


 空?


 僕も見る。


 青い空には太陽が輝き、白い雲が浮かぶ中を、1台の大きな船が飛んでいた。


 …………。


 …………。


 ……ふ、


(船ぇっ!?)


 僕は、黒い目を見開いた。


 遥か天空を飛ぶのは、金属の翼が生えた純白の船だ。


 金属翼の後端と船尾から、虹色に輝く何かが吹き出し、光の粒子を散らしながら進んでいく。


 遠いので、ゆっくりに見える。


 けど、実際は、結構な速度が出ていそう。


(何あれ~?)


 驚く僕に、


「ああ、魔導飛行船ですね」


(わっ?)


 いつの間にか、僕のすぐ横で金髪の美貌が窓の外を一緒に覗いていた。


 ち、近い。


 神秘的な美貌が目の前にある。


 長く柔らかな金髪が、窓からの風圧に揺れ、僕の腕を撫でていく。


 なんか、ミルクみたいな甘い匂い。


 ドキドキ


 驚く僕に、


「発掘された古代パルディオン魔法王国期の飛行装置が組み込まれているそうです。王国管理の船で15台ほど存在し、現在は国内外各地を結ぶ連絡船として運航されているんですよ」


「へ、へ~、そうなんですね?」


「はい。ただ、乗車賃はとても高いそうで……私のような庶民にはとても手が出せませんね」


 と、お母様は苦笑する。


(そ、そうですか)


 僕は、コクコクと頷く。


 あ、あの……近すぎて、胸が……。


 と、黒獅子公の美女が笑う。


「私とレイアは、何回か乗ったことがあるかな」


「そうね。王家や貴族が依頼者で、急ぎの仕事の時だったわね。特別に手配して使わせてもらえたのよ」


 赤毛エルフさんも頷く。


(……へぇ)


 さすが、煌金級の冒険者。


 と、意識を逸らし、


 ムニッ


(っっっ)


「さすがですね、アル」


 振り返ったお母様の動きで、余計に僕の腕が柔らかな肉に沈み込む。


 わ、わざとか?


 わざとなのですか、お母様!?


(くぅぅ)


 内心、僕、悶絶。


 純真なファナちゃんも「す、凄いね」と笑う。


 友人2人も得意げだ。


 お母様も、可愛い娘さんの金髪を優しく撫でる。


 だけど、動いた拍子に、


 ムギュッ


 たわわなお胸が僕に押し付けられ、また大きく形を変えてしまう。


(…………)


 僕は、無、です。


 と、そこで、


「? ……シンイチ君?」


 真っ赤な僕に、ようやく彼女も気づく。


 そして、密着している自分が何をしているか、ついに悟られた。


「っ」


 バッ


 慌てて離れる。


 胸を押さえながら、


「ご、ごめんなさい」


 と、真っ赤になりながら、僕に謝罪する。


 僕は……無です。


 娘さんは「?」と首をかしげる。


 お母様の友人2人は、無自覚な友人の行為を把握したようで、呆れた顔をしていた。


「フィン、君ね……?」


「そういうところ、本当に気をつけなさい」


 と、無防備な友人を叱る。


 お母様は「……はい」と赤面したまま、項垂れる。


 僕を覗き見て、


「あ、あの、シンイチ君。ごめんなさいね」


「…………」


「その、私みたいなおばさんの胸を押し当てられて、嫌でしたよね。本当にごめんなさい」


「…………」


「あの……」


「…………」


「…………」


 反応のない僕に、お母様も沈黙。


 何だか、悲しそうで……。


(うぐぅ)


 僕は……正直に言う。


「い、嫌じゃなかったです。むしろ、その……ごめんなさい、もっと触ってたいぐらい気持ちよかったですぅ」


「え……」


 彼女は、青い目を見開く。


 僕は、無言。


(これ以上、無理!)


 何も言えない。


 友人2人は驚いた顔をし、すぐに『ふ~ん?』と意味深に笑う。


 お母様は、僕を見つめる。


 み、見るなぁ。


 顔、熱すぎて駄目です。


 彼女はしばらく呆然とし、それから熱っぽく瞳を潤ませる。


 吐息をこぼし、


「そう、ですか」


「…………」


「それでは今度、もっと……その……シンイチ君が望むなら……」


 ボソボソ


 と、小声で呟く。


 ……え?


 望むなら?


 僕は彼女を見る。


 お母様は恥ずかしそうに微笑み、僕を見返した。


(ク、クレフィーンさん?)


 ドキドキ


 心臓の鼓動が早くなる。


 お互い、真っ赤だ。


 と、その時、


「……お母様?」


「!」「!」


 ビクゥッ


 僕らは一緒に身体を跳ねさせた。


 お、おお……。


(忘れてた!)


 慌てて金髪を乱したお母様も「な、何でもないですよ、ファナ」と娘に笑いかけ、その頭を撫でる。


 娘ちゃんは気持ちよさそう。


 ご、誤魔化せたかな?


(ほっ)


 僕らは息を吐く。


 と、お母様と目が合う。


「…………」


「…………」


 何となく赤くなりながら、お互いに笑ってしまった。


 いやぁ、熱い熱い。


 パタパタ


 僕は自分の顔を手で仰ぐ。


 …………。


 まぁ、そんな一幕もありながら、竜車は順調に進んでいき――やがて、2時間後、僕らは目的の王都アークロッドに到着したんだ。

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― 新着の感想 ―
クレフィーンさん・・・実は「そういうの」が好みだったり?
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