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チートな真眼の少年は、異世界を満喫する! ~金髪幼女を助けたら、未亡人のママさん冒険者とも仲良くなりました♪~  作者: 月ノ宮マクラ


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181/188

181・勧誘

「――白き炎霊」



 お母様の美しい声が、静かに響いた。


 500年の時を隠れ、この森で生き延びた『邪竜の腐肉』は、その純白の炎に焼かれ、無数の触手を伸ばして身悶えながら消滅していく。


 最後の肉片も黒く砕け、消える。


 ヒィン



【邪竜の腐肉】


・現世より消滅している。




(うん)


 真眼でも確かめ、僕は息を吐く。


 終わった……。


 これでまた1つ、この世界でファナちゃんの将来を脅かす要因が減ったのだ。


(よかった)


 全員、ホッとした様子で。


 ガクッ


 その時、オーディンさんが突然、地面に片膝をつくように体勢を崩した。


(え?)


「オーディ!?」


 僕は驚き、アルタミナさんも少し慌てる。


 彼は片手を上げ、苦笑い。


「ああ、すまない。安心したら、少し力が抜けてしまってね。……この少年に傷は塞いでもらったが、さすがに体力は落ちてしまっていたからさ」


(あ……)


 なるほど。


 回復魔法は傷は治せても、失った体力は取り戻せないのか。


 つまり、オーディンさんは消耗した状態で、けれど、気合だけで身体を動かし、あのアン・ベリィと戦っていたということになる。


 う~ん、凄い根性。


(さすが、煌金級の冒険者ってことかな)


 その称号は伊達じゃないね。


 アルタミナさんも「そっか……」と、少し安心したように頷く。


 クレフィーンさんが荷物を漁り、携帯食料と水筒を取り出して彼に渡す。


「どうぞ」


「ああ、ありがとう、クレフィーンさん」


 彼は笑顔で、受け取る。


 お母様も柔らかく微笑む。


 美男美女の組み合わせ……凄くお似合いで、狭量な僕は少々複雑なお気持ちです。


(いかんいかん)


 僕は、首を振る。


 大人なお母様とお似合いになるためにも、僕も大人にならなければ……。


 と、レイアさんが、


「お似合いね、あの2人」


「…………」


「ふふ……冗談よ」


「くっ」


 か、からかわれた。


 赤面しつつ頬を膨らませていると、レイアさんも反省したのか、少し優しい口調でこんなことを言う。


「大丈夫よ」


「?」


「フィンは貴方にぞっこんよ。貴方のことしか見てないから」


「…………」


「ほら」


 促され、視線を向けると、クレフィーンさんがこちらを見ていた。


 目が合う。


 彼女は見ていたことを気づかれると、


「ぁ……」


 と、恥ずかしそうに頬を赤らめ、視線を彷徨わせると、それから僕に誤魔化すようにはにかんでくる。


(か、可愛い)


 熱が伝わり、僕も赤くなる。


 レイアさんは、


「ね? あんな表情を見せるのは、シンイチだけよ」


 と、笑う。


 そっか。


 僕も安心し、何だか誇らしい気持ちになる。


 と、そんな僕らの様子を見ていたオーディンさんは、少し目を丸くして意外そうな表情をしていた。


 同じ煌金級の美女に、


「アル? もしかして、彼女……」


「ん? ああ、うん。シンイチ君はフィンの恋人で婚約者なんだよ」


「……本当か?」


「うん」


「……そうか。彼女は年下好きだったのか」


「みたいだねぇ」


 唖然としている彼に、アルタミナさんはクスクス笑う。


 でも、最初は驚いてはいたけれど、オーディンさんに呆れたような様子はなく、むしろ、すぐに祝福するような優しい眼差しになっていた。


(ど、どもども)


 何か照れ臭い。


 そして、こんないい人に、さっきは嫉妬してごめんなさい。


 僕も、オーディンさんの気持ちがアルタミナさんに届くよう祈ってますよ。


 なんて思いながら、


 チラッ


 もう1度、隣のクレフィーンさんを見る。


 彼女も微笑む。


(うん)


 そこに彼女がいる。


 お互い、無事、生きている。


 その事実を噛み締めながら、僕は、ようやく命懸けの戦いが終わったのを実感していた。



 ◇◇◇◇◇◇◇



 ヒィン


(おや?)


 真眼で視ると、約9日間、腐肉に捕らえられていたオーディンさんは、呪詛の浸食も受けていた。


 肉体の不調は、その影響もあるらしい。


 要は、『高濃度汚染体』と呼ばれる存在への肉体の変質……その過程にあるのだとか。


 僕は、慌てて報告。


「仕方ないなぁ」


 と、アルタミナさんが『浄化魔法』を使う。


 口ではそう言いつつも、実際に魔法を使う時には、全身を浄化できるよう手をかざしながら彼の周囲を回り、丁寧に作業していたよ。


(ふふ、素直じゃないね)


 同じ立場と責任を負い、互いの苦労をわかっている。


 まさに戦友って感じの2人だ。


 その関係性は、きっとクレフィーンさんやレイアさんとも違うものなのだろう。


 やがて、浄化も完了。


 真眼でもそのことを確かめると、


「ありがとう、アル」


「はいはい、どういたしまして」


 オーディンさんは笑ってお礼を言い、アルタミナさんは澄まして答える。


 やがて、僕らはこの場から撤収することにし、再び霧の森を歩きだした。


 歩きながら、2人の煌金級は会話をする。


「――ああ、あの『高濃度汚染体』の女に、霧の中、強襲をかけられてね。陣形を崩されて、何とか立て直そうとしたんだが、間に合わず、ベンとエミリアはやられてしまったよ」


「そっか」


「何とか、ケルンとマルティーナは戦場から逃がしたんだが……どうなったか、知っているか?」


「ああ、うん。2人は生きてるよ」


「っ……そうか!」


「近くの街で保護されてる。けど、負傷が酷く、もう冒険者としては……ね」


「…………」


「でも、命は助かったよ」


「……そう、か」


 オーディンさんは目を閉じ、そして、何かを飲み込むように頷いた。


 共に戦ってきた仲間。


 その現状を知り、彼は見えない痛みに耐えているようだった。


 もし仮に、


(僕の仲間であるクレフィーンさんたちを失ったら、どう感じるだろう……?)


 あ、無理だ。


 想像するだけで苦しい。


 息が吸えない。


 せめて、命が助かれば……と思うけど、正直、実際にその時が来たらどう思えるかわからない。


 冒険者には覚悟がいる。


 それは自分だけでなく、仲間の死への覚悟もいるのだろう。


(……うん)


 もしかして、僕、冒険者、向いてないかも?


 今更、そう思う僕だった。


 と、その時、


 ギュッ


 隣を歩くクレフィーンさんが手を握ってくる。


 思ったより強い指の力。


 ……ひょっとしたら、彼女も同じような想像をして、色々怖くなったのかな?


 僕も、強めに握り返す。


 そのまま、お互いの温もりを感じながら歩いた。


 一方で、オーディンさんは息を吐き、


「じゃあ、アルタミナたちは街に着いた2人から事情を聞き、救援に来てくれたんだな。改めて感謝するよ、ありがとう」


「あ、うん。感謝は受け取るよ。でも――」


「? でも?」


「実は私たち、その2人に事情を聞いてから来た訳じゃないんだよね」


「……は?」


 彼は、緑色の目を丸くする。


 黒髪の獣人さんは細長い尻尾を揺らしながら、楽しげに言う。


「悪いけど、その2人が近くの街に辿り着いたのは、私たちが『魔瘴気の満ちる黒き森』へと向かったあとなんだよね」


「??? どういうことだ?」


「彼だよ」


「彼?」


 煌金級2人の視線が、僕を向く。


(お?)


 少しドキッ。


 アルタミナさんは笑いながら、得意げに暴露する。



「――彼の目は特殊でね。それでオーディの危機が視えて、私たちもすぐ駆けつけることにしたんだよ。だから、オーディを助けるのもギリギリ間に合ったのさ」



(あらら)


 言っちゃったよ。


 いや、いいんだけどね?


 きっとアルタミナさんが信頼して、話して大丈夫だと思ってる人だから話したんだろうし。


 彼は、目を瞬く。


 僕を見て、


「そうなのかい?」


「えっと、はい」


 仕方ないので、僕も頷く。


 黒髪の美女は、顔の前に片手を上げ、


「ごめんね、話しちゃった」


「あ、いえ」


「でも、オーディなら大丈夫だからさ。それに、色々口裏合わせてもらうためにも、ある程度、事情は話さないとだし……」


(あ、そっか)


 なぜ、僕らがここにいるのか。


 冒険者ギルドや関係者に説明する際、秘術の目を内緒にするなら、オーディンさんにも話を合わせてもらわないと駄目なのか。


 なるほどね~。


 先のこと、全然考えてなかったよ。


 やはり、彼女は大人だね。


 オーディンさんも頷き、


「そうか。本当の意味での恩人は、君なんだね」


「あ、えと」


「ありがとう、少年」


「い、いえ」


「もし君がその目を内緒にしたいというのなら、俺も口が裂けても他言しないと誓うよ。だから、安心して欲しい」


 と、笑った。


 見た瞬間、


(あ……信じられる)


 そう感じる笑顔だった。


 オーディン・レクスさんは、多分、冒険者としての実力があるだけでなく、1人の人間としても立派な人格者なのだろう。


 何か、そうわかった。


(うん、アルタミナさんが信じる訳だ)


 クレフィーンさん、レイアさんも彼女が暴露した時、口を挟まなかったし、きっと同じように信頼してたからなんだろうね。


 僕も安心して、


「はい」


 と、微笑んだんだ。


 その後も、僕らは霧の中を歩いていく。


 この悪い視界の中、迷いなく、そして、一切の魔物との遭遇もなく先導する僕に、オーディンさんは改めて感心した様子だった。


「本当に凄いな、この少年」


「でしょ?」


「なるほど。アルが、門戸を閉ざした『月輪の花』クランへの加入を許す訳だ」


「へへ、自慢の新人だよ」


 と、得意げな黒髪の獣人さん。


 細長い尻尾もピンと立っている。


 青髪の青年は苦笑して、


「な? 俺のクランに引き抜いてもいいか?」


 と、言った。


(へ……?)


 僕は目が点になる。


 同じクランの美女3人も、同じ表情だった。


 すぐに、僕の所属するクラン長が慌てて答える。


「だ、駄目だよ!」


「金銭面なら負けない金額を出せると思うが?」


「金額の問題じゃないね。それに、こっちにはフィンがいるんだ。シンイチ君はもうフィンの魅惑の肉体の虜でね。今更、普通の女じゃ満足できないよ」


「ほぉ~?」


(ちょ……何言ってんのっ!?)


 僕、マジ、赤面、恥ずかしい。


 クレフィーンお母様も「ア、アル!」と焦ったように叫ぶ。


 レイアさんは額に白い指を当て、首を振る。


 アルタミナさんは「あ……」と呟き、


「あはは、ごめん」


 と、笑って誤魔化した。


 こ、この馬鹿獅子のお姉さんが~っ。


 僕とクレフィーンさんは真っ赤な顔でアルタミナさんを一緒に睨み、オーディンさんは苦笑している。


 そして、


「シンイチ君だっけ」


「あ、は、はい」


「こんなクラン長だけど、大丈夫かな? 何なら、クレフィーンさんと一緒にうちに来てもいいんだぞ?」


「いえ、大丈夫です」


 その冗談交じりの勧誘に、僕は断りを入れる。


 1度、深呼吸。


 それから、言う。



「――僕は、クレフィーンさんが1番好きですが、アルタミナさんもレイアさんも大好きなので、『月輪の花』クランでがんばります」



 4人の大人は目を丸くした。


 すぐに、


「シンイチ君……」


 と、黒髪のクラン長が金色の瞳を潤ませる。


 赤毛の美女も「馬鹿ね」と肩を竦めながらもどこか嬉しそうな表情で、クレフィーンさんも穏やかに微笑み、長い金髪を揺らしながら頷いた。


 そんな僕ら4人を『黄金剣鬼』と呼ばれる男の人は、ゆっくりと眺める。


 大きく頷き、


「そうか、残念だ」


 と、全然、残念そうじゃない笑顔で答えた。


 …………。


 それから2日間、僕らは白濁した森の世界を歩き続ける。


 やがて、その2日目の午後、特に大きな問題もなく、僕ら5人は無事、『魔瘴気の満ちる黒き森』の外に抜けることができたんだ。

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― 新着の感想 ―
冒険者も信用商売だからねぇ・・・オーディンは話の分かる人だし、助けられた借りを返す意味でも内緒にしてくれたんだろうな。この辺りがしっかりしてなければあそこまで上り詰めないし、ギルドからも信頼されないよ…
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