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チートな真眼の少年は、異世界を満喫する! ~金髪幼女を助けたら、未亡人のママさん冒険者とも仲良くなりました♪~  作者: 月ノ宮マクラ


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033・3人の美女と街道を歩き……

(――朝だ!)


 本日は、3人の大人な美女と冒険に出る日。


 よっし、がんばるぞ。


 僕は、やる気満々で起床する。


 外出準備を整え、1階に行くと、受付前に3人の女冒険者と天使ちゃんが待っていた。


 天使の母が、


「おはようございます、シンイチ君」


 と、微笑む。


 うむ、朝から眼福。


 僕も「おはようございます」と返す。


 友人の2人も、


「おはよう、少年」


「寝坊しなかったのは褒めてあげるわ」


 と、爽やか王子スマイルと尊大エルフ様な微笑である。


(うんうん)


 僕も慣れたのか、そんな2人に安心してしまう。


 ちなみに、昨日はアルタミナさんとレイアさんも『春風の宿』に泊まったらしい。


 最後に、


「お、おはよう、お兄様」


 と、天使ちゃん。


 僕も笑って、「おはよ、ファナちゃん」とその金色の髪を撫でた。


「……ん」


 幼女は、猫みたいに目を細める。


 今日から本当に1人でお留守番だけど……うん、今は落ち着いた表情だ。


 がんばれよ~?


「お兄様、なるべく早く帰るからね」


「う、うん」


 幼女も頷く。


 その母親は「シンイチ君……」と優しい表情だ。


 す、少し照れる。


 そのあと、アルタミナさんから本日の説明を受けた。


 まず、これからは4人で行動するけど、リーダーは彼女が務めるらしい。


(ま、1番等級が上だしね)


 自分の指示には、絶対に従うようにとのこと。


 僕は「はい」と頷く。


 目的地の『北東の森の沼地』までは約1日の距離。


 本日は移動日。


 明日、戦闘。


 戦闘時間次第で、明日か明後日に帰還予定。


 その間に必要な食料、水などの消耗品、使用武具の修理費など、そうした経費は全て彼女たち持ちだとのこと。


 あと、朝一で冒険者ギルドには連絡済み。


(ありゃ……)  


 僕が寝てる間から、3人は動いてたのか。


 で、本日は朝食抜きで出発するらしい。 


 代わりに、今朝購入したばかりの『携帯食料』の銀紙の包みを渡された。


(食堂の美味しいご飯……)


 しょぼん。


 そして、黒髪の美女は、


「以上、何か質問あるかい?」


 と、僕に聞く。


 特に思い浮かばず、僕は「ないです」と首を振って答える。


 彼女も「結構」と頷いた。


 と、レイアさんが、


「ね、シンイチ」


「ん?」


「竜の位置、変わってないかしら?」


 と言う。


(あ)


 僕は「ちょっと待ってください」と返事。


 北の方角を見て、


 ヒィン


 目に集中する。




【深緑の大角竜】


・北東の森の沼地にいる。


・現在、水を飲みに来た野生の鹿を捕獲、生きたまま捕食中である。


・距離、約50キロ。




(にゃるほど)


 僕は頷き、


「変わってません。今、鹿、食べてます」


 と、答えた。


 3人の大人な美女は、顔を見合わせる。


 レイアさんが呆れたように、


「そこまでわかるの?」


 と、言う。


 僕は頷き、


「わかるんですよ。凄いでしょ?」


 と、笑った。


 彼女は無言。


 やがて、ぶっきら棒に「そうね」と言う。


 クレフィーンさん、アルタミナさんは、そんな赤毛エルフの友人に苦笑する。


 それから、


「よし。なら、私たちも出発しようか」


 と、黒髪のリーダーが言う。


 2人の美女が、


「はい」


「ええ」


 と答え、


「うん、わかりました」


 と、僕も頷く。


 それから僕らは、ファナちゃんに別れの挨拶をする。


「行ってくるよ」「いい子で待ってなさいね」「明日か明後日に戻るから」と母の友人2人と僕が伝え、金髪の幼女も「うん」と頷く。


 最後にお母様が、


「行ってきます、ファナ」


「うん、お母様……」


 ギュッ


 娘を強く抱きしめた。


 その瞬間、


(あ……)


 母に見えない位置で、幼女は泣きそうな顔をする。


 …………。


 うん、早く終わらせるぞ。


 僕は、決意を新たにする。


 やがて、母娘の抱擁も終わる。


 そうして僕ら4人は、宿屋の前で見守る金髪の天使ちゃんに見送られながら、竜討伐に出発したんだ。



 ◇◇◇◇◇◇◇



 クレタの町を出て、街道を北上する。


 街道は、2車線ほどの広さ。


 土を固めた道の左側には、青く澄んだ湖の水面が広がり、正面には北の山々が見えている。


 山の麓には、緑の森林がある。


(北東の森の沼地は、あの山の右麓の森の中かな?)


 と、進路から推測。 

 

 僕ら4人は、黙々とそんな道を歩く。


 …………。


 2時間が経過した。


 湖は遠ざかり、草原と低木の景色が広がる。


(ふぅ、ふぅ)


 僕は、息切れ中。


 3人の女冒険者は、皆、余裕の表情だ。


 スタスタ


 しかも、全員、歩く速度が速い。


(え……何これ?)


 ついて行くだけで精一杯なんだけど……?


 彼女たちを見る。


 全員、鎧を着込み、僕より大型のリュックを背負って、更に戦斧、幅広の両刃剣、大弓と短剣2本を装備してる。

 

 かなりの重量のはず。


 なのに、


(きつぅ……)


 同じ速度を維持するだけで大変だ。 


 これが、本物の冒険者。


 現代日本で、自転車やバス、電車に慣れた高校生(入学前だったけど……)の足とは比べ物にならない。


 うう……まずい。


 予想してたけど、早速、足手まといか?


(ごめんよ、ファナちゃん)


 僕のせいで余計、時間かかりそう。 


 フラフラ


 足がよろめく。


 と、その時、


「……シンイチ君?」


 前を歩く金髪のお母様が、僕の様子に気づいた。


(はぁ、ひぃ)


 お、遅れてごめんなさい……と、謝る声も出てこない。


 息、苦しぃ。


 彼女は驚き、


「アル! レイア!」


 と、仲間2人に呼びかける。


 前の2人も「?」と振り返り、僕の様子にギョッとなる。


 すぐに、


「しまった、ごめん」


 と、アルタミナさんが謝る。


 赤毛のエルフさんも珍しく『失敗した』という表情だ。


 3人は足を止め、


(あ……)


 トサッ


 足から力が抜けた僕は、道に座り込む。


 クレフィーンさんが慌てて駆け寄り、僕の背中を支えてくれる。


「ご、ごめ……なさ……」


 必死に謝る。 


 彼女は、長い金髪を揺らして首を振る。


 微笑み、


「喋らないで。大丈夫、ゆっくり呼吸してください」


「う、うん」


 僕は、言われた通りにする。


 すぅ、はぁ……。


 少しだけ、落ち着く。


 覗き込む3人の美女も、少しだけ安心した顔になる。


 それから、


「ごめんよ、シンイチ君。君が新人なのを忘れていた」


 と、黒髪の女冒険者さん。


 その獣耳も、申し訳なさそうに下がっている。


 赤毛のエルフさんも、バツが悪そうに僕を見つめている。


 やがて、吐息をこぼし、


「まぁ、そうよね。さすがに新人じゃ、『身体強化』の魔法もまだ覚えてないわよね」


 と、言う。


(ん……身体強化の魔法?)


 僕は顔をあげ、3人を見る。


 すると、


 ヒィン


 真眼が発動。




【3人の女冒険者】


・全員、自身に『身体強化』の近代魔法を使用中。


・熟練の冒険者はほぼ全員、『身体強化』の魔法を習得している。言わば、冒険者必須の技能。


・3人とも、自分たちの失念を恥じている。




【身体強化の魔法】


・近代魔法の1つ。


・肉体能力を強化する。強化率は2~5倍と個人差あり。


・このため、男性より肉体能力の高い女性の冒険者、騎士、傭兵などが多数存在する。


・石板の値段、平均2万リド。約200万円。




(な、なんだって~!)


 ずるい。


 3人とも魔法で足腰強化されてたんだ。


 そりゃ、ついてけないよ。


 僕は愕然だ。


 3人は申し訳なさそうで、


「フィン、彼に回復魔法を」


「はい」


「体力が戻ったら、彼にも身体強化の魔法をかけよう。そっちはレイア、頼めるかな?」


「ええ、わかったわ」


 アルタミナさんの言葉に、2人は頷く。


(ん……?)


 僕にも魔法を?


 驚く僕の後ろで、クレフィーンさんの白い右手が緑色に光る。


 パアアッ


 神々しく、優しい光だ。


 手の甲には光る魔法陣が浮かぶ。


 そして、彼女は、



「――癒しの光の御手」



 と口にし、僕の背中に触れた。


(お、おお……?)


 あ、暖かい。


 お湯のような気持ちの良い熱が、その手のひらから体内に流れ込んでくる。


 これが、回復魔法……?


 30秒ほどで、


(あ……)


 呼吸が楽になった。


 足の鈍い痛みも消え、全身の疲労感もなくなっている。


 す、凄いや。


 魔法を使ってくれた金髪のお母様を振り返ると、


 ニコッ


 彼女は、優しく微笑む。


「もう大丈夫ですか?」


「う、うん。ありがとう、クレフィーンさん」


 僕は、お礼を言う。


 彼女も安心したように「いいえ」とはにかみ、僕の背中から手を離す。


 ヒゥン


 白く綺麗な手から、光も消える。


 と、今度は入れ替わるように、僕の前に赤毛のエルフさんがしゃがんだ。


 長い赤毛の髪を耳の上にかき上げ、


「さ、やるわよ」


 トン


 レイアさんの人差し指と中指が、僕の額に当てられた。


(おっ?)


 驚く僕の前で、



「――強身の魔印」



 と、告げる。


 ピィン


 途端、2本指の当たる額部分が急に熱くなった。


(アチチ……!?)


 結構な温度です。


 指が離れる。


 だけど、額の熱は消えない。


 え……大丈夫なの、これ?


 不安になる僕に、


「立ってみなさい」


 と、レイアさんが命じる。


(あ、うん)


 僕は、膝に手をついて立ち上がり、


 シュパッ


「おわっ?」


 物凄い速さで身体が立った。


 え、軽い。


 自分の身体が羽根になったみたいで、楽々立ち上がっていた。


 な、何だ~?


 困惑しながら、確かめるように軽くジャンプ。


 トォ~ン


(うわ!?) 


 大した力も込めてないのに、1メートル近く跳んでいた。


 体重が消えたみたい。


 着地の衝撃もあまりない。


 思わず、自分の両手を見つめる。


 すると、


 ヒィン




【桐山真一】


・魔法により、身体強化中。


・筋力、動体視力、反射神経などの肉体能力が約3倍に上昇している。


・持久力、耐久力は変化しないので注意。


・持続時間3時間。




 3倍……。


 えっと、つまり、


(仮に100メートルを15秒で走れるとしたら、今は5秒ってこと?)


 わぁ、金メダル確実ぅ。


 魔法1つで、地球人類の誰より強くなるのか。 


 ……反則じゃん。


 呆ける僕に、


「上手くかかったかしら?」


 と、レイアさん。


(あ、うん)


 僕は頷き、


「ありがとう、大丈夫」


「そう」


「うん。これ、凄いね」


「そうね。でも、もし違和感が強いなら言いなさい。下手すると動きを制御できずに怪我するから」


「そうなの?」


 彼女の注意に少し驚く。


(あ、でも、耐久力は変わらないって真眼でも出てたっけ)


 僕は、試すように手足を動かす。


 うん、軽い。


 多少、違和感もある……けど、振り回される感じもないな。


 まぁ、すぐに慣れると思う。


 僕は頷き、


「ん、平気みたい」


「そう」


「うん、心配してくれてありがとう、レイアさん」


「…………」


 笑う僕を、彼女は見つめる。


 不快そうに、


「別に心配してないわよ」


 プイッ 


 言うと、そっぽを向く。


(あれぇ?) 


 もしや、ツンデレエルフさんですか?


 彼女の反応に、クレフィーンさんは困ったように、アルタミナさんは楽しそうに笑う。


 そして、黒髪の獣人さんは、


「よし、少年も大丈夫そうなら、再び出発しようか」


「あ、うん」


「はい」


「ええ、そうしましょう」


 僕と美人2人も頷く。


 そして、4人で再び街道を歩きだす。


 歩きながら、


(おお……) 


 身体が軽い。


 重力が弱くなったみたいに、少しの力で前に進むぞ。


 こりゃあ、楽だ。


 3人のペースにも、余裕でついて行ける。


 と、その時、クレフィーンさんが速度を落として、僕の横に並ぶ。


 そのままの位置で歩いていく。


(ん……?)


 僕は、キョトン。


 その横顔を見ていると、


 ヒィン




【クレフィーン・ナイド】


・桐山真一の近くにいようとしている。


・先程の苦しむ貴方の姿を見て、2度と同じことがないように注意している。


・実は、母性が刺激されてしまった模様。


・好感度、70/100。




(あらま?)


 お母様、心配してくれてるのね。 


 本当、優しい。


 と、彼女も視線に気づき、こちらを見る。


 目が合い、


 ニコッ


 慈母のように微笑んだ。


(あ、女神)


 まるで後ろに後光が差しているように見えます。 


 な、なんか照れる。


 そんな僕に、彼女はますます慈愛に満ちた表情で見つめてくる。


「何かあれば、すぐに言ってくださいね」


「う、うん」


 僕は、何とか頷く。


 ドキドキ


 お、落ち着け、僕。



 ――そんな風にして、僕は3人の美しい女冒険者たちと北への街道を進んだんだ。

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― 新着の感想 ―
強化魔法!そういうのがあるんだよね・・・それを知っていれば違ったけど、お陰でクレフィーンさんの好感度が上がったから良いのか?
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