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002・異世界転移した!?

 ――気がついたら、僕は、草原に立っていた。



(え……?)


 360度、緑の草だけ。


 見上げる空は、青く、高く、雲1つない。


 いい天気じゃん。


 …………。


 いや……いやいや、そうじゃない。


「ここどこ!?」


 僕は叫んだ。


 落ちつけ、思い出せ、最後の記憶は何だっけ?


 あ……。 


 そうだ、学校。


 苦労して勉強して、ようやく合格した志望高校の初日で入学式で、今朝、家を出て新しい通学路を歩いて、その高校に向かっていて……。


 そして……?


 そして、草原ここにいた。


 ……って、


(意味わからん!)


 僕は、頭を抱えた。


 思わず、草原にしゃがみ込む。


 視界の中が、足首ぐらいの長さの草で埋め尽くされ――その時、


 ヒィン


(う……?)


 視界がブレた。




【クレイン草】


・ただの雑草。


・草食動物の餌になるが、人間には有毒な成分が微妙に含まれる。


・食用には、非推奨。




 草の上に、そんな文字が見えた。


(え……?)


 僕は、ポカンとする。


 思わず、文字を触る……けど、


 スカッ


 指はすり抜け、感触はない。


 瞬き、2回。


 あ……消えた。


 僕は茫然。


 そして、


(あれ……まさか、これ?)


 ある可能性に思い至り、自分の両手を見つめた。


 ジ……ッ


 数秒、集中。


 すると、


 ヒィン


「!」




桐山とうやま真一しんいち


・人間、男、15歳。


・別世界に転移した日本人。転移の負荷によって、記憶に障害がある。


・特技、『真眼しんがん』。




 お、おお……。


(転移……やはり、異世界転移!)


 マジか?


 漫画やラノベでよくある話だけれど、まさか現実に自分の身に起きるとは……世の中、わからないもんだね、本当に。


 しかも、これ。


 この、3つ目の項目。


(特技、『真眼』……?)


 これは、アレだよね。


 転生、転移で与えられるチート能力。


 多分、今見えているこの文字、対象の情報を表示する鑑定みたいな能力が『真眼』ってことだよね?


 凄い、やばい、嬉しい。


(えへへ……)


 チートか。 


 僕にも、チートか。


 まるで宝くじに当たったような気分だよ。


 駄目だ、表情がにやけちゃう。


(……ん?)


 そう言えば、これ……2つ目は何?


 記憶に障害?


 別に、何か忘れてる気はしないんだが……?


 う~ん、わからん。


「ま……いいか」


 忘れてることを忘れてるぐらいだ。 


 きっと、大したことじゃないでしょ。


 うん、気にしない。


 ともかく、だ。


 僕は、異世界に転移した。


 今は、そっちが大事。


 あ……そう言えば、家族や友人には、もう会えなくなってしまったのか。


 突然の別れ。


 少し、寂しい。


 いや、でも、


(もしかしたら、元の世界に戻る方法とかあるかもしれないし?)


 再会の希望はあるかも?


 それに、うん。


 考えたら、中学の友人の中には、他県の高校に入学するため、実家を離れて寮生活する奴もいたもんね。


 僕の場合は、それが異世界だっただけ、と。


 ま、そう考えればいいか。

 

 パン


 僕は両手で頬を叩く。



「――んっ!」


 

 気持ちを切り替えよう。


 転移した以上は、この異世界を満喫してやろうじゃないか。


 チートもあるし、


(ぐふっ)


 僕は、拳を青い空に突き上げた。


 よっし、やるぞー!



 ◇◇◇◇◇◇◇



「――んじゃ、まずは、移動かな」


 ここは、何もない草原。


 ずっと、ここにいる理由はないもんね。 


 現状、僕は手ぶらで転移している。


 着ているのは、高校用の学生服。


 だけど、それ以外、通学時に持っていた財布とかスマホの入った学生鞄は消滅してたんだよね。


 何でやねん……。


(ま、嘆いても仕方ないか)


 水、食料。


 生きるために最低限、必要な物が欲しい。


 となると、


(町や村を見つけたいな)


 と、思うのです。 


 しかし、周囲は360度、草原の景色……さて、どっちに行けばいいのだろう?


 と、その時、


 ヒィン


(お……?)


 見ている方向の空中に、文字が浮かぶ。



【北の方角】


・北の方角を示している。




 おお、これは……。


 僕は90度、右を見る。


 ヒィン



【東の方角】


・東の方角を示している。



 と、また文字が浮かぶ。


 お、面白い。


 更に2回、90度ずつ向きを変えると、【南の方角】【西の方角】と表示された。


(便利だね~)


 方位磁石とか、要らないじゃん。


 もしも森とかで迷っても、方角は見失わないぞ。


 だけど、


(人里はどっちだ?)


 肝心のそれがわからない。


 ……いや。


 いやいや。


 これは、きっとチート能力。


 なら、もしかして?


 こう、もっとグッと目を凝らしたら……もしかするかも……?


 うん、駄目で元々だ。


(――よし、集中)


 ゆっくり周囲を見る。


 すると、


 ヒィン 


「……あ」


 地平線上の空中に、文字が浮かぶ。




【クレタの町】


・人族の平凡な町。


・剣と魔法の王国アークレインにある町の1つ。人口約2000人。


・距離、約17キロ。




 おお……!


(本当に見えた!)


 この文字がある方向に歩いて行けば、この町があるってことだよね。


 凄いぞ、『真眼』。


 チート能力、最高です。


 ふむふむ、クレタの町か。


 剣と魔法の王国アークレインって……もしかして今、僕がいる場所もその王国の領土なのかな? 


 距離は17キロ、か。


 徒歩だと、少し遠いね。


 でも、


(当てもなく歩くより、目的地がわかっている分、安心かな)


 うん、と、僕は頷く。


 空中の文字を見据え、


「よし、行こう!」


 ザッ


 目の前の草を踏みしめる。


 異世界での第1歩――さあ、ここから冒険の始まりだ!

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