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チートな真眼の少年は、異世界を満喫する! ~金髪幼女を助けたら、未亡人のママさん冒険者とも仲良くなりました♪~  作者: 月ノ宮マクラ


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039・甘美な罪心〈※クレフィーン視点〉

本日3話更新の3話目です。

1話目(第37話)、2話目(第38話)も更新されていますので、お見逃しなく。


では、本日最後の更新、第39話になります。よろしくお願いします。

「――ああいうのは、控えた方がいいわよ」


 テント内で、レイアがそう言いました。


 アルタミナとシンイチ君を残して、私とレイアが先に就寝しようとしていた時のことです。


(……え?) 


 装備を外していた私は、手を止め、彼女を見ます。


 彼女はこちらを見ず、


 カチャッ


 自分の武器を枕元に置きながら、毛布を手にしていました。


 ようやく私を見ます。


 そして、


「あんな風に、男に抱きつくの。勘違いさせるわよ?」


 と、咎めるように言いました。


 まぁ……。


 私は驚き、苦笑します。


「彼は……シンイチ君は、まだ子供ですよ?」


「そうね、少年ね」


「ええ」


「でも、もう生殖可能な男だわ」


「せ……」 


 淡々と告げる彼女に、私は絶句します。


 生殖……確かに彼は、もう精通しているかもしれません。


 ですが、まだ15歳。


 ニホン国の成人年齢は知りませんが、このアークレイン王国での成人は16歳からです。


 つまり、彼はまだ未成年。


 私にとっては、子供同然で……。


「成年、未成年は関係ないわ。フィン、若い男の性欲を甘く見ては駄目よ?」


「…………」


「いい?」


「ですが……私はおばさんですよ?」


「…………」


「こんな年増の子持ちに、あんな若い子が欲情するでしょうか?」


 私は、そう笑います。


 レイアの考え過ぎ……そう思いたくて。


 けれど、私の何倍も生きているエルフの美女は、何も言わずに私を見つめました。


 ジッ


(…………)


 居心地が悪いです。


 やがて、彼女は吐息をこぼしました。


 毛布を羽織りながら、美しい赤毛の髪を広げてテントの床に横になります。


 こちらに背を向けて。

 

 私は、その姿を見つめます。


 そして、私自身も横になろうとしました。


 と、その時、


「……ね、気づいてる?」


 レイアの声がしました。


 彼女を見ます。


 私をよく知る友人は、言いました。



「貴方、あのシンイチと話している時、時々、女の顔をしてたわよ」



 え……?


(女の……顔?)


 私は思わず、自分の顔を押さえます。


 ドクッ


 胸の奥で鼓動が跳ねました。


 いえ……まさか。


 私に、そんなつもりはありません。 


 シンイチ君は、私の娘の恩人で、少しだけ世話を焼きたくなるような善良な少年で、その優しさに触れるのが嬉しくて……でも、それだけの関係です。


(何も、そんな……)


 彼を求めたりは、していない。


 私は言います。



「――気のせいですよ」



 自分でも驚く程、硬い声でした。


 レイアは私を見ることなく、「そ」と短く答えました。


 それ以降、何も言いません。


(…………)


 胸の奥に何かが沈んでいるような異物感を感じます。


 私は、長く息を吐きました。


 そして今度こそ、自分も横になります。


 目を閉じて、



 ――、――――、――。



 テントの外から、2人の気配を感じました。


 アルタミナと、シンイチ君。


 ギュッ


 目を強く閉じ、


(……ファナ)


 私は娘のことを思い出し、心を埋めながら眠りに落ちました。



 ◇◇◇◇◇◇◇



(――ん)


 気配を感じ、ふと目が覚めました。


 テント内で、小さな話し声が聞こえます。


 アルと……シンイチ君?


 どうやら、レイアと交代で2人がテント内に入ってきたようでした。


(…………)


 私は動かず、眠り続けます。


 楽しげな気配。


 そして、黒髪の友人が私の隣に横になり、いつも通り、あっという間に眠りに落ちた気配がしました。


 シンイチ君1人だけが起きている気配がします。


 ドキドキ


 自分の鼓動を感じます。


 何を……?


 どうしたのですか、クレフィーン?


 テント内に自分と彼だけが起きている事実に緊張し、落ち着かなくなるなんて……。


(――いいえ)


 私は、自分を否定します。


 ただの気の迷い。


 先程のレイアとの会話で、少し意識しているだけでしょう。


 ただ、それだけ。


 と、その時、


 カサッ


 彼がアルとは反対側の私の隣に、横になるのがわかりました。


 私は、目を閉じ続けます。


 眠いのです。


 だから、起きる必要もありません。


 でも、


(…………)


 視線を感じます。


 恐らく……いえ、間違いなく、シンイチ君の。



 ――私を見ている。


 

 その事実に、ただ眠ったふりをしているのが難しくなります。


 落ち着いて。


 落ち着きなさい、クレフィーン。


(私は何も……) 


 緊張もしていないし、不安も感じていません。


 そう自分に言い聞かせます。


 私は、ファナの母。


 1人の母親として、しっかりしなければ。


 ええ、私は、




「――僕にできることがあったら、何でも協力しますからね?」




 ――――。


 彼の声がしました。


 反射的に、私の目が開きました。


(――ぁ)


 彼の顔が見えます。


 優しくて、温かくて、心から私を案じる異国の少年の顔が――。


 ドクン


 鼓動が跳ねます。


 慌てて、目を閉じました。


 彼に気づかれたか、わかりません。


 確かめる勇気もなく、私はただ必死に眠り続けるフリをしました。


 ドクン ドクン


 胸の奥が甘く疼きます。


 あの人を失い、何年ぶりかに感じるような、この感覚……。


(……いいえ、違う)


 罪悪感のような、甘美な麻薬のような、今、自分が感じている感情を否定します。


 けれど、



『――女の顔をしてたわよ』



 頭の中で、レイアの声がしました。


 ……っ。  


(私は……私、は……!)


 けれど、本能が訴えます。


 下腹部が熱く、甘く、苦しくて。


(ええ……)


 こんな風に、自分のことを心配し、思ってくれる男性に出会ったのは、本当に久しぶりのことでした。


 まだ幼い少年。


 私の娘のことを大事にしてくれ、でも、同じように私のことも案じてくれる。


 それを、喜ぶ女の私がいて……。


(……ふふっ、馬鹿な女ですね、クレフィーン)


 自虐の思いが浮かびます。


 幼い少年の善意を、私は何を勘違いしているのか?


 再び、目を開けます。


「…………」


 目の前の少年は、もう眠っているようでした。


 可愛らしい寝顔。


 私は微笑みます。


 素直に、愛おしい……と思いました。


 こんなおばさんなのに、子持ちの未亡人だというのに、何とも浅ましく愚かなことですね。


(……ごめんなさいね、シンイチ君)


 心の中で謝ります。


 そして、まぶたを閉じました。


 静かな闇。


 私は再び、眠りに落ちようとします。


 けれど、


 ドクン ドクン


 甘く痺れるような、胸の奥の疼きは長く消えませんでした――。

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― 新着の感想 ―
「女」としての感情を思い出しつつあるクレフィーンさん・・・果たして素直になる時は来るのだろうか?
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