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チートな真眼の少年は、異世界を満喫する! ~金髪幼女を助けたら、未亡人のママさん冒険者とも仲良くなりました♪~  作者: 月ノ宮マクラ


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110・ご相談タイム

「邪竜……?」


「の、幼生体ですか?」


「本当なの?」


 僕の伝えた内容に、3人の美女は驚きの表情を浮かべる。


 無理もない。


 周囲は、人の多い平和な街中だ。


 突然、500年前に滅んだ邪竜が復活して、妊婦のお腹の胎児となっていた……なんて聞かされて、普通、誰が信じると思う?


 だけど、


 ジッ


 3人は僕を見つめる。


 そして、


「ごめんなさい、シンイチ君」


「え……?」


「まさか、今、そのようなことが起きていたなんて……気づかず、1人にしてしまい、本当にごめんなさい」


「え、あ、クレフィーンさん?」


 長い髪をこぼし頭を下げられ、僕は慌ててしまう。


 他の2人も険しい顔で、


「邪竜……か」


「こんな街中に姿を現すなんて、驚きね」


「…………」


 え、信じてくれてる?


 僕は驚き、3人の年上の美女を凝視してしまう。


 僕の表情に、お母様が気づく。


 微笑み、


「そんな嘘を、貴方がつく必要はないでしょう?」


「…………」


「何より、シンイチ君の表情を見ればわかります。貴方は、本当のことを語っていると」


「クレフィーンさん……」


「大丈夫、信じていますから」


 ギュッ


 白い両手で、僕の手を握ってくれる。


 う……。


(やめて、泣きそう)


 彼女の真っ直ぐな眼差しと手の温もりに、何だか胸が熱くなる。


 黒髪の獣人さんも頷き、


「あとね、君が怯えてるから」


「え?」


「本当に怖い目に遭ったんだって、さすがに私たちでもわかるから」


「…………」


 怯え……?


 驚く僕の頬を、


 ムニッ


(ほわっ?)


 赤毛エルフさんの指が摘んだ。


「顔色は悪いし、目の瞳孔は開き気味。手足の先も、さっきは震えていたわよ。自覚なかったの?」


「……ふ、ふぁい(は、はい)」


 僕は正直に頷く。


 怜悧な美貌のエルフさんは短く嘆息する。


 そして、


「そうね、貴方はまだ新人だものね」


 と、指を離し呟いた。


 …………。


 3人の美女は、お互いの顔を見る。


「詳しく聞くにしても、ここは少し人が多いかな」


「そうですね」


「そこの喫茶店に入りましょう。まだ、この時間なら人も少ないわ。――いいわね、シンイチ?」


「あ、う、うん」


 僕は頷く。


 あっという間に話は決まり、近くの店舗へ。


 店員さんに「いらっしゃいませ」と案内され、奥の人気のない4人席に腰を落ち着ける。


 店内には、僕ら以外に客は2人。


 離れたカウンター席に座る若いカップルのみだ。


 楽しげに談笑中。


 うん、この席の会話は聞こえないだろう。


 やがて、注文したアルタミナさんのコーヒー、僕とクレフィーンさんの紅茶、レイアさんのハーブ茶が届き、店員さんが離れていく。


 それを確認し、


 ゴクッ


 僕らは、飲み物で喉を湿らせた。


「じゃあ、もう少し詳しく教えてくれるかな?」


「あ、はい」


 黒髪の美女の促しに、僕は頷く。


 そして、話す。


 邪竜の幼生体のこと。


 妊婦は、高濃度汚染体で高い戦闘力を秘めていたこと。


 今回は警告目的だったこと。


 奴の最終的な目的は、恐らく『全生命の死』らしいこと。


「…………」


「…………」


「…………」


 3人は黙ったまま、最後まで聞いてくれる。


 やがて、



「――殺さないと駄目だね、ソイツ」



 と、黒獅子公が呟いた。


(――っ)


 ゾクッ


 背筋が震えた。


 静かな口調だったけど、だからこそ本気を感じる。

 

 金髪と赤毛の美女2人も戦士らしい顔つきのまま、同調するように頷いた。


「はい」


「当然ね」


 僕は呆ける。


 お母様は、


「その目的は、私たち生命ある者とは絶対に相容れません。ならば、その存在は間違いなく人類の害悪となる脅威です。戦う以外、道はないでしょう」


「…………」


「何より、シンイチ君を敵視している。その事実だけで許せません」


「……え」


 最後の言葉に、僕は目を丸くする。


(お母様?)


 彼女の表情は、やる気に満ちている。


 う、うん。


 ちょっと……いや、凄く嬉しいけど。


 でも、そんな理由で邪竜と戦う気になってくれていいのかしら、と思っちゃう。


 レイアさんは、少し冷静で、


「けれど、厄介ね」


「ん?」


「高濃度汚染体……相当、強いみたいだけど、『下僕の1人』という言い方をした以上、複数体いると考えるべきよ」


「あ……」


 僕もハッとする。


 黒騎士ジオ・クレイアードや黒い妊婦――どちらも竜と同じか、それ以上の強さ。


 え?


 それが、複数体……?


 黒獅子公も頷き、


「邪竜の幼生体が何らかの方法で、そういう高濃度汚染体を生み出せるのかな?」


「あるいは逆かしら」


「逆?」


「自然と生まれる汚染体の中から、時々、高濃度汚染体が生まれ、その凝縮された呪詛の中で『邪竜の幼生体』が生まれたとか」


「なるほど」


「後者の場合、面倒ね」


 と、赤羽妖精の美女は息を吐く。


(……うん)


 僕でもわかる。


 その場合、例え、今回の『邪竜の幼生体』を倒しても、また新しい2人目が生まれる可能性があるってことだ。


 頭、痛~い。


 クレフィーンさんも言う。


「今後の脅威を考えれば、優先すべきは『邪竜の幼生体』の殺害でしょう」


「あ、うん」


「その上で『高濃度汚染体』を排除していけば、今後の『邪竜』の発生脅威度も下がるのではないでしょうか?」


(なるほど)


 友人2人も頷く。


 と、黒髪の美女が僕を見る。


「シンイチ君」


「あ、はい」


「君の秘術の目で、今、存在する『高濃度汚染体』の数と位置はわからないかな?」


「あ……わかると思います」


 僕は頷いた。


 そうか。


(その手があったね)


 3人の美女が見つめる中、僕は自分の目に集中する。


 数秒後、


 ヒィン


 空中に、文字が浮かぶ。




【汚染体の数】


・アーク大陸に存在する『汚染体』は、人、動物、植物、昆虫、魔物など種を問わず、極軽度なものを含め、全部で数十万体に達している。


・ただし、極軽微なものは『非汚染体』と大差なく、自覚もない。


・一定以上の汚染になると、力と凶暴性が増していく。


・高濃度汚染体は、アーク大陸全土に13体いる。


・アークレイン王国内には、3体。


・また、現在誕生している『邪竜の幼生体』は1体のみである。




【高濃度汚染体の位置】


・王国の高濃度汚染体は『魔瘴気の満ちる黒き森』『暗黒大洞窟』『グレゴリオス大魔洞窟』に、各1体ずつ存在している。


・2体は人型、1体は魔物である。


・全員、戦闘力1000~2000である。




(おお……)


 こんな感じか。


 僕は急ぎ、3人にも伝える。


 すると、


「うわ……王国屈指の魔境ばかりだね」


「どれも、未踏破の区域が残された場所です。潜伏先も特定は難しそうですね」


 と、2人が言う。


 赤毛の美女も、


「そう、相手も馬鹿じゃないわね」


 と、吐息をこぼす。


 そっか。


 真眼なら、もっと詳しい潜伏場所もわかるかもしれない。


 でも、


(相手も移動するもんね)


 僕自身が『真眼』を使って追いかけない限り、姿を隠される可能性もあるんだ。


 困ったな……。


 4人で、しばらく黙り込んでしまう。


 やがて、


「ま、仕方ないか」


 と、黒獅子公が、長く黒い尻尾を揺らして呟いた。


(え?)


 僕らの視線が集まる中、


「もう、個人でどうこうできる範疇じゃないよ。ギルド長に報告して、国王と教皇に連絡してもらってあとの対処は任せよう」


「…………」


 え、それでいいの?


 僕は驚く。


 でも、友人2人も頷き、


「そうしましょう」


「ええ、そうするべきね」


 と、おっしゃる。


 僕の視線に、クレフィーンさんは微笑む。


「問題の対処には、知恵を出す者は多い方がいいですから。それに王国には頭の良い方も大勢います。もし私たちの力が必要ならば、そのような指示が出るでしょう。私たちは、その時に動けば良いのです」


「あ……うん」


「シンイチ君」


「ん?」


「1人で背負い過ぎては駄目ですよ?」


「え……」


「困った時は、皆で乗り切ればいいのです。――それは、シンイチ君が私に教えてくれたことですよ?」


「…………」


 教えたっけ?


 僕はお母様を見つめ、キョトンとしてしまう。


 3人は苦笑。


 アルタミナさんは、


「少年は、そういう所あるよね」


「まぁ、他人のことならわかっても、自分のことだと意外と見えないものよ」


 と、レイアさんまで言う。


 う、う~ん?


 よくわからないけど、


(まぁ、3人がそう言うなら、きっとそうした方が良いんだろうな)


 と、判断する。


 実際、僕らの手に余るし、王国の人たちに助けてもらうのが1番だ。


 事実、人類は皆、当事者の1人だし……。


 僕も「わかりました」と答える。


 3人も頷き、


「よし。じゃあ、今は自分たちの目の前のクエストに集中しよう」


 と、クラン長。


 僕らも同意し、やがて、飲み物を飲み干してから喫茶店をあとにする。


 王都の通りに出る。


(……ん)


 空は青く、快晴だ。


 明るくて、眩しいな。


 人々の行き交う景色は、平和そのもの。


 しばらく見つめる。


 と、


「シンイチ君、行くよ?」


「あ、はい」


 先を行く美女たちに呼ばれる。


 慌てて僕は頷き、止めていた足を動かすと、3人の背中を追いかけたんだ。

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― 新着の感想 ―
これに関しては報告して情報共有してもらい、特定してもらうしかないよね・・・アルタミナの方から説明しておけば動いてくれるとは思うが、場合によっては暗黒大洞窟等への調査の依頼が早まるかも・・・そこが不安。
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