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チートな真眼の少年は、異世界を満喫する! ~金髪幼女を助けたら、未亡人のママさん冒険者とも仲良くなりました♪~  作者: 月ノ宮マクラ


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042・竜を狩る女冒険者たち

 バシャン


 盛大な水飛沫を散らし、深緑の大角竜は走り出した。


 向かう先には、2人の美女――クレフィーンさんとアルタミナさんだ。


 2人も竜へと走りながら、


「フィン!」


「はい!」


 互いに声をかけ、


 バシャッ


 途中で左右に進路を分けた。


 目標が2手に分かれ、竜の足が若干、鈍る。


 瞬間、黒髪の獣人は凄まじい脚力で方向転換し、竜に向かって大きく跳躍した。


(うわっ!?)


 5メートルぐらい跳んでるぅ!?


 そのまま、戦斧を振るう。


 黒地に赤い模様のある戦斧は、竜の頸部に叩き込まれた。


 バキィン


 硬い衝突音。


 同時に火花が散り、


「――とっ?」


 獣人さんの身体の方が弾かれた。


 え?


(アルタミナさん!?)


 驚く僕の視線の先で、彼女は猫科の獣人らしく身を捻り、水に着地する。


 バシャッ


 飛沫が舞う。


 竜の方は、無傷。


 深緑色の岩みたいな鱗には、かすかな白い傷があるだけだ。


『グオオオオン!』


 深緑の大角竜は吠えた。


 着地したアルタミナさんに向け、長い角を構えて突進する。


(うわ、まずい)


 彼女の態勢は、まだ整っていない。

 

 逃げられない。


 そう僕が青褪めた時、


「はっ!」


 ガキィン


 側面から、金髪をなびかせたクレフィーンさんが走り込み、緑色の竜に斬りかかった。


 幅広の両刃剣が大角に当たり、


 ギッギィン


 火花を散らしながら、横に逸れる。


 巨大な角は、アルタミナさんの横の水面に突き刺さった。


 バシャアン


 水飛沫と土砂が弾ける。


 その隙に、アルタミナさんは戦斧を構え直し、


『グォオオッ!』


 吠えた深緑の大角竜は、太い角を振り回し、自分の攻撃を邪魔した金髪の女冒険者を投げ飛ばした。


 金属鎧を着た人間が、軽々、空を舞う。


(うわ……っ!?)


 なんて力。


 まるで交通事故だ。 


 いや、それより、


(クレフィーンさん!?)


 僕は慌てる。


 と、その時、


 ヒュッ


 長い赤毛の髪を羽根のようになびかせて、レイアさんが空中を飛翔した。


 え……?


 彼女は、弾かれたクレフィーンさんを空中でキャッチ。


 一緒に地面に降りる。


(な、何、今の……?)


 空、飛んだよね?


 ……僕は茫然。


 と、その時、


 ヒィン




【魔霊の力場】


・重力を操る古代魔法。


・自分自身と所持物にかかる重力の方向、強さを任意に操作できる。


・レイア・ロム・グレシアンが習得した古代魔法である。


・補助力、200。




(おお……!)


 重力を操れるの?


 あ、なるほど。


 それでさっきの矢も直線で飛んだし、今も空中を移動できたのか。


(凄い、レイアさん!)


 そして、あの魔法、汎用性高そう!


 友人を助けた彼女は『赤羽妖精』の異名通り、空中へと飛び跳ねながら、何度も竜に矢を射かける。


 赤い髪が舞い、美しい。


 ガキッ バキィッ


 矢が当たり、何度も火花が散る。


 竜に傷はない。


 けれど、かなり鬱陶しそうだ。


 と、その時、


 ボコン


 深緑の大角竜の喉が突然、大きく膨らんだ。


(――あ)


 鱗の隙間、引き伸ばされた皮膚の下が明るく輝き、鋭い牙の並んだ口がバカッと開く。


 喉の奥が赤く光る。



 ――火炎ブレス。



 そう悟る。


 竜の口の先には、空を舞うレイアさん。


(やばっ!)


 彼女の美貌が強張ったのを、遠目にも視認する。


 そして、


 ボバァアン


 竜の口から、紅蓮の炎が放射状に放たれた。 


 けれど同時に、それにぶつかるように地上から真っ白な炎が噴き上がり、真っ赤な火炎ブレスを相殺する。


 ボパァン


 赤と白の炎が混ざり、弾け飛ぶ。


 え……?


 驚き見れば、


(クレフィーンさん!)


 水面に立つ金髪のお母様が左手で剣を持ち、上方に向けた右手から『白き炎霊』を放っていた。


 さ、さすがです。


 その間に、レイアさんも安全圏へ。


『グルルッ』


 深緑の大角竜は、クレフィーンさんへ忌々しそうな視線を送る。


 バシャン


 長い尾を振り回し、彼女を狙う。


 けれど、


「――はっ!」


 バギャアン


 黒髪の獣人さんが下段から戦斧を跳ね上げ、その尻尾を弾き飛ばす。


(うわっ!?)


 何だ、今の威力?


 突っ込んでくる自動車を、上空に弾き飛ばした感じ。


 キン キン


 アルタミナさんの周囲に、金色の光が舞っている。


 あの光は……?


 と、目を凝らした時、


 ヒィン




【英霊の黄金光】


・身体強化の古代魔法。


・自身の身体能力を10倍に高める。


・近代魔法との併用も可能。両方の強化魔法を重ねて、最大20~50倍の強化を得られる。


・補助力、140。




 ふぁ!?


(最大50倍!?)


 10キロの物を持ち上げるつもりで、500キロの重さを持てるの?


 何だそりゃ。


 そりゃ、竜の尻尾も弾けるよ!


 バキン ガキン


 強化された黒髪の獣人は戦斧を振るい、巨大な竜の牙や爪、尾と互角に戦っていく。


(……凄い)


 まるで、巨大な黒獅子が緑色の竜と戦ってるように幻視する。


 まさに、



(――黒獅子公、だ)



 格好いい。


 ああ……これが王国に3人だけの『煌金級の冒険者』の実力か。 


 いや、他の2人も凄い。


 竜の行動を邪魔をするように『赤羽妖精』が跳ね回りながら矢を射かけ、強力な火炎ブレスを『雪火剣聖』が白い炎で相殺しながら剣を振るう。


 それがあるから、『黒獅子公』も正面から竜と互角に戦える。


 つまり、3人の連携だ。


 1人1人の戦闘力は負けていた。


 けど、


(力を合わせれば、互角以上に戦える)


 そう見せつけられた。


 これが『冒険者』……か。


 ゾクゾク


 驚きか、感動か、背筋が震えるよ。


 と、その時、


 バシャン


 アルタミナさんが大きく踏み込み、竜の懐に飛び込んだ。


 瞬間、戦斧が光る。


(――お?)


 僕は目を見開き、


 ヒィン




【神霊の天罰】


・武器を強化する古代魔法。


・発動後の最初の攻撃にのみ、物理的、魔力的に凄まじい威力を宿らせる。


・1日1度だけ発動可。


・攻撃力、300。




(おお!)


 攻撃力300。


 今までに見た古代魔法で最高の数値じゃないか。


 そして、黒獅子公は、



「――はあっ!」



 ドゴォオン


 巨大な竜の分厚い胸部に、光る戦斧を下段から叩き込んだ。


 瞬間、


 バキィン


 頑丈な鱗が砕ける。


 約15トンもの巨体の上半身が軽く空中に浮き上がった。


 鱗の下の肉に、戦斧が刺さり、


 ブシュウ……ッ


 紫色の血液が噴き出す。


 深緑の大角竜は、その凄まじい痛みに悲鳴のような咆哮を響かせた。


(んく……っ!)


 ビリビリ


 鼓膜が痺れる。


 僕は、両耳を押さえながら、


(あれ、人1人が出せる攻撃力じゃないよ!)


 と、内心で叫ぶ。


 もう、大砲。


 そんな感じの異常な威力の斬撃だった。


 深緑の大角竜にとっても致命傷ではなさそうだけど、かなりの深手に思える。


 ガフッ カフッ


 呼気と共に、口から血が垂れる。


 アルタミナさんは、


「……ちっ」


 少し悔しそう。


 多分、1撃で倒すつもりだったけど、倒し切れなかった感じかな。


 だけど、充分。


 間違いなく、竜は弱っている。


 このまま攻撃し続ければ、遠くない内に勝てるだろう。


 僕は、そう思った。


 きっと3人も、そう思ってると思う。


 だけど、その時、


 ヒィン


 真眼が発動した。


(ん?)


 今までに見たことがない赤い文字で、




【警告】


・クレフィーン・ナイドに死が迫っている。


・助けたい場合は、今すぐ彼女の下へ走り出さなければならない。




 ……へ?

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― 新着の感想 ―
流石は熟練の冒険者たち・・・押してはいるが、クレフィーンさんがヤバい!走り出せば助けられるとはいえ、その後はどうするんだ? どうなるシンイチ!
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