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019・簡単、薬草採取!

「――お、これか」


 僕の目の前には、白い鈴みたいな房のある草が生えていた。


 依頼書のイラストそっくり。

 

 長さは、30センチぐらいかな?


 その周りには、普通の草が重なるように生えていて、ここにあると知らなきゃ絶対に見つけられなかった気がする。


 一応、確認。


 ヒィン




【白鈴の薬草】


・本物。




 うむ、本物らしい。


 真眼君も保証してるので、大丈夫ですな。


(よし、採るか)


 茎を切ればいいのかな?


 カシャッ


 腰の『折れた剣』の柄を握り、抜く用意をする。


 と、その時、


 ヒィン




【白鈴の薬草の採取法】


・根ごと抜く。


・折れた剣で土を耕し、柔らかくすると抜き易い。


・布を水で濡らし、根に巻きつけて保存する。


・納品時、プラス査定。




(お……?)


 根ごと抜くんだ? 


 しかも、プラス査定だと……?


 よし、やってみよう。


 僕は折れた剣を、白鈴の薬草の周りの土に突き刺していく。


 ザック ザック


 根を傷つけないよう、丁寧に……。


(うん)


 こんなもんかな?


 折れた剣を地面に置き、茎を掴み、ゆっくり引く。


 ズズ……


 おお、抵抗が弱い。


 スポッ


「ぬ、抜けた!」 


 やったぜ。


 根も入れたら、50センチぐらいか。


 意外と長いね。


 あとは、水で濡らした布で根を巻く……と。


 布……布……。


(あ、そうだ)


 学生ズボンのポケットに、ハンドタオル入れてあったっけ。


 それ、使おう。


 クレフィーンさんにもらった水筒の水を、取り出したハンドタオルに少しずつ垂らす。


 程良く湿った感じ。


(よし)


 これを巻いて……完成!


 どうだ?


 ヒィン




【白鈴の薬草〈採取済み〉】


・保存状態、良し。


・町に戻るまで、充分な鮮度が期待できる。




(うむ!)


 真眼君のお墨付きです。


 よ~し、これで早速、1本ゲットだぜ!


 あと、9本。


「このまま、一気に集めていくぞ!」


 お~!


 軽く拳を突き上げ、僕は、空中に浮かぶ【白鈴の薬草】の文字を目印に、再び草原の中を歩きだしたんだ。



 ◇◇◇◇◇◇◇



「……あれ、もう終わり?」


 あれから、約1時間。


 僕の肩提げ鞄には、鈴のような房の草が10本分収まり、鞄の口から先端だけがひょっこり顔を出していた。


 うん、目標達成。


 …………。


 いやいや、


(さすがに早過ぎ……!)


 思った以上の効率に、自分で驚く。


 実働1時間で、40リド。


 時給4000円である。


 真眼……凄い。


(そうか。これが、チートかぁ)


 しみじみ、そのズルさを感じるよ。


 でも、ま、往復の移動時間も考えたら、時給1000円以下になるのかね……?


 僕で、これ。


 チートなしのド新人の冒険者の給料は、相当、厳しいんだろう。


 …………。


 ……ま、いいか。 


 他人の心配の前に、僕も新人、まず自分のことに集中しよう。


 採取は完了。


 あとは町に帰るのみ、


(だけど……その前に、一息入れよっかな?)


 3時間、動きっぱなしだし。 


 見れば、近くに手頃な岩もある。


 あそこで、クレフィーンさんにもらった携帯食料と水筒の水をいただき、少し早いお昼としますか。


(うん)


 頷き、僕は岩に座る。


 ん、いい椅子だ。


 ガサゴソ


 膝の上で鞄を漁り、銀紙の包みを取り出す。


 ペリッ


 紙を剥がすと、


(ほほう?)


 黒っぽい棒状の物が現れた。


 ヒィン


 真眼が発動する。




【携帯食料】


・栄養価の高い豆類と焼き固めたパン生地を練り合わせたもの。


・1本で1食分。


・味は我慢。




(へ~、豆とパン)


 見た感じ、よくわからん。


 クンクン


 香りも、うん、甘そうな焼き菓子みたいな感じで悪くない。


 でも、味は我慢……。


 逆に、好奇心が湧く。


「よし」


 僕は思い切って、


 パクッ


 と、1口食べた。


 …………。


 …………。


 ……?


 ???


(味が……しない?)


 いや、しないというか、薄い。


 甘じょっぱいんだけど……こう、水で薄くされたような……何だろう?


 まずくない。


 食べれなくもない。


 でも、美味しくもない……。


 なんか、


(……虚無です)


 そんな味。


 モグモグ


 楽しい食事とは言えないけど、作業として食べれる感じ。


 ま、いいか。


 栄養価は高いらしいし。


 うん、食べれるだけありがたいや。


 水筒の水も飲む。


 ゴクッ


(ん……ぬるい)


 水筒の素材が革なので、それっぽい臭いもする。


 でも、美味しい。


 ああ……そっか。


(意外と、喉、乾いてたんだね、僕)


 今、自覚した。


 考えたら、太陽の下で2時間歩いて、1時間採取して……そりゃ、汗もかいてるよ。


 ゴクゴク プハッ


 口元を腕で拭う。


「…………」


 クレフィーンさんが食料とか水を分けてくれなかったら、実は危なかったかもしれない。


 脱水症とか、特に。


 うん、


(まさに、女神……!)


 思わず、北の方角に手を合わせる。


 本当にありがとう、クレフィーンさん。


 でも、


(明日からは、水も食料も自分で用意しないといけないんだよね)


 お金、かかるなぁ。


 宿屋が1泊夕食付で、1400円。


 朝食、500円。


 それ以外に、クエスト中の食料と水が必要、と。


 あとは、今着ている学生服以外にも、何枚か着替えも欲しいし、他にも買うべき物が出てくるかもしれない。


 病気で動けない日もあるかも……?


 と、すると、


(う~ん、1日4000円、か)


 意外とギリギリ?


 いや、結構、厳しいかも……?


(……ちょっと考えないとなぁ)


 そう思いながら、


 パクッ ゴクン


 携帯食料の最後の1口を食べ、食事を終えた。


 銀紙を丸め、水筒と一緒に鞄の中にしまう。


 その時、


 コツ


(ん?)


 指先に、何か当たった。


 何だろう?


 僕はキョトンとしながら、当たった物を摘まみ出す。


(あ……)


 僕の指の間にあったのは、1つの小石。


 灰色の表面には、茶色い文字列が幾何学模様に並んでいる。


 僕は、目を丸くする。


 そうだ、


(……忘れてた)


 その石を太陽にかざして、



「――うん、『マトゥーンの魔法石版』!」



 と、僕は笑った。

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― 新着の感想 ―
さて、適正あるとはいえ上手く行くかな?
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