表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
チートな真眼の少年は、異世界を満喫する! ~金髪幼女を助けたら、未亡人のママさん冒険者とも仲良くなりました♪~  作者: 月ノ宮マクラ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

177/188

177・白濁の世界

 捕らえられたオーディンさんまでは、約60キロ離れている。


 猶予は、2日間。


 戦闘時間も考慮すると、


「1日目で4~5万メードは進みたいな」


 と、アルタミナさんは歩きながら、僕らに話した。


 約40~50キロの移動。


 平地なら問題ないかもしれない。


 けど、起伏が激しく、障害物も多く、魔物も生息し、霧で視界が遮られる森の移動だと考えると、例え身体強化魔法があっても中々の強行軍である。


(でも、やらないと)


 じゃないと、救助が間に合わない。


 そのためには、とにかく最短、最速のルートを選ぶしかない訳で、


 ポン


「頼んだよ、少年」


 と、彼女は僕の背を叩き、笑った。


(あ、はい)


 そのルート選びは、秘術の目を持つ僕の担当ですね。


 責任重大だ。


 僕は深呼吸し、真眼を発動する。


「――こっちです」


 視えた文字に従い、真っ白な霧の中に突入していく。


 彼女たちも僕を信頼してくれ、僕の指示通りに、素直に従って進んでくれる……うん、地味に嬉しい。


 草を分け、枝を払い、森を進む。


 しかし、


(本当、視界が悪いな……)


 視認距離は、多分、10メートルもない気がする。


 手を伸ばす。


 ほら、指先が白く霞んでる。


 位置把握魔法が必須だと言われる訳だ。


 真眼がなかったら、自分がどこにいるか、どの方向に進んでいるかもわからず、同じ場所をグルグル回っていたかもしれない。


 最悪、餓死するまで森から出られなかったり……?


 おお、怖い。


 僕は、安全を保障する文字を見ながら歩く。


 しばらく進むと、


「シンイチ」


 と、レイアさんに声をかけられた。


(ん?)


 彼女は周囲を見回しながら、


「私の体感だけれど、大きく曲がりながら進んでいないかしら? 本当に大丈夫なの?」


「え?」


 僕は驚く。


 アルタミナさんも頷き、


「実は、私もそんな気がしてた」


(え? え?)


 アルタミナさんも……?


 クレフィーンさんは何も言わないけれど、表情的に何となく、2人と同じことを感じているように思える。


 心配そうな視線を向けられ、僕は慌てて真眼君に訊ねる。


(し、真眼君? どういうこと?)


 すると、


 ヒィン




【大きく曲がって進む理由】


・進路上に、魔物がいる。


・戦闘を行う方が時間消費するため、現在、大きく迂回路を取っている。


・最短ルートなので、安心せよ。




(あ、なるほど)


 僕は安心し、3人にも伝える。


 彼女たちも納得した表情で、


「そっか」


「あら、ごめんなさい。余計な心配だったわね」


 と、言ってくれた。


 クレフィーンさんは微笑みながら、「シンイチ君を信じましょう」と友人たちに言う。


 美女2人も頷く。


 いや、僕も不安になったしね。


 こういう確認も大事だし、これらの積み重ねでより信頼が築かれていくのだろう。


 なので、


(疑ってごめんよ、真眼君)


 と、僕も心の中で謝る。


 ヒィン




【問題なし】


・気にする必要なし。


・今後、桐山真一がより安心、納得できる情報も表示すると約束する。




(あは)


 真眼君、優しい。


 僕は1度、目を閉じ、まぶたの上から自分の目を撫でてしまった。



 ◇◇◇◇◇◇◇



 白く濁った森を歩く。


 時折、


 ズゥン ズズゥン


 と、巨大な何かが歩く足音が重く聞こえてきたりする。


(何だ……?)


 と、身構える。


 即、真眼で確認。


 すると、この森に生息する竜種の移動音らしい。


 この『魔瘴気の満ちる黒き森』には通常の魔物だけでなく、無数の竜種も生息しており、中には30~40メートル級の竜もいるのだとか。


(でかぁ……)


 マジ、怪獣。


 実際、霧の向こう、森の木々の上を黒い影が動いていたりするのも目撃した。


 他の3人も、結構、緊張した表情をしてたよ。


 忘れてはいけない。


 ここは、アークレイン王国にある魔境の1つ。


 人間なんて簡単に死んでしまう環境なんだ。


(――気を引き締めて行こう)


 と、自分を戒める。


 幸い、事前に真眼君が安全なルートを教えてくれているので、そんな怪獣との直接的な遭遇もなく、移動は順調に行われていた。


 ただ、負担はいつも以上だった。


 特に精神面。


 人間は、視力に頼る生き物だ。


 霧のせいで視界は常に悪く、けれど、中途半端に周囲が見えるせいで無意識にしっかり見ようとしてしまい、その分のストレスがかかってしまう。


 目も疲れるし、心も疲れる。


 そして、霧は動く。


 こちらが動いていない方向に景色が揺れるものだから、平衡感覚もおかしくなる。


 もちろん、方向感覚も。


 東西南北、自分がどの方向に進んでいるのか、全くわからない。


 前に進んでいるのかも、不安になるんだ。


(……正直、しんどい)


 ただ歩いているだけなのに、感じる疲労は大きかった。


 無心だ。


 無心になろう。


 無心になって、真眼君の文字だけを読むんだ。


 そう、自分に言い聞かせる。


 白く濁って見え辛い木の枝や根に何度も引っ掛かりながら、僕は機械のように足を動かしていく。


 やがて、白い霧に薄く墨が混じったような黒さが生まれる。


 夜が近いのだ。


 薄闇の中、かすかな夕日の赤さも混じる。


(そろそろ限界かな?)


 真っ暗な森を歩くのは、さすがに厳しいし、もう野営場所を探さないといけないだろう。


 そう思いながら、しばらく進むと、


 ヒィン




【目標まで17キロ地点】


・ここなら安全である。


・本日は、ここで野営せよ。




 との表示。


 白濁した霧の中で目を凝らせば、目の前に巨大な倒木があった。


 太さは、僕の身長ぐらいある。


 見れば、地面と接する部分に大きな洞があり、幹の内側に空間ができていた。


(おお……)


 ここなら、4人は入れるかも。


 僕はクレフィーンさんたちにも、秘術の目で確認した所、この倒木が森の中では安全で野営に適している場所らしいと伝えた。


 3人も納得してくれる。


 狭い洞を1人ずつ、地面に膝をつきながら潜り、奥の空間へと入っていく。


 持っていたランタンを掲げる。


(うん)


 4人で入っても、充分な広さがある。


 安堵の息をこぼし、僕らは各々、洞の中で座る。


 良い意味で、緊張も緩む。


 一応、洞の入り口は枯葉などで隠し、外から魔物に見つからないようにしたあと、全員で携帯食料をかじり、水分補給も行った。


 軽く談笑や見張りの順番などを話したあとは、即、就寝。


 全員、体力の回復に努めることにした。


 狭いので、身を丸めて眠る。


 すると、


「そこは窮屈でしょう? さぁ、もっとこちらへ」


 ギュウッ


(わ?)


 クレフィーンさんが僕を抱き寄せた。


 なるべく密着し、全員のスペースを作ろうとしてくれる。


 ムニッ


 鎧越しのお胸様の感触……うへへ。


 お母様の甘やかな匂いもする。


 こんな時なのに、少しよこしまな欲望も感じてしまう。


 でも、それも一瞬。


 クレフィーンさんの抱き枕となった僕は、その体温に安心したのか、すぐに意識を失ってしまった。


 きっと疲れもあったのかもしれない。


 気づけば、翌朝で、


(う……イテテ?)


 軽い頭痛と共に、目が覚める。


 全員がほぼ同じぐらいのタイミングで起きたんだけど、3人も表情を少ししかめている。


 黒髪の美女が額を押さえながら、


「多分、瘴気の影響かな」


 と、分析し、浄化の魔法を全員にかけてくれる。


 彼女の手が、水色と白の混じった光を灯し、僕らの頭を撫でる。


(……あ)


 頭痛が消え、本当に楽になった。


 浄化魔法、凄い。


 そして、瘴気、怖い。


 こんなに人体に悪影響を与える厄介なものだったのか……。


 ともあれ、夜間、魔物の襲撃などを受けることもなく、僕らは無事、一夜を明かすことができたのは良かった。


 軽く朝食を摂取し、洞の外へ。


 入り口を隠した枯葉を崩し、1人ずつ順番に外へ出ると、


(……白い)


 景色は変わらず。


 若干、気が滅入る。


 いや、こんな気持ちじゃいけない。


 今日は、あと17キロ歩き、そして、『高濃度汚染体』との戦闘が控えているのだ。


(うん、気合を入れろ、真一)


 パン


 自分の頬を叩く。


 突然の行為に、3人は驚いた顔をする。


 僕は言う。


「必ず、オーディンさんを助けましょうね」


 美女全員が目を見開く。


 やがて、その表情が柔らかに緩む。


「うん、そうだね」


「はい」


「ええ、当然よ」


 と、3人も微笑みながら頷いてくれた。


 僕も笑い、頷き返す。


 やがて、各種魔法などをかけ直し、そして、僕らは再び白く濁った森の中を歩き出す。


 真眼を頼り、慎重に。


 移動中、何度か、


 ズシ ズシン


 霧の奥から巨大な黒い影が接近し、近くの大樹の陰に身を潜め、やり過ごしたりもした。


 濃霧のおかげか、向こうも僕らに気づかない。


(ふぅ)


 真眼で先行して発見できる分、回避も容易い。


 森の奥からは、時折、獣や魔物の鳴き声、それらが移動しているのか、木々の枝が折れる音が響いてくる。


 視界はない。


 それでも、多くの生物の気配は感じる。


 それらと遭遇しないよう、注意しながら進む。


 やがて、半日後。


 突然、霧が薄れ、木々の途切れた草地の広がる空間に辿り着く。



 ――僕らはそこで、黒い腐肉に半身をめり込ませたオーディンさんと、その近くにいた『高濃度汚染体』の女を発見した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
真眼君のお陰で被害を最小限に抑えつつ無事に発見。状況は良いが、間に合わせる事は出来るのか・・・
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ