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チートな真眼の少年は、異世界を満喫する! ~金髪幼女を助けたら、未亡人のママさん冒険者とも仲良くなりました♪~  作者: 月ノ宮マクラ


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185/188

185・決行間近の人々

 現代に復活した『邪竜の幼生体』は胎児のまま母体を操り、大陸中で暗躍していた。


 アークレイン王国だけじゃない。


 諸外国に転移しながら各地の『邪竜の腐肉』を利用し、時に魔物、時に人を誘き出し、多くの『高濃度汚染体』を生み出して、自分の手駒を増やしていたのだ。


 そして、各国で事件は起きる。


 高名な騎士団が、実力ある冒険者パーティーが、そうした何十、何百人かが時期をずらしながら、消息不明に、あるいは事故やクエスト失敗で死亡していく。


 偶然じゃない。


 奴の仕業だ。


 将来、自分たちの邪魔になりそうな存在を、手駒の『高濃度汚染体』を使役し、消していたのだ。


 …………。


 黒騎士ジオ・クレイアードも、そんな手駒の1つだった。


 ただ、その手駒は失った。


 黒騎士の死後、『邪竜の幼生体』は、とある理由から活動拠点を外国に移し、アークレイン王国からは距離を置くことにした。



 ――その理由は、その地に『女神の使徒』が現れたからだ。



 当時、『邪竜の幼生体』は手駒の死の原因を探るため、1度、その地を訪れていた。


 そして、遭遇した。


 女神の強大な加護を与えられた少年と。


 この世界の人間には不可能な適合を見せ、加護の力を十全に使いこなすことのできる異界の存在だ。



 ――奴は危険だ。



 そう直感した。


 少なくとも、無力な胎児の現在は、極力、関わるべき相手ではない。


 牽制として『女神の使徒』には警告を発しつつ、けれど内心、『邪竜の幼生体』はその強力無比な力を警戒し、恐れ、かの地を当分の間、離れることと決めたのだった。


 だが、数ヶ月後、看過できない事態が起きる。



 ――アークレイン王国に配置した『高濃度汚染体』が全滅したのだ。



 手駒が完全に消えてしまった。


 そればかりではない。


 その手駒を生み出す、かつての自身の肉体の一部である『邪竜の腐肉』も所在を把握され、その数が減らされていった。


 遠方に居ながら、邪竜の感覚がそれを知る。


 もはや、放置はできない。


 危険を承知で、1度、王国に戻らねばならないだろう。


 状況の立て直し。


 そして、必要ならば……『女神の使徒』の暗殺を。


 その決意の下に、諸外国で用意した『高濃度汚染体』を5体引き連れ、王国に転移することに決めた。


 その決行日は、



「――7日後の深夜2時28分です」



 と、僕は、真眼情報を皆に伝えた。


 ここはクランハウスの会議室。


 集まったクレフィーンさん、アルタミナさん、レイアさんの3人と、今回、同席してもらったオーディンさん、バラディアさんも頷く。


 作戦準備が決まり、真眼で奴を見た。


 で、奴の心理や今までの動向、そして、王国に来るタイミングもわかったんだ。


 だけど、


(まさか、向こうも僕を怖がってるとは思わなかったよ)


 僕の方が怖かったのにさ。


 ハーフエルフのおじいさんが呟く。


「けったいなじゃの」


「でも、便利でしょ? それで私たちも何度も助けられたし、オーディも助かったんだ。――ね、オーディ?」


「ああ、借りは返すさ」


 黒獅子公は笑い、黄金剣鬼は生真面目に頷く。


 レイアさんは冷静に言う。


「王国兵の動員は間に合うのかしら?」


「教皇様が手を回し、アークレイン王家の命で、王国軍の軍事演習としてすでに7000名が派遣されているそうですよ。もう現地に近いので、7日以内には配置できるでしょう」


「そう。あとは私たちね」


「はい」


 クレフィーンさんは頷く。


 全員が、僕を見る。


 黒髪のお姉さんが、


「転移先の誘導、できそうかい?」


「ぶっつけ本番ですが、秘術の目は【大丈夫】と視えてるので大丈夫でしょう。覚悟決めて、がんばります」


「うん、頼むよ」


 真っ直ぐな視線で、彼女は言う。


 当然だ。


(――全ての作戦の肝だもの)


 転移の誘導ができなければ、今までの準備は無駄になり、王国内での奴の暗躍を許してしまう。


 下手をしたら、2度と姿を見せないかもしれない。


 それは、最悪だ。


 だから、油断してる今、僕らの手の内を奴が知らない今しか、チャンスはない。


 うん、


(絶対、成功させるぞ!)


 ギュッ


 僕は拳を握る。


 情報を伝えたあと、オーディンさん、バラディアさんは荷物を整え、現地に出発するという。


 僕らも教皇様に会い、情報共有。


「そう……ついに決戦ね」


「はい」


「悔しいけれど、私は一緒に行けないの。だから、勝利の報告を待っているわ」


「ん、任せてください」


 トン


 僕は、胸を叩く。


 自信は半々……だけど、覚悟は決まってる。



 ――大事な母娘の未来のために。



 臆病な僕でも、大好きな人たちのためなら、なけなしの勇気を振り絞れる。


 だから、本気で戦う。


 怖いけど、怖くない。


 大神殿を訪れたあとは、冒険者ギルドを訪れ、ギルド長にも近日中の出発を報せる。


 彼は、


「そうか」


「…………」


「全員、無事に帰れよ。そうしたら、坊主の昇級も決まってるからな」


 と、笑った。


(え、そうなの?)


 3人も驚き、


「やったね、シンイチ君」


「これは、絶対に生きて帰らないといけませんね」


「仕方ないわね。遠征から帰ったら、私が美味しいお店で昇級祝いの料理でも奢ってあげるわ」


「ど、ども」


 笑顔で背中を叩かれたりと前祝いされる。


(帰ったら、か)


 戦場に向かう僕らへの、ギルド長なりの配慮を感じる。


 僕は、彼に深く頭を下げた。


 多くの冒険者を見送って来ただろう彼も、静かに頷く。


 やがて、冒険者ギルドをあとにする。


 そして、僕らは『月輪の花』クランハウスへと戻り、幼女にも出発を伝えたんだ。



 ◇◇◇◇◇◇◇



「――は、はい、わかりました」


 幼女は、硬い表情で頷いた。


 僕らの緊張が伝わったのかもしれない、彼女もどこか緊張した様子だった。


 場所は、母娘の部屋。


 室内にいるのは、僕とクレフィーンさんとファナちゃんの3人だけ――出発前夜、3人だけの時間を過ごせるよう、クラン長が配慮してくれたんだ。


 僕は言う。


「必ず、帰るからね」


「う、うん」


 彼女は頷く。


 でも、


「……お兄様?」


「ん?」


「何だか、いつもとお顔が違うね」


「え?」


「……少し怖い顔、してる」


 小さな手が、僕の頬を触る。


 ドキッ


 見抜かれてる?


 多分、今までで1番危険な戦いだ。


 こちらも戦力を揃えたけれど、相手は『高濃度汚染体』を5体も揃えている。


 単純な彼我の戦闘力の差は、やはり大きい。


(でも、奇襲が成功すれば……!)


 その差も埋まる。


 それは、真眼君も保証してくれていた。


 もちろん、想定通りに全てが行く訳ないだろうけれど……でも、充分な可能性はあるんだ。


 ……そう自分に言い聞かせてる。


 正直、怖い。


 怖さは隠せない。


 我慢し、押し殺し、考えないようにしてるけど、死ぬ可能性も充分あるから。


 でも、僕はお兄様。


 だから、


「そう?」


 と、惚けた。


 ファナちゃんの青い瞳が、僕を見つめる。


 純真無垢で、心配している瞳。


 僕は笑った。


「大丈夫。今回は、悪い奴らの親玉が相手だから少し気合が入ってるんだ」


「……うん」


「心配してくれて、ありがとう、ファナちゃん」


「あ……」


 頭を撫でる。


 柔らかなおかっぱの金髪だ。


 幼女は少し恥ずかしそうで、でも、僕から目を逸らさない。


 と、お母様が、


「ファナ」


「お母様……」


「シンイチ君は、お母様が守ります。だから、ファナはシンイチ君が帰る場所となって待っていてくださいね」


「!」


 幼女は、ハッとする。


 幼い美貌に責任感を宿し、「はい」と頷いた。


 お母様も頷く。


 そして、両手を伸ばし、小さな身体を抱き上げた。


「あ」


 ファナちゃんは驚く。


 少し頬が赤い。


 多分、お兄様の前で子供扱いされるのが、少し恥ずかしいのかもしれない。


 でも、お母様は変わらずに娘を抱き締める。


 その温もりを忘れぬように。


 自身の心に刻むように。


(――うん)


 気持ちはわかる。



 ――この子の未来を守るために。



 僕らは明日、決戦に挑むのだ。


 その意味を、もう1度、自身の魂に教えているのだろう。


 僕も手を伸ばし、


 ギュッ


 母娘ごと、両手で抱き締めた。


 クレフィーンさんが少し驚いた顔をする。


 すぐに微笑み、


 ギュウ


 僕とクレフィーンさんのサンドイッチの具として、ファナちゃんが幸せに潰される。


「んん……っ」


「ふふっ」


「あはは」


 僕らはつい笑う。


 そんな僕らを見て、ようやくファナちゃんも安心したように笑いだした。


(うん、いい笑顔)


 その笑顔を守るために、僕らは戦うんだよ。


 その日は、夜遅くまでファナちゃんともお喋りし、彼女が寝落ちしたあとは、お母様と一緒にその寝顔を眺め、そして、同じベッドで3人『川』の字になって眠った。


 夜は更け、そして、朝が来る。


 出発当日、



(――さぁ、行くぞ)



 天使な幼女に見送られ、僕らは『邪竜の幼生体』と決着をつけるため、クランハウスを発ったのだった。

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― 新着の感想 ―
高濃度汚染体を5体連れてくる事を考えると、向こうも出せる戦力を引き連れて来たか? 邪竜の幼生体にとっても、「始末するなら今しかない」と判断したのかもしれない・・・同時にそれは、真一達も同じではある。 …
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