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チートな真眼の少年は、異世界を満喫する! ~金髪幼女を助けたら、未亡人のママさん冒険者とも仲良くなりました♪~  作者: 月ノ宮マクラ


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059・女冒険者VS野盗!

 竜車の扉を開き、アルタミナさん、レイアさんが順番に外に出る。


 クレフィーンさんも続き、


(――僕も)


 と、覚悟を決め、座席を立つ。


 けれど、


「シンイチ君は、車内に残ってください」


 金髪のお母様が、僕を振り返る。


(え……?)


 驚く僕に


「車内に1人では、娘も心細いと思います。どうか、お願いできませんか?」


 と、申し訳なさそうに微笑む。


(ファナちゃん?)


 僕は、幼女を見る。


 彼女は母親の言葉通り、少し不安そうな表情をしていた。


 キュッ


 僕の外套の裾を、小さな指で摘む。


(ああ……うん)


 少し理解した。


 クレフィーンさんが娘を心配してるのは本当だろう。


 だけど、


(多分、僕の身も案じてるね?)


 秘術の目はある。


 古代魔法も使える。


 でも、実際の所、戦闘は素人だ――玄人の彼女は、それを見抜いてる。


 だからだろう。


 金髪のお母様を見る。


 僕を見る彼女は、優しく微笑んでいる。


 と、その時、


 ヒィン


 真眼が発動。




【クレフィーンの憂慮】


・娘を案じている。


・貴方を案じている。


・貴方に人殺しをさせたくないと思っている。


・貴方に人を殺す自分の姿を見られることを憂いている。




(……あ)


 人殺し。


 そうだ、相手は魔物じゃない。



 ――同じ人間なのだ。



 彼女の秘められた思いに、僕は少々、頭を殴られた気分になってしまう。


 目を閉じ、


(……うん)


 僕は1度、頷く。


 目を開き、


「わかりました。ファナちゃんとここにいます」


「はい」


 お母様も安心したように笑った。


 そして、表情を凛々しくすると、長い金髪をなびかせ身を翻し、車外に出ようとする。


 その背中に、


「ご武運を!」


 と、僕は言う。


 彼女は、一瞬止まる。


 表情が見えないほど、かすかに振り返り、


 コクッ


 小さく頷く。


 そして、今度こそ、車外に出ると扉を閉めた。


「お母様……」


 不安そうな幼女の声。


 僕は、彼女を抱き寄せ、


「大丈夫。お母様、強い人だから絶対に大丈夫だよ」


「……うん」


 幼女も僕に抱き着き、頷く。


(よしよし)


 少しでも不安が消えるように、僕はその金髪を撫でてやる。


 視線を上げ、


(もしもの時は、真眼と古代魔法で加勢しよう、うん、そうしよう)


 と、自分に言い聞かせる。


 人殺し……。


 なるのは、正直、怖い。


 怖いけど、でも……クレフィーンさんたちがやられそうなら、容赦しないぞ!


 キッ


 と、僕は窓から車外を睨むのだ。



 ◇◇◇◇◇◇◇



 窓から、外の様子が見える。


 馬車ギルドの2人の御者は、2頭のパル竜の口元の拘束具を外し、また車両との連結具も外して2頭を解放した。


 ガアッ


 自由になった2頭が吠える。


 クレフィーンさんは扉の前に陣取り、アルタミナさんは車両の後方へ。


 レイアさんは、


(……あれ?)


 姿が見えない。


 どこだろう?


 そう思っている間にも、野盗は迫る。


 襲ってくる十数人の野盗は、全員、剣や盾、斧などを手にしていた。


 ヒィン




【野盗】


・生活苦から、野盗に転じた者たち。


・元農夫が多いが、元冒険者も3人いる。


・殺人、強盗、強姦など、多くの犯罪を行い、すでに罪悪感も感じていない。


・戦闘力、60~150。




(そう……)


 経緯は同情するが、容赦は必要なさそう。


 戦闘力60~150が25人とすると、合計1500~3750ぐらい?


 こっちは、黒獅子公540、赤羽妖精370、雪火剣聖320、2頭のパル竜が180と150で、合計1560か。


 数値上は、結構、厳しい。


 でも、戦闘は数字が全てじゃないさ。


 ギュッ


 不安を消すように、腕の中の金髪幼女を抱き締める。


 と――ついに接敵。


「おらぁ!」


「死ねやぁ!」


「がははっ!」


 先頭にいた3人の野盗たちが、手の武器を振り被り、金髪の女冒険者に斬りかかる。


 その表情は、まるで悪鬼。


 同じ人間とは思えない。


(クレフィーンさん!)


 僕は息を飲み、


 キン


 金髪の女冒険者は、手にした幅広の両刃剣を真横に一閃。


 3人が一瞬、ブレる。


(?)


 悪鬼の如き野盗たちは動きが止め……直後、全員、上半身と下半身に別れて地面に倒れた。


 …………。


 ……え?


 僕は、唖然。


 大量の血液が、人間だった肉塊からこぼれている。


「…………」


 美しい金髪をなびかせ、クレフィーンお母様の凛々しい美貌は、少しも動じない。


 殺人行為。


 だけど、嫌悪はない。


 むしろ、まるで悪鬼を討つ聖なる騎士の剣にも見えて……。


 これが『雪火剣聖』。


 その後ろ姿を、


(……格好いい)


 僕は、素直にそう思ってしまった。


 野盗たちも、一瞬で仲間がやられ、驚いた様子。


 何人か、足が止まる。


 と、そちらに向け、黒い疾風のような影が走り抜けた。


 ドパパン


 足を止めた野盗たちの首が、空中に飛ぶ。


(!)


 アルタミナさん!


 彼女は、獣人らしい素晴らしい速度で戦場を駆け抜け、その戦斧で野盗たちの首を撥ねていた。


 さすが、黒獅子公。


 その黄金色の獣の瞳が、爛々と輝いている。


 と、その時、


 ガン ガガン


(!?)


 僕らのいる車両に、複数の矢が当たった。


 鈍い音を響き、


 ガァン


 目の前のガラスにも、矢がぶつかる。


 あ、危な……っ。


 窓ガラス、割れなくてよかった。


 もし割れてたら、破片が目に刺さってたかもしれない。


 ドキドキ


 心臓が早鐘を討つ。


(でも、どこから……?)


 目を凝らすと、


 ヒィン


 森の奥の暗闇に【野盗〈弓の射手〉】との文字が5ヶ所ほど見えた。


(あそこか)


 結構、遠い。


 少し高台で、上から狙撃されてる感じ。


 黒獅子公と雪火剣聖は、竜車を守る位置にいて、手が出せない。


 どうする?


 と思った時、


 カタッ


(ん?)


 車両の天井から、物音がした。


 直後、ビンッと強い振動音がして、車両の上から何かが森の奥へと飛翔していった。


 すると、


(え……文字が1つ、消えた?)


 僕は驚く。


 と、ビン、ビン……と音が連続し、直後に森から【野盗〈弓の射手〉】の文字が消えていく。


 僕は驚き、


 ヒィン




【レイアの狙撃】


・車両の屋根にいる。


・大弓により、野盗の弓の射手を狙撃している。


・敵の位置は、探知魔法で把握。




(レイアさん!?)


 え、屋根の上にいたの?


 僕は思わず、目の前の天井を見上げてしまう。


 カタ ビンッ


 あ、また文字、消えた。


 さすが、赤羽妖精……。


 残った最後の【野盗〈弓の射手〉】の文字は、居場所がばれたと気づいたのか、慌てたように森の中を移動し始めた。


 だけど、


 ビン


(あ……)


 最後の文字も消えた。


 探知魔法の範囲内……逃げ切れなかったんだね。


 ご愁傷様。


 心の中で、手を合わせる。


 レイアさんの活躍で、敵の狙撃手はいなくなる。


 残りは、


 ヒィン


(戦士系が10人、補助魔法の使い手が3人か)


 と、真眼で確認。


 補助魔法――つまり、身体強化などを野盗たちも使っている。


 だけど、


 パキィン


 クレフィーンお母様の幅広の両刃剣は、それを物ともせず、野盗たちの武器を砕き、その肉体を斬り伏せていく。


 実に華麗な剣捌き。


(……うん)


 素の性能が違う。


 違い過ぎる。


 身体強化とか古代魔法とか以前に、お母様自身の実力が素晴らしい、凄まじい。


 なるほど、


(まさに剣聖、だね)


 僕も納得だ。


 黒獅子公も野盗を蹴散らし、2頭のパル竜とそれを操る2人の御者さんも、野盗を牽制、僕らのいる車両に寄せ付けない。


 赤羽妖精の大弓狙撃もある。


「く、くそ……!」


「引け、引けぇ!」


「畜生! 化け物どもが……!」


「何だってんだよぉっ!」


 形勢不利を悟り、生き残った野盗たちは一斉に逃げ出した。


 うわ、早い。


 まさに蜘蛛の子を散らすように、森に逃げていく。


 ビン


 あ……1人だけ、赤羽妖精の狙撃にやられた。


 でも、8人ぐらい、逃げられた。


(むぅ……)


 生き残った野盗は、いつか、また違う誰かを襲うかもしれないぞ。


 少し悔しい。


 全員、捕まえたかった。


(…………)


 よし。


 真眼で……。


 ヒィン


 僕がそんなことをしている間に、3人の女冒険者は深く息を吐く。


 戦闘終了だ。


 僕らは全員、無事。


(うん、よかった)


 僕は、ファナちゃんと一緒に車外に出る。


 う……血の臭い。


 見れば、街道と周囲の森には無数の死体が転がり、少しゾクリとする光景だった。


 だけど、


「お母様……!」


 タッ


 僕の手を離れ、ファナちゃんが駆け出す。


 金髪の美女も気づき、


「ファナ」


 母親の顔で優しく微笑むと、娘に向けて大きく両手を広げた。


 ポフッ


 その胸に、幼女が駆け込む。


 金髪の母娘の抱擁。


 その温もりに、娘は安心した顔になり、母親も慈しみの眼差しだ。


(うんうん)


 僕は、ほっこり。


 お母様の友人2人も、穏やかな表情だ。


 僕は2人に、


「お疲れ様です」


 と、労いの言葉をかける。


 2人の美女は微笑み、


「ありがとう、何とか撃退できたよ」


「貴方も無事ね?」


「はい」


 僕も頷き、3人で笑い合う。


 やがて、クレフィーンさんたち母娘も来て、全員で無事を喜んだ。


 お母様は、


 ピトッ


 僕の頬に手を当て、


「シンイチ君……怖い思いをさせましたね」


 と、心配そうに言う。


 ん~?


 彼女は僕を、ファナちゃんと同じ子供みたいに思ってるのかな?


 僕は苦笑し、


「大丈夫です」


「シンイチ君」


「それより、クレフィーンさんの強さと格好良さに見惚れてました」


「え……?」


「素敵でしたよ」


 と、本心を伝える。


 お母様は、目を丸くする。


 少し赤くなり、


「そ……そうですか」


 と、戸惑ったように視線を伏せる。


 なんか、可愛い。


 そんな母親に、娘さんも不思議そうな顔をしている。


 友人2人は苦笑。


 そして、


「それにしても、結構な数、逃げられたよね。本当は、全滅させたかったんだけどな」


 と、アルタミナさん。


 少し残念そうだ。


 黒獅子公の言葉に、赤羽妖精も頷く。


「そうね。思った以上に、逃げ足が速かったわ」


「だね」


「本当、ああいう手合いは、生き残るための勘は鋭いのよ。駆除し切れない世の中の害虫ね」


 と、辛辣だ。


 同じ人間。


(でも、一線を越えすぎてる)


 僕も、その辛辣さを否定し切れない。


 アルタミナさん、クレフィーンさんも頷いている。


 そして、


「野盗の件は、次に通る町で役所に報告しておこう。きっと近くに根城がある。国兵がその捜索をしてくれるさ」


 と、黒獅子公の美女が言う。


 友人2人も頷く。


(あ)


 僕は、挙手。


「場所、わかってます」


 と言う。


 3人の美女は『え?』と僕を見る。


 僕は、自分の目を指差し、


「あの野盗の拠点、秘術の目で見つけておきました。それも一緒に報告しましょう」


 と、笑う。


 3人は、呆気に取られた顔。


 西洋人形みたいな金髪の幼女だけが「お、お兄様、凄い……」と尊敬の眼差しだ。


 どやぁ。


 そんな僕を、金髪のお母様の青い瞳が見つめる。


 少し困ったように笑い、


「本当に……シンイチ君には敵いませんね」


 と、優しい声で言う。


 その表情は、何だかとても艶っぽい。


(…………)


 なんか、照れるぜ。


 えへへ。

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― 新着の感想 ―
場所が分かったのは大きい。後は報告すれば解決してくれるが・・・問題は、それまでに辿り着けれるかだな・・・
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