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チートな真眼の少年は、異世界を満喫する! ~金髪幼女を助けたら、未亡人のママさん冒険者とも仲良くなりました♪~  作者: 月ノ宮マクラ


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115/127

115・赤砂の怪物

(――生きた電柱だね)


 ドン ドン


 狙撃しながら、そう思った。


 うん、サンドウォームのことだよ。


 体長10メートルの巨体で大蛇のように蠢きながら、赤い砂の海面を何度も出たり潜ったりしている。


 見た目は、確かに蚯蚓ミミズ


 眼球はない。


 でも、頭部には円形の口があり、内側には鋭く細かい牙がびっしりだ。


 あと、外皮。


 伸縮性はあるけど、鮫肌みたいにザラザラしてる。


 蚯蚓みたいな粘液はない。


 そして、特に頭部は砂を潜って進むからか、硬い岩のような外皮だった。



 ――それが、300匹以上。



 う~ん、気持ち悪い。


 安全な大岩の上にいても、白と黒の鎧の2人の美女に群がる姿は恐ろしいし、何となく生理的な嫌悪を感じるよ……。


 バシュッ


 僕の隣では、レイアさんが大弓を射る。


 重力魔法で、威力増加。


 軌道も修正。


 そのため、


 ドパン


 命中精度も高く、また1匹の頭部を粉砕した。


(さすが!)


 僕も負けてられない。


 魔法陣の光る右手を伸ばし、


 ヒィン




【ここを撃て】




 真眼の文字に従い、


 ドン


 と、魔力を抑えた『土霊の岩槍』を射出する。


 何もない砂。


 でも、直後、砂の中から新たな1匹が姿を現し、小さな岩槍でバツンと頭部を貫通されてしまう。


 ビクンと跳ね、力なく砂に伏せる。


 体液が広がり、砂に吸われていく。


 南無南無。


 そうして、僕らは狙撃を続ける。


 砂煙は、結構、舞う。


 視界は悪いけど、僕は真眼で関係ないし、レイアさんも探知魔法で位置がわかるみたい。


 命中率は高いと思う。


 地上のアルタミナさん、クレフィーンさんも武器を揮う。


 ドキュッ


 ザキュン


 黒い戦斧が硬い頭部を砕けば、幅広の両刃剣が長く太い胴体を真っ二つに切断する。


 うん、強い。


 背中合わせで、安定感もある。


 僕らの狙撃が間に合わない時には、



「――白き炎霊」



 ボパァン


 と、金髪をなびかせたお母様の魔法が一網打尽にした。


 さすがだね。


 巨大蚯蚓の魔物の群れは、一方的にやられている。


 でも、


(逃げないね?)


 というか、


 ブチッ ビチチッ


 と、死んだ仲間の肉体に群がり、皆で捕食している。


 おお……共食い。


 確かに獲物の少ない砂漠で生きるには、これぐらい生存への厳しさが必要なのかもしれない。


 でも……。


 砂の上に、肉片と血飛沫が飛ぶ。


 …………。


(ん……)


 僕は感情を殺す。


 自分が機械になったつもりで、地上への狙撃を繰り返したんだ。



 ◇◇◇◇◇◇◇



 ――2時間が経過した。



 ドン


 僕は、黒い岩槍を放つ。


 現在も、まだサンドウォームの出現は続いている。


 隣のレイアさんも矢を放ち続け、矢筒の残りの本数も半分の100を切っていた。


(う……)


 クラッ


 眩暈がした。


 僕は即、魔力回復ポーションの瓶を開封し、中身を飲む。


 グビッ


 ん……おさまった。


 僕は息を吐く。


 足元には空瓶が6本転がっている。


 これで、7本目。


 1本で、だいたい10発分の魔力回復だ。


 できるだけ消費魔力を抑え、古代魔法を使っているけれど、やはり1発で仕留められない場合もある。


(でも、1400万円……)


 いや、今は考えまい。


 集中、集中。


 真眼の表示する数値は、




【サンドウォームの群れ】


・残り、133体。




 と、半数以下になっている。


 うむ、もう少し。


(よし!)


 気合を入れ直し、僕は右手を構える。


 と、その時、


 ズズゥン


「うわっ!?」


「きゃっ?」


 僕らの乗る奇岩が、大きく揺れた。


 な、何だ?


 まさか、地震……?


 でも、揺れはすぐ収まる。


 ただ、僕とレイアさんは狙撃を中断せざるを得ない。


 結構、大きい揺れで、30メートルの高さから落ちなくて、よかった……と思う。


 と、


 ゴゴォン


(わっ?)


 離れた隣の奇岩が揺れ、崩れた。


 大きな岩が砂の海面に、ドン、ドン……と落ち、盛大な砂煙を上げている。


 何だ何だ?


 そして、見た。


 ズル……ッ


「あ……」


 巨大な……あまりに巨大なサンドウォームが奇岩を擦るように、砂の海面を泳ぎ、また海中に沈んでいくのを……。


 何、あの大きさ?


 え、怪獣?


 体長30~40メートルぐらいあったぞ。


 僕は唖然。


 赤毛の美女も目撃したのか、驚きの表情だった。


 ヒィン


 真眼君が発動する。




【サンドウォームの群れのボス】


・体長37メートル。


・突然変異の個体。


・異常に発達した外皮は、通常の刃を受け付けず、その牙は岩をも砕く。


・戦闘力、580。




(何と……)


 そんな特殊個体がいるなんて。


 驚く僕の眼前で、巨大なサンドウォームは砂の海面をゆっくり回頭し、進路を変える。


 あ……。


(いけない!)


 慌てて、地上を見る。


 クレフィーンさんたち2人も、目を見開いていた。


 ザザザッ


 砂の盛り上がりが、2人に迫る。


「クレフィーンさん! アルタミナさん!」


 思わず、叫ぶ。


 レイアさんは大弓を撃つけど、


 ザスッ


 あの巨体だと、爪楊枝が刺さったぐらいの感じでダメージは見られない。


 地上の2人は、逃げ出す。


 近くの奇岩の上へ。 


 でも、


 ゴガァン


 その奇岩を砕き、巨大サンドウォームは大口を開く。


 大量の砂と仲間のサンドウォームも丸吞みにして、クレフィーンさんたちを喰らおうとし、


 ボパァアン


 白い炎が、その巨大な口内を焼いた。


 クレフィーンさんの魔法!


 突然の炎に驚いたように、奴は身をよじる。


 ドパァン


 2人の横の砂の海面に巨体が落ち、大量の砂が舞う。


 あ、危ない。


 何とか、逃れた。


 でも、巨大サンドウォームは今の炎に驚いただけで、ダメージはないように見える。


 2回目も上手くいくかわからない。


 どうする?


 どうすれば……?


(――真眼君)


 困った時の真眼頼みで、僕は問う。


 けれど、




【問題なし】


・今は何もする必要はない。


・座して待て。




 との表示。


(え?)


 僕は驚く。


 けど、その間にも、巨大サンドウォームは旋回して、再び2人に迫っていく。


 あ、あ。


 お母様も青い顔。


(クレフィーンさん……!)


 僕は焦り……でも、もう1人の黒髪の美女が落ち着いているのに気づく。


 え?


 アルタミナさん?


 彼女は荷物から、黒い大剣を取り出した。


 あ……。



 ――青き落雷の大剣。



 巨大な黒い岩を削り出したような大剣を、彼女はゆっくりと上段に構える。


 パチッ


 表面に青い放電が。


 パチチ……ッ


 それは数を増し、


 バチバチ パチィィン


 やがて、凄まじい雷となって、黒い大剣にまとわりつく。


(おお……)


 遠い2人の顔が、青い雷光に輝く。


 レイアさんも目を見開く。


 まるで明るい炎に蛾が吸い寄せられるように『黒獅子公』の大剣が放つ青い雷光へと、巨大サンドウォームは突進していった。


 僕らは見守る。


 それしかできない。


 そして、3秒後、


 ヒュッ


 前に踏み込み、『黒獅子公』が大剣を振り下ろした。


 正面には、巨躯の怪獣。


 その両者の間を、物凄く太い青い雷の輝きが繋ぎ、巨大サンドウォームの全身が青く発光して見えた。


 ド、ドォオオン


 重い落雷の音は、遅れて聞こえた。


(……っ)


 み、耳が……っ。


 鼓膜が痺れた。


 下っ腹にも響き、全身が震える。


 反射的に薄めていた目を開き、


(あ……)


 ジュゥゥ……


 眼下の赤い砂の海には、黒焦げとなり、体表から黒煙を上げる巨大サンドウォームの姿があった。


 動かない。


 遠いクレフィーンさんも驚きの表情で。


 アルタミナさんは感心したように「ひゅう」と口笛を吹いている。


 ヒィン




【サンドウォームの群れのボス】


・死亡している。




(……凄い)


 まさか、1撃とは。


 僕の心の中は、驚愕と唖然が半々だ。


 さすが、『黒騎士ジオ・クレイアード』が所持していた500年前の魔法武具である。


 その魔法の威力は、本物の落雷以上の凄まじいものだった。


 隣の赤毛のエルフさんも目を瞠っている。


 でも、仲間の無事には、ホッとした様子で。


 うん、僕も同じ気持ちだ。


 ふと見れば、黒焦げの巨大な死体には、残ったサンドウォームの群れが一斉に群がり、その死肉を貪り喰っている。


 大半はもう、囮の2人には見向きもしない。


(あはは……)


 僕は苦笑。


 隣のレイアさんと顔を見合わせ、頷き合う。


 そして、僕は右手を、レイアさんは大弓の矢を地上の砂漠へと構え、


 ドン バシュッ


 空気を震わせ、黒い岩槍と巨大な矢を放つ。


 砂上にいる2人の美女たちも、自分たちの武器を揮い出した。


 …………。


 …………。


 …………。


 やがて、約1時間後、僕らの身体強化魔法が切れる直前に、300匹を超えるサンドウォームの群れの駆除は無事、終わりを迎えたのである。

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― 新着の感想 ―
巨大サンドワームの出現には驚いたけど、無事に討伐完了。このまま何事もなく帰還してクエストクリア・・・かな?
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