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チートな真眼の少年は、異世界を満喫する! ~金髪幼女を助けたら、未亡人のママさん冒険者とも仲良くなりました♪~  作者: 月ノ宮マクラ


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022・初クエスト、達成!

 2時間後、僕は、南の草原からクレタの町へと帰還した。


 町壁の門前に到着。


 すると、門番の兵士さんが、


「おお、帰ったか、少年」


 と、僕を見つけた。


(あ、覚えていてくれたんだ?)


 少し嬉しい。


 僕は「はい」と頷き、入町手続きのため、冒険者の証の登録石を見せる。


 兵士さんは、端末でピッと読み取りながら、


「薬草は集まったのか?」 


 と、聞いてくる。


 僕は頷き、


「大丈夫です」


「おお、そうか、よかった」


 彼は笑った。 


(うん)


 その笑顔に、僕も笑ってしまう。


「ありがとうございます」


 ペコッ


 と、頭を下げる。


 兵士さんは頷き、


「うむ、初任務、ご苦労だったな」


「はい!」


 僕も元気に答えた。


 そうして兵士さんに見送られながら、僕は町の中に入ったんだ。



 ◇◇◇◇◇◇◇



 町の大通りを歩き、冒険者ギルドに到着した。


 建物に入る。


(ふむ……?) 


 1階フロアにいる冒険者の数が、朝より少ない。


 時間的には、午後3時過ぎぐらい……ちょうど隙間の空いている時間なのかな?


(ま、いいや)


 僕は、フロアの奥へ。


 冒険者手引書によれば、素材集め系のクエストの場合、まず『素材専用の受付』で集めた品の鑑定を受けるらしい。


 そこで、証明書をもらう。


 その証明書と一緒に、冒険者用受付で報告となるそうだ。


(あ、あそこだね)


 フロアの左奥に、素材用受付がある。


 そこには、眼鏡のおじさんが1人。


 近づき、


「こんにちは。素材の鑑定をお願いします」


 と、声をかけた。


 ジロッ


 彼は、僕を見る。


「クエストか?」


「うん」


「依頼書、登録石、素材を見せろ」


「あ、はい」


 ガサゴソ


 言われた通り、肩提げ鞄から依頼書、登録石、素材を出し、カウンターに置く。


 おじさんは、石を器具に固定。


「ふん、新人か」


 登録情報を見て、そう呟く。


 次に、依頼書、素材を確認していく。


 すると、


「……ほう?」


 と、唸った。


 束にした『白鈴の薬草』の根の部分、濡れたハンドタオルが巻かれた場所を見ている。


 ハンドタオルを剥がし、


「新人なのに、よくわかってるな」


「…………」


「素材の数、種類、品質に間違いはない。保存状態も良好。……ほら、証明書だ」


 バン


 カウンター上に、赤い用紙が置かれる。


 僕を見て、


「お前みたいに素材を扱う奴が、もっと増えて欲しいもんだ」


 と、言う。


(…………)


 褒められたのかな?


 僕は「どうも」と答える。


 そして、


「それとあの、もう1つ、見て欲しい素材が」


「あん?」


「帰りに、偶然見つけて」


 ポフッ


 鞄から出し、カウンターに置く。


 小さな花だ。


 大きさは、3センチぐらい。


 だけど、花弁が虹色に煌めき、中央には黄金色の蜜が満ちた球体がある。


 ガタッ


 おじさんが驚き、目を見開く。


(ふふふ……)


 僕は、内心、笑う。


 ヒィン




【黄金蜜の煌花】


・希少な薬草花。


・高濃度の魔力を含んだ大量の蜜を蓄えた花である。魔法薬の希少素材として、高額で取引される。


・相場、1本2000リド。約20万円。




 最後の最後、帰り際に『真眼』で見つけた花だ。


(20万円だぞ)


 さあ、どうだ……?


 僕は、おじさんを見つめる。


 彼は無言。


 やがて、


「よく見つけたな」


「はい」


「この花を見たのは、5年ぶりだ。運のいい奴め」


「…………」


「買取は、1800リドだ」


(……ん?)


 1800リド?


 18万円?


 あれ、相場より安くない?


 僕は、目を瞬く。


 僕の表情に、おじさんが気づく。


「嫌なら、他の商店で売れ。もっと高く売れる」


「え……」


「ただ言っとくが、別に税金を1割、納める必要があるぞ。払い忘れると、余計に追徴金を取られる」


「…………」


「それを防ぐため、ギルドでは先に税金分を抜く。俺の提示額は、税金を納めたあとの額だ」


「な、なるほど」


 税金……かぁ。


 日本の高校生には、あまり縁のない話。


 だけど、昔、個人で店の経営をしてる伯父さんが言ってたな。


 会社員は、給料から会社が先に税金を納めてるから楽だけど、俺は全部、自分で計算して申告して納めないといけないから大変だって。


 確定申告の時期、怖いって。


(ふ~む、そっか)


 きっと、冒険者も同じ。


 冒険者ギルドが、報酬から先に税金分を引き、代わりに国に収めてくれてるんだ。


 要は、


(冒険者の報酬は、すでに税金分が抜かれたあとの額なんだね)


 なるほど、楽ちん。


 僕は頷き、


「ギルドに売ります」


 と、言った。


 おじさんは「おう」とぶっきら棒に応じる。


 バン


 また赤い紙を1枚、カウンターに置く。


 僕は、2枚目も受け取る。


 おじさんに、


「色々教えてくれて、ありがとうございました」


 と、お礼を言う。


 おじさんは「ふん」と鼻を鳴らす。


 横を向き、


「これも仕事だ」


 と、短く言う。


(…………)


 税金の話まで新人に教えるのが、素材受付の人の仕事の訳ないよね?


 僕は小さく笑う。


 そして、もう1度、


 ペコッ


 目の前の親切なおじさんに頭を下げてから、僕は冒険者用の受付に向かったんだ。



 ◇◇◇◇◇◇◇



 今日は混んでないので、待たずに受付できそうだ。


 受付カウンターは、3つ。


(あ、アリアさんだ)


 朝の受付嬢さんを見つけたので、再びお願いしようと思う。


 僕は受付に行き、


「こんにちは」


 と、声をかけた。


 彼女も微笑み、


「トウヤマ様ですね。薬草採取のクエスト報告でしょうか?」


「うん、そうです」


「素材の証明書は……?」


「あります」


「ありがとうございます。では、それと一緒に、登録魔刻石、依頼書もお願いします」


「はい」


 頷き、全て提出する。


 石を器具に固定し、


 ポチポチ


 彼女は、鍵盤を叩く。


 そして、依頼書、証明書を確認し、「?」と証明書が2枚あることに気づく。


 その内容を読み、


「…………」


 無言で目を見開いた。


 周りに他の冒険者もいるので、驚きの声は出さない。


(うん、プロじゃん)


 受付嬢さんは、僕を見る。


「よく……見つけましたね」


「偶然です」


「そうですか」


「はい」


 深くは追及されない。


 単純に、運が良かっただけと思われたのかな?


 彼女は頷き、


「薬草も、ずいぶん早く集められたのですね」


「あ、うん」


 僕も頷く。


 自分の目の下に、人差し指を当て、



「――実は僕、目がいいんです」



 と、笑った。


 それに、彼女も微笑む。


「そうですか」


「はい」


「今回の納品された『白鈴の薬草』ですが、かなり品質が良かったため、証明書にプラス査定が入りました。そのため報酬が1割の増額となります」


「おお、本当ですか?」


 やった。


(『真眼』の言う通りになったぞ)


 1割、400円。


 高くはないけど、嬉しい!


 鑑定のおじさんもありがとう。


 喜ぶ僕を、受付嬢さんも優しく見ている。


 それから、


「以上で、クエスト達成の手続きは完了となります」


「あ、はい」


「報酬なのですが、例の花の分も含めたため、少し高額になります。そのため、1度、ギルドの方でお預かりいたしましょうか?」


「ギルドで?」


「はい。預金業務もやっております。冒険者ギルドならどこでも引き出し可能で、手数料もかかりません」


「へぇ……」


 まるで銀行だ。


 ま、利息はなさそうだけど……。


 アリアさんは、


「大金を持ち歩くのも危険なので、ご利用をお勧めしますよ」


 と、言う。


(ん~?)


 僕は少し考え、


「じゃあ、500リドだけ現金でください。残りは預けます」


 と、答えた。


(このあと、色々買い物したいしね)


 受付嬢さんも「承知しました」と頷き、100リド硬貨5枚の入った布袋を用意してくれる。


 ジャラッ


 結構、重い。


 ……うん。


 人生で初めて、自分で稼いだお金だ。


 この異世界で生きるために、僕が必死にがんばったことの証明である。


(…………)


 色んな意味で、重いや。


 手の中の布袋を、しばらく見つめてしまう。


 と、そんな僕に、


「トウヤマ様」


「?」


「初めてのクエスト、お疲れ様でした。そして、達成おめでとうございます」


 ニコッ


 受付嬢さんが微笑んだ。


(あ……)


 僕は驚く。


 なんか、胸に来た。


 すぐに笑って、


「ありがとうございます」 


 と、頭を下げる。


 ギュッ


 報酬の布袋を握り締め、そして、肩提げ鞄にしまう。 


 そのまま、回れ右。


 胸を張り、


(うん!)


 仕事を終えた1人の冒険者として、僕は受付をあとにしたんだ。

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今の所大人が良い人ばかりだ・・・
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