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チートな真眼の少年は、異世界を満喫する! ~金髪幼女を助けたら、未亡人のママさん冒険者とも仲良くなりました♪~  作者: 月ノ宮マクラ


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107・名工の防具

 騒動のあと、僕らは再び通りを歩きだした。


 正直、警邏隊も出てくる大事になって、びっくり……でも、クレフィーンさんも無事だし、うん、よかったよね。


 殴られたのは少~し痛かったけど、すぐ治ったし問題なしだ。


 でも……1つ問題が。


(……お母様、目を合わせてくれないね?)


 なぜ?


 もしかして、まだ怒っていらっしゃる?


 つい反論したのがいけなかったのかしら……?


 話しかけると返事もしてくれるし、微笑みかけてもくれるんだけど、微妙に視線が合わないんだよね。


 いや、気のせいじゃなく。


 ふぇぇん……。


 さ、さっき、勇気出してがんばったんだけどな……?


(うう……)


 怒りが収まるまで、大人しくしてよぅ。


 ちなみに幼女の方は、


「♪♪♪」


 と、上機嫌で、今は僕と手を繋いでくれている。


 目が合うと、


 ニコッ


 少し照れたように笑う。


 い、癒される。


 お母様には叱られてしまったけれど、ファナちゃんには好評だった様子。


 うん、よかった。


 僕、ほっこり。


(今後も何かあったら、僕が絶対、2人を守ってみせるぞ……!)


 と、自分に誓う。


 で、そんな風に歩いていると、


 ヒィン


(お……)


 とある店舗前で、真眼が発動した。




【名工の防具専門店レーダ】


・防具の専門店。


・現代の名工ガレベス・ロイドの品を中心に、名のある鍛冶師の防具のみを販売している。


・値は張るが、品質は一級品。


・創業31年の老舗。




(ほほぅ?)


 防具専門店?


 しかも、名工の……?


 あと、『ガレベス・ロイド』の名前で、ふと思い出す。


 もしかして、


(クレタの町の防具店で見た、魔法反射の盾を作った人の名前……?)


 1番高い品だった。


 確か、380万円ぐらいだったっけ?


 防御力も他が30~40ぐらいの防具が多い中、小盾なのに45と結構高かった記憶がある。


(……うん)


 僕は内心、頷く。


 美人母娘を振り返り、


「あの、1度、この防具店に寄ってみてもいいですか?」


「ええ、構いませんよ」


「う、うん。お兄様が望む所に、ファナも行きたいから……」


 と、2人も了承してくれる。


 よかった。


 僕は「ありがとうございます」と笑う。


 母娘も微笑む。


 店舗の入り口には、守衛らしい人が立っている。


 う~む、


(さすが、お高い防具の店)


 僕らはその守衛さんに軽く会釈して、『名工の防具専門店レーダ』の店内へと入ったんだ。



 ◇◇◇◇◇◇◇



(へぇ……)


 防具店の中は、あまり広くなかった。


 学校の教室ぐらい?


 店員も、奥のカウンターに1人だけ。


 だけど、上品で落ち着いた雰囲気があり、冒険者らしい客の姿も2~3人ある。


 ……皆、強そう。


 また店内は、人型の模型に売り物の鎧が着せられ、陳列台には盾や篭手などが並んでいた。


 金属の商品だけでなく、外套や厚手の布服もある。


 見ていると、


「わぁ……いっぱい……」


(ん?)


 振り返ると、幼女が青い瞳を見開いていた。


 珍しそうに店内を見ている。


 キョロキョロ


 王都の店の品揃えの多さに驚いている感じかな?


(……ふふっ)


 幼女、かわゆい。


 隣のクレフィーンお母様も優しい表情だ。


 そうして天使な幼女に癒されながら、僕らは店内を物色する。


 さて、


(真眼君、お願いします)


 と、目に集中。


 ヒィン


 様々な商品に重なり、文字が浮かぶ。




【大海亀の甲羅鎧』


・魔物素材の全身鎧。


・水属性の亀の甲羅を加工し、水魔法への耐性を高めている。半面、物理防御は弱い。


・水魔法のダメージ減少率、約3割。


・値段、2万リド。約320万円。


・防御力、35。




【多重装甲の大盾】


・金属製の大盾。


・複数の金属を重ね合わせ、強度と耐久度を高めている。ただし、重量も40キロある。


・値段、2万5000リド。約250万円。


・防御力、50。




【火走りの篭手】


・金属製の篭手。


・内部に仕掛けがあり、10秒間、射程5メートルの火炎を噴射できる。


・複雑な機構なので、故障し易い。


・値段、2万リド。約200万円。


・防御力、15。




【暗黒竜の鱗鎧】


・竜素材の全身鎧。


・暗黒竜の無傷の鱗のみを使用し、全身鎧に仕立て上げてある。物理、魔法に高い防御力を発揮する。


・名工ガレベス・ロイド作。


・値段、42万リド。約4200万円。


・防御力、80。




(ぶ……っ)


 高ぁ!


 名工先生の鎧、めちゃ高いです!


 え?


 鎧1つで、家、買えちゃうよ?


(この人の防具……マジ、半端ない価格だわぁ)


 僕、半分、放心状態。


 あと店内の商品には、説明も値段も全く書いてないので、僕の反応に母娘はキョトンとしていらっしゃった。


 と、その時、


「もし、何かお探しですか?」


(え?)


 声をかけられ、振り返る。


 店員さんが近くに来ていた。


 ちなみに、女性。


 癖のある赤毛の髪をしたそばかすのある女の人だ。


 結構、若い。


 高校生……いや、大学生ぐらい?


 彼女は微笑み、


「何かご希望があるようでしたら、お手伝いしましょうか?」


 と、言ってくれる。


 あら、ありがたい。


 僕は頷き、


「ありがとうございます。えっと、冒険用の旅服と外套が欲しいんです。予算は7万以内で……」


 と、伝えた。


 女店員さんは頷く。


「なるほど」


「…………」


「確認ですが、身体強化の魔法は使えますか?」


「あ、はい」


「では、ある程度の重さは平気ですね。防御力と動き易さでは、どちらを重視されますか?」


「え……えっと」


 答えに詰まる。


(防御力、動き易さ……どっちが大事だろう?)


 考えていると、


「動き易さですね」


 と、クレフィーンさんが代わりに答えた。


(え……?)


 お母様?


 僕とファナちゃんは、揃って彼女を見てしまう。


 金髪の美女は微笑み、


「私たちのクランが受ける依頼は、討伐系がほとんどです。そして相手は、大型の魔物が多く、その威力の攻撃を正面から受け止めるのはほぼ不可能です」


「あ……」


「受け流す技術があれば、また別ですが……」


「僕、ないですね……」


「はい。なので、回避を重視した方がよろしいでしょう」


「なるほど」


 僕は頷く。


(確かにね)


 深緑の大角竜、多脚型ゴーレム、黒騎士……今までの敵は、どれも高威力の攻撃をしてきて、正面から物理防御は無理だったろう。


 うん、さすがお母様。


 雪火剣聖様。


 頼れる美人な先輩冒険者ですね。


 彼女は更に、


「それに、シンイチ君には障壁魔法もありますからね。もしもの防御はそちらに任せましょう」


「あ、そうですね」


 基本、回避。


 間に合わない時は、古代魔法『王霊の盾』で。


(ってことだね)


 僕も納得だ。


 と、お母様は店員さんを見る。


「予算内に収まるなら、小盾も1つお願いできますか」


「小盾ですか?」


「はい。この子は右手で短剣や魔法を使いますので、左腕1本で扱えるような物を。生存率を高めるために、1つでも多くの防具を用意しておきたいのです」


「なるほど、かしこまりました」


 女店員さんは微笑む。


(お、お母様……)


 心配し、色々考えてくれることが嬉しい。


 ファナちゃんも、普段あまり見れない格好いいお母様の姿に尊敬の眼差しを向けている。


 僕らの視線に気づく。


「あ……」


 少し恥ずかしそう。


 でも、僕は「ありがとうございます」と笑った。


 彼女もはにかむ。


 やがて、赤毛の女店員さんは場を離れ、良さそうな防具をいくつか手にして戻ってきた。


 カウンター机の上に置く。


 冒険用の服と外套は1着ずつだけど、小盾だけ2種類ある。


(ふむ……?)


 僕は、


 ヒィン


 真眼で確認する。




魔糸布ましふの旅服】


・魔力を宿した糸で作られた服。


・安価な鎖帷子などより丈夫であり、軽量な防具服である。


・値段、1万2000リド。約120万円。


・防御力、25。




竜髭りゅうしの外套】


・魔物素材の外套。


・厳選した竜の髭を編み込み、耐熱、防寒、防水、透湿に優れ、かつ薄い金属防具並みの防御力を宿している。


・一部の小型の魔物は、竜素材を恐れ、近づかない。


・値段、1万8000リド。約180万円。


・防御力、25。




 と、旅服と外套の情報。


 うん、


(悪くないね)


 僕自身は、納得だ。


 でも、問題は、2種類の小盾だけど、


 ヒィン




薄守水うすもりみずの小盾】


・魔物素材の小盾。


・金属盾の表面に水属性の魔物の革を張り、火属性の魔法への防御性能を高めている。


・火魔法のダメージ減少率、約6割。


・名工アラン・クーリエ作。


・値段、3万5000リド。約350万円。


・防御力、45。





神鉱銀しんこうぎんの小盾】


・金属製の小盾。


・特殊な魔法金属を使用し、物理、魔法の両方に高い耐性がある。受けた物理、魔法攻撃の威力を減少させる。


・物理、魔法ダメージ減少率、約4割。


・名工ガレベス・ロイド作。


・値段、3万8000リド。約380万円。


・防御力、45。




(おほ……)


 凄い。


 どっちも、魔法耐性があるんだ?


 片方は、火属性のみで6割も……。


 もう片方は4割だけど、物理と全魔法属性に対応って感じかな?


 数値的には同じ。


 あとは、作者の違い。


(ふむ……)


 見た目は、どちらも円形の小盾。


 薄守水の小盾は水色で、表面が鮫肌みたいになっている。


 あと、生き物の革らしい模様がある。


 神鉱銀の小盾は、美しい銀色。


 金属の表面も滑らかで、光の加減で虹のような波紋が見える。


 僕のように情報が視えないクレフィーンお母様は、女店員さんに違いを聞き、店員さんも性能の違いを説明してくれる。


 長い金髪を揺らし、お母様は頷き、


「なるほど」


「いかがしますか?」


「そうですね……シンイチ君は、どちらがいいと思いますか?」


「…………」


 大人のお姉さん2人と、金髪幼女が僕を見る。


(う~ん?)


 少し迷い、僕は、



「――こっちのガレベス・ロイドさんのにします」



 と、銀色の方を指差した。


 いや、特に深い理由はなく、単純に知った名前の人の防具だったからご縁があるかなと思っただけなんだけどね。


 だけど、お母様と幼女は『え?』という顔をした。


(ん?)


 見れば、女店員さんも驚いたような表情で僕を見ている。


 え、何?


 と、赤毛の店員さんが、


「はい、確かにこちらの小盾はガレベス・ロイド作なのですが……よく、おわかりになりましたね?」


「え? ……あ」


 僕は、ハッとする。


 そう言えば、


(今の店員さんの説明、性能だけで作者は言ってなかったか)


 と、今更、気づく。


 え、え~と、


「その、クレタの町で、ガレベス・ロイド作の小盾を見たことがあって。何となく、雰囲気が似てるなぁ……と」


「…………」


「…………」


「そうですか」


「う、うん」


「確かに、作り手の癖が作品に出ることはありますが。実際、気づく人は少ないです」


「……で、ですか」


「ええ。お客様はとても良い目をお持ちなのですね」


 と、嬉しそうに笑った。


 あはは……。


(チートな真眼のおかげです、すみません)


 と、内心で謝る。


 内情を知るお母様は『ああ……』と納得し。


 何も知らない幼女は、


「お、お兄様……凄い」


 と、素直に感心してくれる。


 ……う。


 少~し罪悪感。


 でも、ま、真眼も僕の能力の1つってことで許してね?


 そして、会計。


 登録魔刻石で、お支払い。


 680万円が消えていく……。


 支払ったあとは、実際に着用してみる。


(……ん)


 今まで使用していた旅服、外套に比べて、少し重量がある。


 でも、大差ないかな?


 身体強化魔法を使っていない今の状態でも、充分に動ける。


 神鉱銀の小盾も、


 ヒュッ ヒュッ


 左腕にベルトで固定し、軽く上下に振るけど……うん、問題ないね。


 お母様が、


「どうですか?」


「うん、大丈夫です」


「そうですか。ふふ、とてもよく似合っていますよ」


 と、優しく微笑む。


(あ……)


 ようやく目が合った。


 嬉しい。


 そして、


「えと、ありがとうございます」


 少し照れる。


 彼女も何だか艶っぽく笑っている。


 天使な娘さんも、


「お、お兄様……格好いい……」


 と、褒めてくれた。


(あは)


 僕は「ありがとう、ファナちゃん」と幼女の金髪を撫でてやる。


 彼女も、猫みたいに目を細める。


 うんうん。


 赤毛の店員さんも僕らを微笑ましそうに見つめ、


「点検、修理なども受け付けております。もし必要がありましたら、いつでもお気軽にご来店くださいね」


「あ、はい」


「本日はお買い上げ、誠にありがとうございました」


 スッ


 と、深くお辞儀。


 心を込めているのが伝わる、凄く丁寧な応対だった。


 う~ん、


(さすが、高級店)


 と、僕は素直に感心する。


 その時、


 ヒィン


 頭を下げた店員さんの頭上に、突如、真眼が文字を表示する。


(ん……?)




【アレーナ・ロイド】


・人間、女、21歳。


・名工の防具専門店レーダの2代目店主。


・初代店主レーダは、ガレベス・ロイドの妻であり、アレーナの母である。


・父親の作品が見極められたことを喜び、目の前の異国人らしい黒髪黒目の少年のことを気に入っている。


・好感度、60/100。




(……へ?)


 え……父親?


 この女店員さん、まさかの名工ガレベス・ロイドの娘さん?


 マジか!?


(ひぇぇ……)


 お父さんの小盾、選んでよかった。


 いや、まぁ、多分、別の人のを選んでも怒ることもなかったんだろうけどね?


 だって、


(あえて名乗らず、作者名も伝えず、客のために2種類の小盾を用意してくれたんだから)


 その辺は、プロ意識なのだろう。


 うん、信頼できる店。


 僕は頷き、



「――はい、また来ます」



 と、名工の娘さんに笑った。


 彼女も微笑む。


 そうして僕は、無事、良品の防具を入手し、母娘と一緒に『名工の防具専門店レーダ』をあとにしたんだ。

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― 新着の感想 ―
まさか店員さんが名工の娘だったとは・・・父親の作品を知ってもらい、評価してくれたから嬉しかったんだろうね。高くついたけどクレフィーンさんの助言のお陰で適切な防具を手に入れたからヨシ。次は武器かな?
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