023・お買い物
(よし、次は買い物だ)
明日以降のため、色々と必要な品を用意しよう。
幸い、懐も温かいしね……くくっ。
ジャラッ
財布の中身は、758リド――約7万5800円である。
ギルドの貯金も10万4400円だ。
(うむ、お金持ち)
転移2日で、なかなかの金額ではないかと思いますぞ。
さて、お金は大丈夫そうなので、店を探そう。
冒険者ギルドもある大通りには、冒険者関連の商品を扱う店舗も多く、買い物には困らなそうだ。
(ん~?)
どこがいいかな?
通りに並んだ店舗を見ていくと、
ヒィン
【レッド道具店】
・冒険者用の装備、道具一式を扱う。
・初心者用の総合店。ここに来れば、一通り揃えられる。
・値段も良心的。
(お……?)
ここ、良さげじゃないか。
見た目は、町の小さなお店って感じ。
(ん、よし)
真眼君のお勧めだし、早速、入ってみよう。
カララン
扉に付いた来客を知らせる鐘を鳴らしながら、僕は店内に入っていく。
「いらっしゃい」
店内には、人の良さそうな店主のおじさん1人。
客は、僕含め3人。
全員、冒険者かな?
(へぇ……)
店内は日本のコンビニぐらいの広さで、棚には様々な商品が並んでいた。
剣とか盾。
旅服や鎧、外套。
他にも、鍋、テント、傷薬など、色々あるね。
(ふむふむ)
店内を歩きながら、物色。
あ、あった。
携帯食料だ。
銀紙に包まれ、値札を見ると『5リド』とある。
(なるほど)
1個、500円か。
3日分、3本ぐらい買っておこうかな。
あとは、
(お……リュックだ)
背負うタイプ。
現在は、肩提げ鞄。
だけど、うん……冒険者として活動するなら、動き易いこっちの方がいいかも?
ヒィン
【冒険者リュック】
・頑丈な作り。
・胸部と腹部にもベルト固具定があり、動き易い。
・背中を守る防具も兼任。
・初心者用。
ほほう?
なかなか、いいじゃないの。
(よし、買おう!)
値段は、120リドか。
約1万2000円。
少し高い……?
でも、長く使う物だし、高い物を買っとこう。
それ以外にも、
ヒィン
【旅服一式セット〈男性用〉】
・動き易く、丈夫な服の上下と靴。
・肩、肘、膝などの生地は、関節部の保護のために厚手になっている。
・靴も、踝、爪先に補強具が入っている。
・下着はトランクス型。
・値段、350リド。
とか、
【タオル3枚セット】
・柔らかな生地。
・何にでも使えて便利。
・いざという時、包帯代わりにもなる。
・値段、12リド。
とか、
【傷薬】
・切り傷、打ち身、捻挫など、何にでも使える。
・鎮痛効果あり。
・値段、8リド。
とか、
【外套】
・雨避けフード付き。
・泥や埃や汚れから、身を守る。
・野宿の際、毛布代わりにも使える。
・値段、50リド。
とか、
(こんなものかな?)
と、購入することに。
計算すると、合計……5万5500円?
一気に減るね。
ま、まぁ、仕方ない。
(きっと、初期投資って奴だよね、うん)
僕は頷き、商品を抱えて会計へ。
チャリン
「毎度あり」
店主のおじさんは、笑顔である。
これで、残金2万300円……か。
財布を見つめる僕である。
すると、おじさんが、
「ところで、君、珍しい服を着てるね」
「え?」
あ、学生服?
確かに、この異世界じゃ目立つよね。
僕は頷き、
「僕の出身国の、若者用の民族衣装です」
「へぇ……」
「…………」
「いい生地だし、作りも丁寧でしっかりしてる。なかなか興味深い服だね」
「どうも」
「その服、もしよかったら、売る気はない?」
(え?)
僕は、目を丸くする。
おじさんは笑顔で、
「100リドで買い取るよ?」
と、言う。
100リド……1万円か。
僕は少し考え、
ヒィン
【値段交渉】
・店主は、最大150リドまで譲歩するつもり。
・学生服、肩提げ鞄、折れた剣の3点を下取りに提示し、300リドの『短剣〈新品〉』と交換も可能である。
・他店での下取りでも、ほぼ同額。
(おっと……)
そうなんだ?
3点下取りで『短剣』と交換か。
うん、これが1番、高く売れる感じみたいだね。
(よし)
僕は頷き、
「店主さん」
「ん?」
「物は相談だけど、この服と鞄と折れた剣を売るから、代わりにあの短剣を同じ値段で売ってくれない?」
「短剣かい?」
「そう、300リドの」
「う~ん?」
店主のおじさんは、腕組みして考え込む。
いや、
(考え込むフリかな?)
答えは、真眼で視ているのだから。
そして、
「わかった」
パン
おじさんは膝を叩き、
「今回は負けるよ。この短剣と交換しよう」
(やった)
交渉成立。
おじさんは笑いながら、
「その代わり、今後もご贔屓にしてくれよ?」
「うん」
僕も、笑顔で頷く。
この町にいる間は、きっと何度もお世話になると思うしね。
で、3点と短剣を交換する。
学生服も、試着室で旅服に着替えて渡した。
ヒィン
【初心の短剣〈新品〉】
・初心者用の短剣。
・量産品。片刃で扱い易い。
・切れ味より、耐久力を重視した作り。
・攻撃力15。
(ふむ?)
試しに、鞘から抜く。
折れた剣とは違い、欠けも錆びもなく、美しい刀身が現れた。
刃渡りは、20センチぐらい。
幅広で分厚い。
表示された攻撃力も、折れた剣より『5』上がっている。
ジッと見つめ、
(……んふっ♪)
新品、いいな。
僕だけの専用の剣って感じ。
刀身に反射する僕の顔も、少しにやけている。
よし、
カチン
鞘にしまう。
短剣の鞘の固定紐は、
ギュッ
腰ベルトの後ろで縛り、横向きに固定する。
買った品物も全てリュックに積め、んしょ……っと背負った。
それらの上に、外套をバサッと羽織る。
(――うん)
店内の試着用の鏡に映る自分の姿は、何だか、一端の冒険者っぽいじゃないか。
気分も高揚する。
(よっし、明日からもがんばるぞ!)
おう!
そうして買い物を終えた僕は、意気揚々と店を出ると、宿屋への帰路を辿ったんだ。




