025・異世界3日目
本日、2話更新予定!
まずは本日1話目、第25話になります。
よろしくお願いします。
「じゃ、行ってくるね」
朝9時、僕は『春風の宿』を出発した。
宿前では、
「い、いってらっしゃい、お兄様」
と、小さな手を振る金髪の天使ちゃん。
(――うむ)
やる気が出ますな。
本日にて、異世界生活も3日目。
今朝、起きたあと、ファナちゃんと朝食を共にした僕は、彼女に見送られながら冒険者ギルドに出勤しているのである。
彼女に手を振り、そして前を向く。
人混みの中へ。
通りにいる人は、人間、エルフ、獣人、ドワーフ、と人種も様々。
でも、少し見慣れたかな?
(僕もだいぶ、異世界に慣れたみたいだね)
と、内心で思ったり。
ふと、視線を遠くへ。
北の山が見え、
ヒィン
【クレフィーン・ナイド】
・起床している。
・友人2人と共に朝食を食べながら、本日の探索プランを確認している。
(うん)
クレフィーンさんも起きてるね。
遠く離れているけれど、彼女もお仕事をがんばっている様子。
なんか、刺激になる。
(僕も負けてられないな)
よし、今日もがんばるぞ。
おー!
◇◇◇◇◇◇◇
4時間後、
「――よし、お仕事終わり」
南の草原にいた僕は、本日の業務を終えました。
ええ、薬草採取です。
どうも、このクエスト、常設されてるみたいなんだよね。
昨日と薬草の種類は違うんだけど、やることは一緒で、昨日と同じやり方できっちり1時間で採取を終えたんだ。
(ありがとう、真眼君)
自分の目に、感謝。
さて、仕事のあとは、
モグモグ
近くの岩の上で、携帯食と水でのお昼ご飯タイム。
……うむ、虚無の味。
でも、
(なんか、癖になる)
この携帯食、本当、摩訶不思議な味だよなぁ。
10分で完食。
両手を合わせ、
「ご馳走様でした」
と、感謝。
食べ終わったあとは、しばらく食休み。
休みながら、周囲を見回して……う~ん……あ、あの岩、いいかも?
距離、約25メートル。
スッ
僕は、右手のひらを向けた。
ん……集中。
意識した途端、手の甲に、パアッと魔法陣のような文字列が光る。
手の先の空中に、
ジッ ジジッ
黒曜石みたいな岩の槍が生み出される。
(――発射)
念じた瞬間、
ドパッ
衝撃波と共に槍が飛び、遠い岩の表面にゴッ……と穴が穿たれた。
ひび割れが広がり、
バカッ ガララン
岩は崩れる。
(よぅし、命中)
魔法だからか、狙った場所に正確に飛ぶ。
命中精度、高いぞ。
そして僕は、自分の右手を見る。
ヒィン
【桐山真一】
・魔力を消耗している。
・全魔力量の約5割を失っている。
(あれ……5割?)
昨日は、消耗6割だった。
1割、違ってる。
いや、2日連続で魔法を使ったことで、僕の基礎魔力量が増えたのか。
昨日までは、1日1発。
今日からは、1日2発。
この差は大きい。
もう1回撃って、基礎魔力量、もっと増やすかな。
……いや、
(やっぱり、やめとこう)
魔力を全消費したら、昏倒とかあるかもしれない。
それに、
(ここは異世界だ)
このあと、何があるかわからない。
危険な魔物もいる世界だし、毎日、1発は保険として残しとこう。
初日の骸骨さんが教訓だ。
安全第一、慎重に……!
「うん」
今日の魔法訓練は、これで終了っと。
…………。
じゃ、今日は帰るかな。
でも、その前に、昨日みたいに高く売れる薬草、探してみようか。
また20万ぐらい……いや、待てよ?
昨日の今日だ。
あの『黄金蜜の煌花』はかなり希少な花だったみたいだし、2日連続はさすがに悪目立ちするか?
(……うん)
もう少し安い奴。
1~2万円で売れそうな植物、3本ぐらい、見つけたいな。
きっと、それぐらいなら。
(よし)
ジッ
草原に目を凝らす。
……お願いします、真眼君。
すると、
ヒィン
【魔雨の花】
・魔力を含んだ花。
・花弁を食べると、魔力増幅の効果がある。魔力ポーションの原料の1種。
・相場、1本120リド。約1万2000円。
【太陽の怒りの実】
・草の実。
・猛烈に辛い実。『魔物除けの香』の素材となる。
・食用、可。ただし、非推奨。
・相場、1粒50リド。約5000円。
(おお!)
ちょうどいいじゃん。
文字の見えた草の中を探すと、『魔雨の花』は2本、『太陽の怒りの実』は5粒あった。
早速、ゲット!
計4万9000円……約5万円か。
(くくく……)
1日5万、いい稼ぎだぜ。
ユサッ
重くなったリュックを背負い、僕はニヤリと笑う。
そうして小金持ち気分になった僕は、再び2時間かけて復路を辿り、クレタの町へ戻ったんだ。
◇◇◇◇◇◇◇
町に帰ると、僕は冒険者ギルドに直行する。
即、鑑定を依頼。
鑑定のおじさんは、
「ほう……? また珍しい物を見つけてきたな」
と、提出した素材に少し驚く。
僕は平気な顔で、
「僕、目がいいから」
「そうか。ま、特技があるのはいいことだ」
「うん」
「ほらよ、証明書だ」
と、3種類分の赤い証明書を出してくれた。
よしよし、
(不審がられなかったぞ)
計算通りだ。
冒険者用の受付でも、
「探し物、得意なんです」
と、誤魔化して報告。
受付嬢さんも「そうですか」と頷く。
で、特に問題もなく、クエスト報酬と素材報酬、40リドと441リド(税金で49リド引かれ済み)、合わせて4万8100円をもらえた。
今回は、全額貯金。
現在のギルド預金額は、15万2500円だ。
(うん)
あったかいね、懐が。
初日の無一文スタートから、だいぶ余裕が出てきたぞ。
ホクホク
僕は笑顔で冒険者ギルドを出る。
宿に向け、大通りを歩いていく。
その僕の視界、通りのずっと先には町壁があり、その向こうに北の山脈が見えていた。
その山脈を見て、
(……クレフィーンさん、どうしてるかな?)
と、思い出す。
北の山を見ながら、目に集中。
ヒィン
【クレフィーン・ナイド】
・山の中腹にいる。
・討伐目標の魔物を探し、仲間2人と山中を移動中である。
・日没が近く、探索中断を検討中。
(お……)
魔物を探してるのか。
でも、苦労してるみたい。
今日1日、ずっと探してるみたいだけど発見できてない様子である。
(う~ん?)
僕なら、1発で見つけられるのに。
大変だなぁ。
そして、『真眼』、本当にチートだなぁ。
(……がんばってね)
と、遠いお母様に声援を送る。
何もできない僕だけど、せめて、お母様の代わりに娘さんの面倒を見てあげよう。
僕は頷き、
(よし、帰ろ)
タッ タッ
今も1人で留守番中の天使ちゃんのいる宿へ、歩く足を急がせたんだ。
ご覧頂き、ありがとうございました。
本日中に、もう1話更新予定です。よかったらまた読んでやって下さいね♪




