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チートな真眼の少年は、異世界を満喫する! ~金髪幼女を助けたら、未亡人のママさん冒険者とも仲良くなりました♪~  作者: 月ノ宮マクラ


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114/126

114・ザ・狙撃作戦

 目の前に、赤砂の砂漠が広がっている。


 雄大な景色。


 風が吹き抜けると、赤い砂が舞いながら砂の海面に波紋が流れていくのが見えていた。


 そして、無数の奇岩。


 大小、形も様々で。


 大きいものは、30メートル以上の高さがある。


 遠くから見ると、歪な姿の巨大生物が無数に固まっているみたいに思える。


 そんな場所で、


 ザッ


 僕らは、大亀から降りた。


 全員、武装を整え、身体強化魔法も発動済みである。


(ん……)


 暑さ対策に、耐熱魔法も使用し、身にまとう装備品には冷却魔法も行っている。


 水分補給も、事前にばっちりだ。


 アルタミナさんは、


「ありがとう。じゃあ、5時間後に迎えに来て。もし、この場所に誰もいなかったら、私たちは『全滅した』とギルドに報告してくれるかな」


 と、御者さんに伝える。


 御者さんは緊張した面持ちで頷く。


 そして、


 ザス ザス


 僕らを運んでくれた大亀は、砂漠を遠ざかっていった。


 4人で、それを見送る。


 広大な砂漠に、僕らだけが取り残された。


 ドキドキ


 少し緊張してきたよ。


 1度、深呼吸。


 熱い空気が肺に流れる。


 と、黒髪のクラン長が、僕らを振り返る。


「よし、じゃあ始めようか」


「はい」


「ええ」


「そうね」


 僕は神妙に頷く。


 そして、僕ら4人は、事前の打ち合わせ通りに動き始めた。



 ◇◇◇◇◇◇◇



 ――少し時間を戻そう。



 大亀での移動中、


「今回の作戦を説明するよ」


 と、アルタミナさんに説明を受けた。


 まず最初に、魔物の説明。


 討伐対象は、サンドウォーム。


 この魔物は、


「簡単に言うと、肉食の巨大蚯蚓(ミミズ)だね」


「蚯蚓……」


「うん。幼生体は体長1~2メードぐらい。でも、成体になると10メードになるんだ」


「……大きいですね」


「そうだね。で、サンドウォームは名前通り、砂の中で生息しているんだ。砂漠を移動する獲物の振動や魔力を察知して、足元の砂の中から襲ってくる」


「…………」


 怖っ。


 僕は思わず、砂漠の海を見てしまう。


 黒髪の美女は、話を続ける。


「でね?」


「…………」


「今回、それが交易路付近に群れで現れたんだよ」


「群れ?」


「そう。目撃情報からの推定は、約100~300匹。もしかしたら、もっといるかもね?」


「さ――」


 300匹!?


 僕は目と口を丸くしちゃう。


 アルタミナさんは「うん」と頷く。


 事前に知っていたのか、クレフィーンさん、レイアさんも神妙な表情だった。


 クラン長は言う。


「今回は、長丁場になるかな」


「……うん」


「でね、サンドウォームの出現ポイントは、結構、大きな岩が多いんだよ。それを利用しようと思うんだ」


「岩を利用、ですか?」


「そ」


 彼女は人差し指を、僕の額に向ける。


 トン


 軽く突き、



「――ずばり、狙撃さ」



 と、笑ったんだ。


 ……回想、終わり。


 現在、僕は赤毛のエルフさんと一緒に高さ30メードの奇岩の上にいる。


 彼女の古代魔法――『魔霊の力場』で体重を軽くして、身体強化した手足で奇岩の凸凹を跳躍しながら、よじ登ったんだ。


 ヒュオオ……


 強い風が吹く。


 レイアさんの豊かな赤毛の髪が、長くたなびく。


 その手には、大弓が。


 そして、巨大な矢もつがえられている。


 僕も、


 パアッ


 右手の甲に、魔法陣が光っている。


 すぐにでも『土霊の岩槍』を射出OKの状態だ。


 眼下を見る。


 奇岩のある赤い砂漠が見える。


 そこに、白と黒の人影がある――クレフィーンさんとアルタミナさんだ。


 サク サク


 2人は、砂漠を歩く。


 時々、剣や戦斧で砂を突き、近くの奇岩をガンガンと叩く。


 うん。



 ――2人は囮だ。



 作戦は単純だった。


 砂の上で『雪火剣聖』と『黒獅子公』が囮となり、現れたサンドウォームの群れを『僕』と『赤羽妖精』が上から狙撃していく。


 それだけ。


(ええ……?)


 聞いた時は、そう思った。


 だけど、レイアさんはそのために矢を200本用意しており、僕も『魔力回復ポーション』を10瓶も渡されてしまった。


(2000万円分のポーション……)


 責任と価格が恐ろしい。


 魔力消費を抑えて放てば、多分、150発ぐらいけるかな?


 合計で350発の狙撃。


 もし足りない場合は、地上の2人が殲滅してくれる。


 なので、


「ま、新人の貴方に多くは期待してないわ。だから、気楽にやりなさい」


 と、同席する赤毛の美女は言う。


 怜悧な美貌。


 口調も淡々と。


 でも、緊張した後輩への隠し切れない気遣いを感じる。


(……良い人だ)


 いや、良いエルフさんだ。


 僕も少しだけ落ち着き、「うん、わかりました」と答えた。


 彼女も眼下の砂漠を見たまま、頷く。


 そして、待機。


 30分ほど、奇岩の上で太陽に焼かれる。


 ジリジリ


 耐熱と冷却の魔法がなければ、耐えられなかったかもしれない。


 砂漠を見ながら、地道に耐える。


 と、その時だ。


 ヒィン


 赤砂の上に、文字が浮かぶ。




【サンドウォームの接近】


・西の方角から、砂の中を移動中。


・クレフィーン、アルタミナの両名の存在を補足し、捕食しようとしている。


・数は、327体。


・距離709メートル。




(――来た!)


 僕は慌てて、


「来ました! 西の方角、距離700メード、数は327体です!」


 と、隣の美女に伝える。


 レイアさんは頷く。


 赤毛の髪をなびかせながら、奇岩から身を乗り出す。


 眼下の2人に、


「アル! フィン!」


 と、叫ぶ。


 黒白の美女も、こちらを見る。


 レイアさんの白い指は、西の方角を指差した。


 2人も理解し、頷く。


 表情を引き締め、武器を構える。


 そして、僕らが狙撃し易いように、他の奇岩の少ない位置で待機した。


(うん、狙い易い)


 小さいけど、大事なこと。


 30メートルの高さから、西の砂漠を見る。


 変化は……ない。


 でも、真眼の表示する距離の数字は、確実に減っていく。


 砂の中、か。


 本当にわからないんだね。


 やがて、数字が300を切り、



「――探知魔法でも捉えたわ」



 と、赤羽妖精が呟く。


 奇岩上で、彼女は片膝で立ち、大弓を引き絞る。


 キュゥン


 弓と弦がしなる。


 矢の先端が、見えない獲物を追うように、何もない砂漠の上を差し続ける。


 そして、


(距離、0……!)


 と、文字表示。


 次の瞬間、


 ドパァン


 眼下の2人がいた周囲の砂が、爆発したみたいに赤く弾けたんだ。


 赤砂が舞う。


 その砂煙の中で、細長い黒い影が何本も見える。


 あれが、


(サンドウォーム!)


 ビチビチ


 赤い砂漠の海面を、無数の巨大な蚯蚓が暴れていた。


 でかい!


 激しい!


 砂煙で、2人の様子が見えない。


 と、僕の隣から、


「やるわよ、シンイチ!」


「あ、はい!」


 赤羽妖精の声で、我に返った。


 バチュン


 空気を震わせ、大弓の矢が放たれると、眼下に見える体長10メートルの巨大蚯蚓の1体が吹き飛んだ。


 僕も、右手を構える。


 手のひらを向け、左手で右手首を支える。


 パァア……ッ


 手の甲で、茶色の魔法陣が強く発光していく。


 そして、



「――土霊の岩槍!」



 ドンッ


 と、空気を震わせ、黒曜石みたいな岩の槍を射出したんだ。

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― 新着の感想 ―
5時間後を指定し、狙撃で仕留めるとの事だが上手くやれるのか・・・今回は狙撃で狙うとの事だが、純粋にシンイチの腕前が試されるな……レイアさんはああいっているが、どこまでやれるかな?
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