表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
チートな真眼の少年は、異世界を満喫する! ~金髪幼女を助けたら、未亡人のママさん冒険者とも仲良くなりました♪~  作者: 月ノ宮マクラ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

182/188

182・まるで奇跡のように

「オーディン様!」


「よくご無事で……!」


 神殿の治療室で、若い2人の男女がオーディンさんに抱き着き、涙を流していた。


 彼も泣き笑いで、


「ケルン、マルティーナ。お前たちもよく生きててくれたね」


 ガシッ


 と、強く抱き返す。


 若い男女は、オーディンさんの仲間の2人だ。


 森を抜けた僕らは、更に1日かけて1番近い街まで移動し、数日前に救助された2人とオーディンさんは再会を果たしたんだ。


 僕らは、その様子を部屋の隅で見ている。


(よかったな……)


 そう思う。


 でも、ケルンさんは右腕がなく、マルティーナさんも足を引き摺って支えの杖を持っていた。


 逃走の代償だ。


 オーディンさんが『高濃度汚染体』との戦闘から必死に逃がしたあとも、2人は『魔瘴気の満ちる黒き森』の魔物たちに襲われてしまい、これほどの深手を負ってしまったんだ。


 その瀕死の状態で、この街へ。


 オーディンさんの救援を求めるため、必死に辿り着いたのである。


(……っ)


 その思いを考えると、涙が出そう。


 もらい泣きする僕の髪を、クレフィーンお母様は優しい表情で撫でてくれる。


 やがて、2人は、


「黒獅子公、本当にありがとうございました!」


「よく、オーディン様をお助け下さって……!」


 と、僕らの方に――より正確には、煌金級冒険者のアルタミナ・ローゼンへと頭を下げてくる。


 彼女は笑い、手を振る。


「どういたしまして。ま、気にしないで」


「はっ。しかし……」


「アルタミナ様はどのようにしてオーディン様の危機をお知りに……? 私たちが街に救援を求めてから、まだ1週間ほどなのに、なぜここにいらっしゃるのか……」


「あはは、うん、そうだね」


 2人の疑問に、黒髪の美女は明るく笑う。


 で、笑顔の質が変わる。


 ドキッ


 軽やかなものから、重く、圧力のある笑みに。


 ケルンさん、マルティーナさんも息を飲む。


 威圧の笑顔のまま、


「その件で、2人にも口裏合わせをお願いしたいんだ。私も、どうしても守りたい少年がいてね」


「ま、守りたい少年……?」


「く、口裏合わせですか?」


「そ。代償は、オーディンの命だったんだ。悪くないだろう?」


 と、言う。


 2人は顔を見合わせ、オーディンさんを見る。


 彼は頷く。


「俺からも頼むよ」


「はっ」


「オーディン様がお望みなら」


 2人も、即同意した。


(う~ん、カリスマ)


 仲間からのその信奉に近い求心力はさすがですね。 


 室内には今、僕らだけであり、神殿関係者の皆さんは再会の場に遠慮して席を外してくれている。


 そして、アルタミナさんは口裏合わせの内容を語る。


 まず、僕らがここに来た理由は、偶然であること。


 僕らが頼まれた『腐肉』の処理が終わり、その時、ふとオーディンさんが気になり、アルタミナさんの提案で『魔瘴気の満ちる黒き森』方面へと向かったこと。


 到着したこの街の門前で、僕らは2人を発見し事情を聞いたこと。


 そして、アルタミナさんと僕らは、森へオーディンさんの救助に向かったこと。


 2人は瀕死だったので、それが夢か現かわからなかったこと。


 なので、街の関係者に救援を求めた時、アルタミナさんのことを言い忘れてしまったこと。


 そして今日、それが現実だったと知ったこと。


 以上が、なぜ、アルタミナさんがオーディンさんを助けに来たのか、こんなに早く救助に動けたのか、その理由の全てとしてもらう――と、黒獅子公はお願いという形で脅迫した。


「いいよね?」


「は、はい」


「わかりました」


 2人は、コクコクと頷く。


(う、う~ん)


 結構、苦しい言い訳と思うけど、ま、仕方ないか。


 世間や冒険者ギルドなどから、僕の目の秘密を守り、面倒な事態を避け、平穏な生活を続けるためだから、僕の立場としても何も言えないんだ。


 オーディンさんも、


「すまない、俺からも頼む」


 と、頭を下げた。


 ケルンさん、マルティーナさんは慌てて「もちろんです!」と答えてくれた。


 黒獅子公のお姉さんも、満足そうに頷く。


 強引なやり方に、レイアさんは肩を竦め、クレフィーンさんも少し申し訳なさそうに微笑んでいる。


 と、オーディンさんが僕らを見る。


「今回は世話になったな」


「ううん。ま、貸しってことで、いつか返してもらうよ」


「ああ、わかった」


 アルタミナさんは軽く言い、オーディンさんは苦笑する。


 貸し……というには、本当に命懸けの救援だった。


 その事を感じさせないアルタミナさんの物言いに、オーディンさんも苦笑するしかなかったのだろう。


 彼の仲間の若い2人も頭を下げる。


 痛々しい姿。


(……う~ん)


 僕は少し考え、真眼で確認する。


 ヒィン


 あ……そうなんだ?


 なら、よかった。


 僕は安心しつつ、前に出た。


「シンイチ君?」


 クレフィーンさんが不思議そうに僕を呼ぶ。


 僕は微笑み、再び前を向くと、まずはレディファーストということでマルティーナさんの前に立つ。


 彼女が僕を見る。


 僕は両手を向け、


「失礼します」


「え?」


 声が聞こえた瞬間、


 ボワァンッ


 彼女の全身から虹色の炎が噴き出し、着ている白い治療服を内側から膨らませた。


 全員がギョッとする。


 そばにいたケルンさんが「おい!」と唯一の左手で僕の肩を掴んだ。


(わっ?)


 攻撃だと思われたらしい。


 けど、虹色の炎はすぐに収まり、そして、マルティーナさん自身は少し驚いた表情のあと、何かに気づいた顔になる。


 杖を外す。


「え……」


 ケルンさんが間抜けな声を漏らした。


 彼女は唖然とした表情で、1歩、2歩と室内を歩き、そして、立ち止まった。


「歩ける……足が、動く」


 と、呟いた。


 目を瞠っている。


 オーディンさんが驚いたように僕を見る。


「1日1回、どんな怪我も治せる古代魔法です。オーディンさんにも使ったでしょ?」


「あ……」


「まだ最近負った怪我だから、彼女の後遺症も治せたみたいです」


「…………」


「ケルンさんは、明日、治しますね」


 と、僕は笑った。


 ケルンさん本人は「え、あ……お、おう」と戸惑ったように答えた。


 多分、まだ実感してない。


 でも、明日には嫌でも実感してくれるでしょう。


 と、マルティーナさんが泣き出した。


「わ、私……動ける。これで、まだ冒険者でいられる……私、また冒険できるんだわ……っ!」


 大泣きである。


 お、おお……?


 大人のお姉さんが号泣し出し、僕、びっくり。


 オーディンさんが彼女を抱き締め、優しく宥めながら、僕の方を見る。


「シンイチ君……君は……」


「は、はい?」


「いや、何でもない。これ以上は何も言わない」


「…………」


「ただ、今後、もし俺の力が必要ならば、いつでも力を貸そう。『黄金剣鬼』の名と誇りにかけ、命に代えても君の恩に報いることを誓う」


 凄く真剣な表情だ。


(……お、大袈裟じゃない?)


 でも、断れる空気じゃないので、僕は「わ、わかりました」と頷いた。


 彼も、生真面目に頷く。


 困惑していると、


 クスクス


 背後から笑い声がした。


 振り返ると、アルタミナさん、レイアさん、クレフィーンさんが笑っている。


 3人で顔を見合わせ、


「全く、少年は困った子だね」


「本当よね」


「ですが、シンイチ君らしいです」


 なんて言う。


 黒髪の美女が伸びをして、


「ん~、仕方ない。私たちの出発は、明日以降に延長だね」


(あ……)


 し、しまったぁ。


 僕は慌てて「勝手なことして、すみません」と謝る。


 でも、3人とも怒ることなく、笑ってくれている。


 クレフィーンお母様の白い手が僕の髪を愛おしそうに撫で、前髪を払ったおでこにキスしてくれる。


(ほわっ?)


 目を丸くする僕に、



「――ふふっ、それでこそ、私の愛するシンイチ君ですよ」



 と、甘く笑ったんだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
真一的には何とかしてあげたかっただろうからねぇ・・・で、真眼から「不死霊の奇跡で治せる」的な事を教えてくれたから治療したって感じか。 自分を助けてくれただけでなく、滞在を一日延期してまで生き残った仲間…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ