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チートな真眼の少年は、異世界を満喫する! ~金髪幼女を助けたら、未亡人のママさん冒険者とも仲良くなりました♪~  作者: 月ノ宮マクラ


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183/188

183・ようやくここまで

「おかえりなさい、お母様!」


「ファナ」


 ギュッ


 月輪の花のクランハウスで、麗しい母娘が抱き合う。


(うんうん)


 目が幸せだね。


 オーディンさんを助けてから約10日後、僕らは王都アークロッドに戻っていた。


 管理人の老夫婦が頭を下げる。


「おかりなさい、アルタミナ様、レイア様、クレフィーン様、シンイチ様」


「うん、ただいま」


「ただいま。――留守中、変わりはなかった?」


「はい」


 レイアさんの問いに、老紳士ジーグルさんが頷く。


 ハンナ夫人も、


「帰還が遅くなるとの報告を受け、ファナ様は大層心配しておられましたが、翌日からは毅然と良い子であるよう努められておられましたよ」


「…………」


「…………」


(うっ、ファナちゃん……)


 健気な幼女だね。


 もう、お兄様が代わりに泣きそうだよぅ。


 2人のお姉様も同様なのか、再会を喜ぶ母娘を見て、瞳を細めている。


 やがて、幼女は、


「お兄様! アルおば様、レイアおば様!」


 テテテッ


 と、僕らにも駆け寄った。


 僕らも笑顔で、


「ただいま」


 ポフッ


 おかっぱの金髪をなびかせ、抱き着いてくる小さな身体を受け止めたんだ。



 ◇◇◇◇◇◇◇



 王都への道中は、オーディンさんたちと一緒だった。


 王都内に入ると、


「じゃ、オーディ、ギルドへの報告は任せたよ」


「は……? おい、アル!?」


 黒獅子公の言葉に、黄金剣鬼のお兄さんは唖然とした。


 黒髪の獣人さんは言う。


「あのギルド長に報告なんて、面倒臭い仕事は……いやいや、詳しい説明をするには1番の当事者であるオーディの方が適任だしさ」


「……お前な?」


「それに私たち、ファナを待たせてるし」


「ファナ? ああ……クレフィーンさんの娘さんか?」


「そ」


 彼女は頷き、人差し指を立てる。


 指先をオーディンさんに向け、


 グルグル


 と、回しながら、


「誰かさんを助けに行ったせいで、予定より長くお母様と離れ離れにしちゃってるんだよね~? 誰かさんのせいで~」


「……ぐ」


「ああ、早く会わせてあげたいな~」


「…………」


「ファナ、寂しくて泣いてないといいな~」


「くっ……わ、わかった」


 畳みかける黒獅子公の説得(?)に、黄金剣鬼が折れた。


 憮然とした表情で、


「ギルドへの報告は、俺たちが引き受けよう」


「そう? 助かるよ、ありがと!」


 ニコニコ~ッ


 黒獅子のお姉さんは、とっても素敵な笑顔です。


 一方、黄金の剣を持つお兄さんは、凄く渋い表情で彼女を睨んでいる。


 彼の仲間2人は戸惑いの表情だ。


 う、う~ん、


(い、いいのかなぁ?)


 僕は、金髪の未亡人さんを見る。


 クレフィーンさんも申し訳なさそうな表情で、でも、やはり娘に早く会いたいのか、口は挟まなかった。


 代わりにレイアさんが、


「馬鹿ね」


「え?」


「絶対、あとで呼び出し喰らうわよ、アル」


「…………」


「諦めて、嫌なことは早く終わらせてしまえばいいのに……全く、困ったクラン長よね」


 と、白い指で額を押さえ、ため息をこぼす。


(あはは……)


 そんな感じで、帰還当日、王都に入った辺りでオーディンさんたちと僕らは別れた。


 翌日は平穏だった。


 全員、疲れを癒すため、のんびり過ごす。


 クレフィーンさんもファナちゃんとの母娘の時間を過ごし、婚約者の僕も特別に同じ場にお邪魔させてくれて、一緒に楽しく過ごさせてもらった。


 猫科の獣人のアルタミナさんは陽だまりで昼寝三昧。


 レイアさんも庭の薬草園の手入れをしたり、そこで採れたハーブ茶を飲んだりしていた。



 ――で、その翌日だ。



 その日は、朝から曇り空で、午前中から雨が降っていた。


 風も強く、窓ガラスにも雨粒がパシパシと当たる。


 外出なんてしたくない天気。


 でも、


「――アルタミナ様。先程、冒険者ギルドから『召喚状』が届きました」


 と、老紳士がご報告。


 全員、無言になる。


 自然と皆の視線はクラン長に集まった。


 僕らのトップである黒髪のお姉さんは、無言のまま手紙を受け取り、天を仰ぐ。


 雨降る空へ、


「う~、ちっくしょー!」


 と、嘆きの叫びをあげた。



 ◇◇◇◇◇◇◇



 雨の中、冒険者ギルドを訪れる。


 即、ギルド長室に通されて、不機嫌そうなギルド長に出迎えられた。


 そして、


「この、馬鹿獅子が!」


(……っ)


 み、耳がぁ……!


 全員が硬直する中、責任者であるクラン長のお姉さんが叱られる。


 ギルドへの報告義務とか、煌金級冒険者が事前の相談もなく勝手に動き回るなとか、オーディンさんに押し付けたこととか、色々、怒られていた。


 大人になっても怒られるの、嫌だね……。


 僕らは無言。


 アルタミナさんは若干、涙目だ。


 やがて、銀髪のギルド長は息を吐く。


 少し表情を和らげ、


「……まぁ、オーディンを助けたことは評価してやるが」


 と、呟いた。


(あら……)


 飴と鞭。


 その飴に、アルタミナさんも金色の瞳を瞬かせる。


 すぐに嬉しそうに、


「でしょ? 私たちもがんばったんだよ」


「そこは認めてやる」


「うんうん」


「だが、オーディンたちもそうだが、お前の方も何か隠してるな?」


 ジロッ


 と、鋭い眼光が彼女を見やる。


 ドキッ


(僕の目のことだ)


 でも、アルタミナさんは平然と首をかしげ、「何のこと?」ととぼけた。


 ギルド長は、彼女以外の僕ら3人を見る。


 スッ


 僕らは、視線を外す。


 彼は渋い表情で「ちっ」と舌打ちし、


「まぁいい」


「…………」


「だが、何かあったら今後は報告しろ。お前たちの後ろ盾として、できることはしてやる」


「あ、うん」


「話は以上だ」


 帰っていい、と手を振られる。


(やれやれ)


 と、僕らは回れ右をした。


 その時、


「ああ、そうだ。教会の方からもお前らに呼び出しがかかっていたぞ? 早めに顔を出しておけよ」


「…………」


「…………」


「…………」


「…………」


 僕らは顔を見合わせる。


 そして、嘆息。


(こんな雨の日に……)


 と思いつつ、一礼してギルド長室を出ると、僕らは今度は聖マトゥ教会の大神殿に向かったんだ。



 ◇◇◇◇◇◇◇



 大神殿に到着する。


 30分ほど待たされ、教皇様に面会することができた。


「まぁまぁ、雨の中、ごめんなさいね」


 と、マリージアさん。


 僕らは若干湿った衣服のまま、曖昧に笑って応える。


 その後、報告。


 担当した2ヶ所の『腐肉』の処理に加え、オーディンさんの方の『高濃度汚染体』と『腐肉』も処理できたことを伝えた。


 教皇様は満足そうに頷き、


「そう。では、これで王国内の『高濃度汚染体』は全滅したのね」


「はい」


 僕も頷く。


 先日、『真眼君』の教えてくれた国内の『高濃度汚染体』の数は、3体のみ。


 その全てを撃破した。


 つまり、


(王国内の脅威は、ほぼ排除が完了したんだ)


 もちろん『邪竜の腐肉』はまだ各地に残っているので、新しい『高濃度汚染体』が誕生する可能性はあるけれど。


 でも、その『腐肉』の処理も順次、行われている。


 誕生前に、全処理できれば……。


(うん、人や魔物が高濃度まで汚染されるには時間もかかるし、そう簡単には誕生しないだろう)


 きっと、大丈夫。


 少なくとも現時点で、最大の懸念は潰し終えている。


 僕は言う。


「もうアークレイン王国には、ファナちゃんを脅かす強力な敵性存在はいませんし、これ以上、生み出させはしません。――この『目』にかけて」


 ジッ


 と、同じ目を持つ教皇様を見る。


 クレフィーンさんは「シンイチ君……」と声を震わせる。


 教皇様も頷かれた。


「そうね」


「…………」


「現状、神巫女の安全は確保されました。今後、私たちが対処を間違えなければ、問題ないでしょう」


「はい」


「ようやく……ここまで来れたのね」


 と、息を吐く。


 その表情には、長年、世界の平和と女神復活を担ってきた『教皇』としての時間の重さを感じさせた。


 …………。


 僕が現れるまで。


 彼女は皆の先頭に立ち、邪竜の脅威と戦ってきたのだろう。


 でも、今は僕が隣にいる。


 クレフィーンさんたちもいる。


(もう1人じゃないですよ?)


 と、心の中で呼びかけた。


 やがて、少しだけ明るい表情となった彼女と別れ、僕らは聖マトゥ教会をあとにしたんだ。



 ◇◇◇◇◇◇◇



 僕らは、王都の通りを歩いていた。


 ザアザア


 雨は降り続く。


 防水用の外套を頭まで被っているけれど、湿気は凄いし、濡れるのは免れられない。


(酷い雨……)


 灰色の空を恨めしく見上げてしまう。


 一緒にいる3人の美女も、やまぬ雨に若干、辟易した様子だった。


 ただ、雨でも通りに人は多い。


 ま、王都だしね。


(そう言えば……前に『邪竜の幼生体』と遭遇したのは、この通りの人込みの中だったよね)


 ふと思い出す。


 汚染体の妊婦を母体に、胎児として復活してた。


 今は、王国にいない。


 母体の古代魔法で、外国に転移したんだ。


 多分、王国内でしたように外国でも『世界の破滅』を目的に暗躍してるのかもしれない。


(…………)


 急に、戻ってきたりしないよな?


 母体は、転移が使える。


 もしかして?


 万が一?


 ……可能性はある。


(どうしよう? 何か、対策はないかな?)


 直接対決なら、まだいい。


 最悪なのは、こっそり戻り、暗躍されてしまうことだろう。


 せっかくここまでファナちゃんの脅威を減らしたのに、今更、裏で増やされてしまったら堪らない。


 もちろん、真眼がある。


 多分、すぐ気づけるけど、やはり1歩遅れる。


(もっと有効な手は……?)


 と、思った時、


 ヒィン


 空中に文字が走った。




【対抗策】


・転移先の限定。


・王都内に、有効な古代魔法を宿す『マトゥーンの魔法石板』が存在する。


・購入し、使うべし。




(お……?)


 真眼君、本当かい!?

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― 新着の感想 ―
アルタミナがお叱りを受けた物の、報告を終えて取り敢えず王国内の不穏分子を取り除く事には成功。当面の脅威は去った物のまだ不安は残る・・・対抗策として「転移先の限定」と「有効な古代魔法を宿す『マトゥーンの…
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