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005・初めての異世界会話

新作2日目、本日も3話更新予定です。


それでは、まずは第5話から、よろしくお願いします。

(き、緊張するな)


 知らない人たちに話しかけるのって、勇気がいると思う。


 正直、少し怖いかも。


 でも、今はがんばらないと。


 近づく僕に、馬車の人たちも気づいた。


 視線が集まる。


(……う)


 結構な圧力。


 僕は思い切って、


「こ、こんにちは」


 と、声をかけた。


 代表するように、女冒険者さんが僕の前に出てくる。


(おぉ……美人さん)


 太ももまで届く金色の髪に、切れ長の青い瞳をしている。


 顔立ちは西洋風。


 背も高く、足も長い。


 剣と鎧を携える姿は、まるでファンタジー映画に出てくる海外の女優さんみたいだった。


 確か名前は、クレフィーンさんだっけ?


 彼女は、


「ええ、こんにちは」


 と、穏やかに微笑んだ。


 ……日本語だ。


 顔は海外なのに、日本語が聞こえる。


 吹き替え映画を見てる気分。


 だけど、不思議と日本語ではないように感じる。


(何だ、これ?)


 その時、


 ヒィン


 自分の右手が見えた。




【桐山真一】


・転生する時に、異世界言語を習得済み。


・現在、アーク大陸語を使用中。



(え……?)


 いつの間に?


 ……いや、でも、


(考えたら『真眼』も勝手に覚えてたし、同じようなものなのか)


 と、納得する。


 そんな僕に、彼女は言う。


「私は、アークレイン王国冒険者ギルドの所属冒険者、クレフィーン・ナイドと申します」


「あ、うん」


「先程の助力に感謝を。おかげで助かりました」


「ううん」


 僕は笑った。


(よかった)


 思ったより、友好的だ。


 僕も言う。


「僕は、桐山真一です」


「トウヤマシンイチ?」


「うん。あ、真一が名前で、桐山が苗字」


「まぁ、そうですか」


 彼女は頷く。


 少し考え、


「失礼ですが、シンイチ君はこの国の人間ではありませんね?」


「!」


 ドキッ


 簡単に見抜かれた。


 でも、当たり前か。


 実は、馬車の方にいる人たちも皆、西洋風の顔立ちなんだ。


 しかも、髪や目も有色。


 黒髪黒目は、僕1人だけ。


(……ここが勝負!)


 僕は頷き、


「うん、僕は日本という国の人間です」


「ニホン?」


「遠い、遠い東の海の島国なんだけど……知らない、かな?」


「ええ、初めて聞きます」


 彼女も頷く。


(そっか)


 いや、当たり前なんだけど……でも、少し寂しい。


 と、僕の表情に、


「知らなくて、ごめんなさい」


 と、彼女が申し訳なさそうに謝る。 


 僕は慌てて、


「あ、ううん。大丈夫」


「…………」


「それで、その、僕は日本から来て、この国を旅している最中なんです」


「……お1人で?」


「はい、そうです」


「…………」


「あ、えっと、日本には『可愛い子には旅をさせろ』という言葉があって、若い内に見分の旅に出る風習があるんですよ」


「まぁ、そうなんですね」


「はい。でも、来たのは最近で、まだこの国の地理とか常識とか、あまりわかってないんですが」


「…………」


「あと、おまけに、その……実は先日、魔物に襲われて旅の荷物をほとんどなくしちゃって……」


「え?」


 金髪のお母様は、青い目を丸くする。


 僕は情けない笑顔で、


 カチャッ


 折れた剣と肩提げ鞄を見せる。


 彼女は「まぁ」と小さく呟いた。


「それは大変でしたね」


「…………」


「もし必要なら、今回のお礼も兼ねて、旅の荷物を少しお分けしましょう」


「いいんですか?」


「はい。それとあの馬車はクレタという町に向かうのですが、もしよろしければ一緒に乗っていきませんか?」


「ぜひ! お願いします!」


 僕は、大きく頷いた。


(やった~!)


 思った以上に、上手くいった。


 正直、こんなに簡単に信じてもらえるとは思っていなかったよ。


 と、その時、


 ヒィン


 真眼が発動した。


(ん……?)




【クレフィーン・ナイド】


・貴方の説明に、少しの疑念を感じている。


・けれど、娘を助けた行動や恩義から、深く追求しないことにした。


・現在の好感度、65/100。




(…………)


 そ、そっか。


 あえて、騙されてくれたのね。


 大人のお姉さんです。


 見つめる僕に対して、


 ニコッ


 クレフィーンさんは、優しい微笑みを向けてくれていた。



 ◇◇◇◇◇◇◇



 僕と女冒険者さんは、馬車の方に向かう。


 すると、


 テテテッ


(ん?)


 女の子が1人、馬車の方からやって来た。


「……っ」


 僕の前で、立ち止まる。


 隣のクレフィーンさんが「ファナ?」と少し驚く。


 それから僕に、


「すみません。私の娘のファナです」


 と、言う。


(あ、うん)


 僕は頷く。


 ファナちゃんは、


 キュッ


 胸の前で、小さな両手を握る。


 それから、


「さ、さっきは、あ、ありがと……!」


 ペコッ


 と、頭を下げた。


(おお……)


 礼儀正しいね。


 確か、まだ9歳だっけ?


 見た目は、母親と同じ金髪青目。


 髪の長さはおかっぱで、まるで西洋のお人形さんみたい。


 しかも、美形。


 隣のお母様と同じように、将来は美人になること間違いなしだろう、うん。


 ただ、知らない人と話すのに緊張しているのか、頬は赤く、青い瞳は何だか潤んでいる様子。


(……ふむ)


 僕はしゃがみ、目線を合わせる。


 ポン ポン


 柔らかな金色の髪を軽く叩く。


 そして、


「うん、無事でよかった」


 と、緊張を解すように笑いかけた。


 それを見た途端、


 ボッ


 幼女は、耳まで真っ赤になる。


(あれ?)


 逆効果だったかな?


 その様子に、お母様は「まぁ……」と驚き、それから困ったように娘を見る。


 幼女は、両手で頬を押さえ、


「あぅぅ……」


 と、呻いている。


 クレフィーンさんは、そんな娘に寄り添い、優しく肩を抱く。


 それから僕に、


「娘がすみません。では、馬車に行きましょう」


「あ、はい」


 僕も頷いた。


 3人で馬車の前へ。


 クレフィーンさんが僕のことを、2人の御者さんや乗客に紹介してくれる。


 馬車を守った冒険者の言葉もあり、僕の同行は簡単に許可された。


(よかった~)


 僕は、


「ありがとうございます、よろしくお願いします」


 と、頭を下げる。 


 それに、皆も笑顔になってくれる。


 僕が幼女を助けたり、ボス狼の居場所を見抜いたのは全員が見ていたので、皆さん、意外と好意的なようで。


 ヒィン


(お……?)


 真眼が発動。


 皆の上に、【巡礼者】【旅人】【商人】【薬師】などの肩書きが表示。


 更に、『好感度』も出る。


 全員、55~70ぐらい。


 ……意外と高め?


(ふむ)


 馬車を守るのに貢献したからかな。


 ちなみに1番高いのは、


(85、か)


 ファナちゃんだ。


 まぁ、子供は特に純粋だもんな。


 …………。


 やがて、亡くなった馬を街道脇に移動させ、馬車は運航可能な状態へ。


 母娘と僕も、馬車に乗り込む。 


 ドキドキ


 実は、初めての馬車体験。


 客車は木製で、車体の左右に長椅子のような座席がある。


 座席上には、赤い敷布。


 木枠の窓は、左右に3ヶ所ずつ。


 大きな荷物は車体前部の空間に置く場所があり、手荷物は座席下に置く感じだ。


(ほへぇ……)


 こんな感じなんだ?


 見ていると、


「こ、ここ」


 ポン ポン


 と、座席に座った幼女が隣の席を叩く。


 僕は「うん、ありがとう」と笑って答え、そこに座る。


 赤くなるファナちゃん。


 彼女を挟んだ反対の座席に、金髪のお母様が座っていて少し困った顔をしている。


(ふ~ん?)


 意外と椅子、固い。


 長時間座っていると、痛くなりそうだなと思う。


 やがて、御者が出発を告げ、


 ギシッ


(お……来た!)


 乗合馬車は車輪を軋ませながら、ゆっくりと動きだしたんだ。

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