184・一泡吹かせよう
更新時、ブックマーク数が200となっていました!
この作品の投稿を始めて7ヶ月半、すでに読んでいない方もいらっしゃるかもしれませんが、1度は読み続けても良いとこれだけの方に思って頂けた事、本当に嬉しく思います。
また、今も読んで下さる方には心から感謝を!
本当にありがとうございます♪
物語も最終盤となってきましたが、どうか最後まで見届けて頂ければ幸いです。
では、本日の更新、第184話です。
よろしくお願いします。
3人にも事情を話し、僕らは通りを移動する。
やがて、到着したのは、特に大きくもなく、小さくもない一般的な石板店だった。
普通の店舗。
特別な感じは何もしないけど、
(本当にここ?)
ヒィン
【ここ】
真眼君のお返事。
うん、なら、信じよう。
(お邪魔しま~す)
と、僕らは店内に入った。
客数は4~5人、やはり、冒険者ばかり。
空中の文字に従い、移動していくと、古代の『マトゥーンの魔法石板』が売っている区画に辿り着いた。
数は、20枚前後。
盗難防止で、鍵付きのガラスケースに収められている。
アルタミナさんは、
「店の大きさに比べて、結構、数が多いね」
との感想。
(ふ~ん?)
店員さんに話を聞くと、なんと10日前に馴染の冒険者が遺跡で石板を発見し、まとめて入荷したばかりらしい。
へぇ~、と驚く。
そっか。
(だから、今まで真眼に反応しなかったのか)
と、納得である。
店員さんにケースの鍵を開けてもらい、石板を見せてもらう。
その1つに、文字が浮かぶ。
ヒィン
【空霊の天翔陣】
・転移魔法の石板。
・1度目の発動で、発動した地点が転移先の座標として固定され、2度目の発動でそこに転移する。距離、無制限。
・発動後、座標は消失する。
・補助力170。
・桐山真一の魔力紋に適合する。
(ほほぅ?)
転移魔法?
凄い……けど、
(これでどうやって、邪竜の幼生体の転移を限定するの?)
と、心で聞く。
ヒィン
真眼君は答える。
【転移限定の方法】
・転移魔法には、個別の識別式が存在する。
・転移先を指定する際、空間に魔法陣が発生する。その魔法陣にも、識別式が刻まれている。
・その識別式をいじる。
・邪竜の幼生体の母体となる高濃度汚染体が転移先としている識別式に変更し、その転移先を桐山真一が指定した座標へと誘導する。
(え? そんなことできるの?)
僕は、目を見開く。
ヒィン
【可能】
真眼君は保証する。
……なら、できるのだろう。
一応、3人にも報告、相談する。
黒髪の美女は、
「面白い手法だね?」
と、笑う。
赤毛のエルフさんも頷き、
「なるほど。奴らを誘導できるなら戦場をこちらで選べるし、相手には予想外の奇襲にもなるわね。相当、有利に戦えるわ」
と、前向きだ。
(ふむ……悪くないのかな)
2人の様子に、そう思える。
相手の識別式は、真眼君がわかるだろう。
相手の発動するタイミングも、真眼君なら事前に把握できるし。
(――うん)
きっと、向こうも気づくまい。
強力な古代魔法、その転移にまさか干渉されるなんて、普通、思いもしないだろう。
僕は頷いた。
「やってみましょう」
「うん、そうだね」
「ええ」
2人は頷き、
「シンイチ君……」
クレフィーンさんは僕を見つめ、瞳を潤ませる。
僕は笑う。
「『邪竜の幼生体』を倒せれば、また復活するまで時間がかかります。ファナちゃんの将来も当面は安泰ですよ」
「……っ、はい」
長い髪を揺らし、彼女も頷く。
目元を擦り、
「ファナのために、ありがとうございます」
「ううん」
僕は首を振る。
彼女は「え?」と僕を見る。
少し照れながら、
「自分のためです。大好きなクレフィーンさんとファナちゃんと楽しく過ごすために、僕がやりたいだけですから」
「シンイチ君……」
「だから……その、がんばりましょう」
「はい」
頷き、
ギュッ
クレフィーンお母様は微笑むと、僕をきつく抱き締めた。
(わぁ?)
や、柔らか~い。
何がとは言いませんが……。
アルタミナさん、レイアさんは顔を見合わせ、苦笑する。
友人の肩を叩き、
「事前準備、色々必要だね」
「他の人たちにも、協力を仰ぎましょう」
「はい」
お母様も頷く。
失敗したら、警戒される。
多分、1度きりのチャンス。
(絶対、モノにするぞ)
そうして僕は、石板を購入する。
魔法枠は、近代の『回復魔法』を消去し、そこに加えることにした。
ギュッ
拳を握る。
――よし、決戦は間近だ!
◇◇◇◇◇◇◇
翌日、再び教皇様にお会いした。
邪竜関連の全てを知り、事情を理解している権力者の彼女に協力を仰ぐためだ。
大神殿を訪問。
約1時間ほど待ち、お会いしてもらえる。
ちなみに、
「教皇様との謁見は、本来、3ヶ月待ちだよ。私が『黒獅子公』でよかったね?」
とのこと。
お~、さす黒です。
ともあれ、教皇様に会え、僕らは昨日思いついた作戦をお話する。
彼女は目を見開く。
「可能なの?」
「はい。秘術の目で視えたので」
と、僕は、自分の目を指で示す。
3人の女冒険者も、信じて欲しいという眼差しで教皇様を見つめる。
30秒ほどの沈黙。
やがて、
「わかったわ」
と、教皇様は頷いた。
その瞳には、強い覚悟と闘志があった。
「今回の件、聖マトゥ教会アークレイン教皇として依頼を出す形としましょう。必要なものを言ってちょうだい、全て用意するわ」
「教皇様……!」
「常に後手に回らされてきたけれど、今度は邪竜に一泡吹かせてやれそうね」
と、楽しげに笑う。
僕らも大きく頷いた。
翌日からは、しばし待機。
教皇様が冒険者ギルド、アークレイン王家に連絡し、関連した各所が動き出す。
最初に、転移先の候補地を探してくれる。
邪竜の幼生体を絶対に逃さないため、そして、被害が民に及ばないため、また大規模な破壊が起きても問題のない土地を選定してくれるのだ。
同時に、人員も探す。
まず、
「早速、オーディに借りを返してもらおっか」
と、黒髪のお姉さん。
黄金剣鬼オーディン・レクスの参戦が決定した。
ついで、ギルド長経由で、賢人万魔バラディア・ライランにも声がかかる。
「面白そうじゃの」
と、快諾。
表情は好々爺。
だけど、眼の奥には、強い光がある。
(多分、高濃度汚染体との戦闘で多くの王国兵が亡くなった、その敵討ちのつもりなのかな?)
僕は、そう感じた。
こうして、煌金級3人が揃う。
王家も王国兵を動員し、転移先の戦場を包囲して『邪竜の幼生体』を逃がさない配備をしてくれるとか。
で、その必要経費は、全額、教会が支払う形。
(おお、太っ腹)
さすが、王国のみならず、大陸全土に広がる宗教組織だ。
やがて、場所も選定される。
王国西部の名もなき荒野。
動植物や魔物も少なく、当然、暮らしている人もいない不毛の地。
王都からの距離は、約700キロぐらい。
(うん)
被害気にせず、戦えそう。
そうして、着々と準備が行われる。
やがて、全ての状況が整ったと連絡が届いたのは、僕らが作戦を思いついてから約1か月後のことだった。




