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チートな真眼の少年は、異世界を満喫する! ~金髪幼女を助けたら、未亡人のママさん冒険者とも仲良くなりました♪~  作者: 月ノ宮マクラ


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028・天使とデート2

 石板販売店を出た僕らは、噴水のある円形広場にやって来た。


 今日も露店がいっぱいだ。


 食べ物、飲み物、装飾品、雑貨、花、魔法石版(※壊れた物)など様々な品が売られている。


(どれどれ?)


 ヒィン


 今日も、魔法石板を見てみる。


(……うん、さすがに今日は、無傷の石板は紛れていないか)


 ちょっと残念。


 でも、ま、それが普通か。


 僕は、苦笑する。


 そのあと、少し小腹が空いたので、露店で食べ物を買ってみた。  


 ヒィン

 

 

【レーパン】


・薄く伸ばしたパン生地で、様々な食材を包んだ物。


・アークレイン王国では、一般的な食べ物である。


・値段、6~12リド。




(つまり、クレープかな?)


 見た目も、そんな感じ。


 包まれる食材は、甘く煮詰めた豆とか、果実入りクリームとか、焼いた肉と菜っ葉とか、茸と野菜の炒め物と燻製魚肉とか、種類も豊富。


 僕が買ったのは、肉と菜っ葉。


 ハムッ モグモグ


「ん……!」


 美味い!


 甘辛タレの肉とパン生地が合う。


 そして、菜っ葉がくどさを消して、飽きずに食べられる。


 量も結構あり、値段も1000円。


 こりゃ、もう普通のご飯ですね。

 

 パクパク モグモグ


 美味うめぇ、美味うめぇ。


 僕は、夢中でかぶりつく。


 ちなみに、ファナちゃんは果実入りクリームの『レーパン』を頼んでいた。


 クムクム


 小動物みたいな食べ方。


 でも、


「……甘くて、美味し……」


 と、幸せそうな顔。


 うん、その表情が見れただけで、お兄様も満足です。


 僕らは噴水前のベンチに座って、お互いのレーパンを一口もらったり、あげたりし、最後にもう1種類、蜂蜜とアイス入りレーパンを頼んで、2人で分けて食べたりした。


 モグモグ


 うん、これも冷たくて甘くて、最高。


 僕は笑い、


「美味しいね」


「う、うん」


 ファナちゃんも頷く。


 と、その彼女の頬にアイスが付いてるのに気づく。


(おや、もったいない)


 僕は指を伸ばし、それを拭う。


 ペロッ


 うん、甘い。


 彼女は「あ……」と呟く。


 その頬が赤くなる……ん?


(あ、恥ずかしかったのか)


 僕は、


「ごめんね、つい」


「う、ううん」


「許してくれる?」


「も、もちろん、お兄様だもん」


 コクコク


 と、何度も頷く幼女。


(……いい子やぁ)


 お兄様は感動だよ。


 そんな風に食事をしたあとは、他の露店も覗く。


 ファナちゃんも珍しそうに、露店の商品を眺めている。


 幼くとも女の子。


 やはり、綺麗な花や装飾品が好きみたい。


 特に、目が輝いていて、


(……うん)


 いつも留守番で、こういう風に楽しむこともなかったのかもなぁ。


 でも、まぁ、お母様も身体は1つだし、娘の安全のためには仕方ないのもわかる。


 誰も悪くない。


 だからこそ、


「あ、すみません、これください」


 と、僕は、幼女が特に見ていた『花の髪飾り』を購入した。


 キョトンとする幼女。


 僕は笑って、


「はい、失礼」


 スッ


 彼女の耳の上の金色の髪に、その『花の髪飾り』を差した。


「あ……」


 驚くファナちゃん。


 僕は言う。


「デート記念のプレゼント」


「…………」


「うん、凄く似合ってる。可愛いよ」


「……っ」


 褒めた途端、顔が真っ赤になった。


 茹蛸天使ちゃん。


(うむうむ)


 ま、お兄様として、これぐらいはしてあげないとね。


 ちなみに、20リド。


 約2000円の髪飾りです。


 高くもないけど安くもない品ですが、ファナちゃんの小さな指はその『花の髪飾り』を撫で、それから僕を見上げる。


 潤んだ瞳で、


「あ、ありがと、お兄様」


「うん」


「フ、ファナ、一生の宝物にするね」


(おや?)


 そんなに喜んでもらえたなら、嬉しいな。


 僕は「うん」と頷く。


 それに、赤くなったファナちゃんも嬉しそうに笑った。


 花が咲いたような笑顔。


(……お)


 少し驚く。


 彼女の笑顔が、一瞬、クレフィーンさんそっくりの大人びたものに見えた。


(う~む)


 やはり母娘、似てるんだねぇ。



 ◇◇◇◇◇◇◇



 広場をあとに散策を続ける。


 すると、


(ん……?)


 僕らのいる道の先を歩く白装束の人々を発見した。


 はて、何の集団だろう?


 ヒィン


 便利な『真眼』で視ると、【マトゥ教の巡礼者】と表示される。


(へぇ、巡礼者?)


 通りの先に視線を送れば、なるほど、町の教会らしき建物があるじゃないか。


 と、その時、


 クイッ


(ん?)


 隣の幼女の指が、僕の袖を引く。


 僕を見上げ、


「あ、あの……お祈り、したい」


 と、ファナちゃん。


 おお、やはり天使……!


 教会でお祈りしたいなんて、敬虔なんだね。


 僕は笑って、


「うん、じゃあ行こうか」 


「う、うん」


 彼女も頷く。


 そして、僕らも巡礼者の人たちのあとに続き、教会に向かったんだ。


 …………。


 建物に到着。


(へ~?)


 三角屋根の立派な教会だ。


 外壁は白く綺麗。


 前庭には、緑の芝生と花壇もある。


 礼拝所の扉は解放され、巡礼者だけでなく、町の人も普通にお祈りに来てるみたい。


 ヒィン




【クレタの教会】

 

・慈母神マトゥを祀る教会。


・孤児院も経営し、王都の大教会に向かう巡礼者のための宿坊もある。


・人々の信仰と憩いの場。




(なるほど)


 真眼情報を読みながら、僕らは教会内へ。


 おお……。


(これが教会か)


 入った場所は、礼拝所。


 天井は高く、10メートル以上ありそう。


 正面には、女神像。


 慈しみの表情で、僕らの方に両手を広げている。


 女神像の後ろには美しいステンドグラスがあり、太陽の光を七色に輝かせていた。


 清浄で、静謐な空気。


(……うん) 


 初詣とかで、神社にお参りした時と同じ独特な感覚があるね。


 なんか、身が引き締まる。


 僕らは、参拝者用の長椅子に座る。


 金髪の幼女は、


「…………」


 スッ


 自分の胸の真ん中に左手、右手の順に手を重ね、目を閉じる。


 見れば、他の人も同じ所作。


(ふむ)


 これが、お祈りのポーズかな。


 郷に入りては郷に従え……僕も真似をする。


 …………。


 何だろう?


 胸の奥がじんわり熱い。


 不思議と懐かしいような、切ない気持ち。


(???)


 戸惑いながら、1分ほど黙祷。


 やがて、目を開ける。


 隣の幼女も、ちょうどお祈りを終えたのか、青い瞳を開いていた。


「…………」


「…………」


 何となく、僕らは座ったまま女神像を眺める。


 何だろう?


 なんか、すぐに動きたくない感じ。


 今、感じているこの静謐な空気や澄んだ感情が、急に動いたら崩れてしまう気がして……。


 ……何でだろうね?


 座ったまま、視線を巡らせる。


 すると、教会内の壁には宗教画も飾られていた。


(ふ~ん?)


 ちょっと眺める。


 微笑む大きな女神様の懐で、小さな人々が集まり祈りを捧げ、そして、画面の反対側には、倒れた黒い竜が仰向けになっていた。


 ……黒い竜?


 ふと、先日のクレフィーンさんの話を思い出す。  


(あぁ、そうか)


 確か500年前、女神様が邪竜を倒して、人々を守ったんだっけ?


 すると、


「あれが、邪竜……」


 と、僕は呟いた。


 それに反応し、西洋人形みたいな金髪の幼女が僕を見る。


「う、うん。でも、あの黒い竜も昔は、女神様と同じような他の大陸の神様だったんだよ」


「え?」


 そうなの?


 驚く僕に、彼女は頷く。


「う、うん、人を守る竜神様」


「へぇ……?」


「だ、だけど、人々の傲慢さと終わりのない欲深さに悲しみ、嘆き、怒って、絶望して、人の世界を滅ぼそうとする悪い『邪竜』になってしまったんだって……」


「そうなんだ」


 元神様の竜、か。


 邪竜にも、邪竜なりの理由があるんだね。


 でも、


(人間、いい人も悪い人もいるんだから、まとめて滅ぼさなくてもいいじゃん)


 なんて思うけど。


 1人1人、個性もあるんだから、一括りにしないで欲しい。


 だけど、神様にも事情があるのかな?


 よくわかんないけど。


(……ま、いいや)


 それよりも、


「ファナちゃん、詳しいんだね?」


 と、僕は言う。


 彼女は恥ずかしそうにはにかみ、


「お、お母様に教わったの」


「クレフィーンさん?」


「う、うん。お母様も、お母様のお父様に教わったって……お母様のお父様は、教会の神父様だったらしいの」


「神父様」


 僕は驚く。


 お母様のお父様、つまり、ファナちゃんのおじい様。


 それが、神父様。


(……そっか)


 クレフィーンさんは、教会の神父の娘さんか。


 なるほど、あの未亡人さんの清楚で気品のある雰囲気な理由がわかった気がしたよ。


 僕は「そうなんだね」と頷く。


 そして、正面の女神像を見る。


 慈母の女神様。


 何となく、クレフィーンさんに似てるけど……。


 と、その時、


 ヒィン


 真眼が、発動する。




【慈母神マトゥ】


・アーク大陸で最も信仰される女神。


・500年前に肉体を失い、現在は神性の宿ったエネルギーとして世界中に拡散している。


・自我はなく、慈愛の心のみが残っている。


・その神性のエネルギーが、邪竜の復活を阻止している。




(ん……?)


 僕は、目を瞬く。


 女神様の情報はわかったけど……何、4項目目の文字?


 邪竜の……復活?


 阻止してる?


 う、うううう~ん……!


(なんか、見てはいけないような、知りたくなかった情報を視た気がする……)


 僕は、渋い表情。


 まるで、梅干しを食べた顔である。


 ファナちゃんが、


「……お兄様?」


 と、心配そうに聞いてくる。


 ……うん。


 僕は息を吐き、


「ううん、何でもないよ」


 ポム


 幼女の金色の髪に手を置いた。


 きっと、こういうのは気にしちゃいけない。


 気にしたってどうにもならないことは、うん、見なかったことにしたっていいのだ。


 別名、現実逃避。


 し、仕方ないじゃん。


 考えたって、できることないし。


 現状、阻止できてるなら、それが未来永劫続くと信じるのだ。


(よし、忘れた)


 僕は、気持ちを切り替える。


 ナデナデ


 ファナちゃんの髪の感触で、気持ちも落ち着く。


 彼女の方は、真っ赤だけどね。


 ともあれ、参拝も終わり。


 僕らは席を立つ。


 礼拝所をあとにしようとして、ふと、最後に女神像を振り返る。


「…………」


 微笑む女神様。


 でも、少し悲しそうで……。


 ズキッ


 何かが胸に刺さる。


(……??)


 よくわからない。


 でも、何かを忘れてる気がする。


 忘れちゃいけない大切な約束を……。


 約束……どんな?


 ズキッ


 今度は、頭が痛い。


 その瞬間、靄のかかった頭の中で、誰かの声の記憶を思い出す。



『――を、守って欲しい』



 そう頼まれた……?

 

 誰に……誰を守れと……?


 う、う~ん。


 必死に思い出そうとするけれど、


(……駄目だ、わからん)


 僕は、首を振る。


 気づけば、頭痛も消えている。


 もう1度、女神像を見つめる。


 女神様は、当然、何も言わない。


(……ふぅ)


 僕は息を吐く。


 思い出せないなら仕方ない。


 でも、大事な記憶なら、いつかきっと思い出せる時が来るでしょう。


(うん)


 今は、それでいいや。


 僕は女神像を見つめ、そして背を向ける。


 そのまま前を見ると、隣の幼女と手を繋ぎながら、そのまま礼拝所をあとにしたんだ。



 ◇◇◇◇◇◇◇



 教会を出ると、空が赤くなり始めていた。


(ありゃ)


 もう、夕方か。 


 多分、午後4時前ぐらいかな、と思うけど。


 小さな女の子もいることだし、今日はもう帰るべきかな、うん。


 僕は、隣の幼女を見る。


「ファナちゃん」


「?」


「そろそろ、帰ろうか」


「……あ」


 彼女は、驚いた顔。


 すぐに寂しそうにうつむき、


「……う、ん」


 コクッ


 と、おかっぱの金髪を揺らし、頷いた。


(うぐぅ……)


 ざ、罪悪感。


 本当、素直でいい子過ぎる幼女だね。


 我が儘も言わないし、手もかからないけど、お兄様は何だか心配になるよ。


 でも、仕方ない。


(ファナちゃんのためだ)


 心を鬼に、帰りましょう。


 でも、


「機会があったら、また一緒にでかけようね」


 と、付け加える。


 パッ


 ファナちゃんは、驚いたように顔をあげた。


 真ん丸お目目で僕を見つめ、その口もポカ~ンと開いている。


 ニコッ


 僕は笑いかける。


 彼女はハッとして、


「う、うん!」


 金髪を散らし、勢いよく頷く。


 それから彼女は「えへへ……」と、嬉しそうに表情を綻ばせた。


 うん、元気になったみたい。


(よかった)


 僕も安心して笑う。


 そうして2人で、宿屋への道を歩く。


 歩きながら、


(そう言えば……クレフィーンさん、どうしてるかな?)


 と、思い出した。


 昨日は、魔物を探してたみたいだけど……今日は見つかったのだろうか?


 魔物の討伐……。


 …………。


 怪我、してないよね?


 ここは危険な異世界。


 万が一でも、可愛い娘を1人残して……なんて、やめてよ?


(う、う~ん)


 少し心配になってきた。


 僕は、北の方角を見る。


 遠く、町の向こうに山が見える。


 ジッ


 目を凝らす。


 でも……あれ?


 真眼に、何も視えない。


(何で?)


 と思った時、


 ヒィン


 北の山脈よりずっと下の部分に、文字が浮かんだ。


 多分、草原の辺りで、





【クレフィーン・ナイド】


・仲間2人と街道を移動中。


・目標の魔物を発見できないまま、クレタの町に帰還しようとしている。


・現状、クエスト失敗である。




(へ……?)


 今、町に戻ろうとしてる途中?


 しかも、クエスト失敗って……?


 え、何?


 どういうこと?


(あの3人に……クレフィーンさんに何があったの?)


 僕は、少し茫然となる。


 そんな僕を、


「……お兄様?」


 クレフィーンさんの娘の金髪の幼女は、不思議そうに見上げていた。

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― 新着の感想 ―
慈母神マトゥに邪龍・・・物語における重要そうなワードが出てきましたね、転移させたのはもしや慈母神マトゥ? だとしたら何故記憶から消したのか・・・ そしてクレフィーンさん達はクエスト失敗と・・・討伐出来…
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