Round.11 ”デビュー戦決定”
もう春も終わって夏に向かおうとするこの時期・・・
拓也はエスカレーター式の学校の為、高校受験を受けずにそのまま進学した。なので、全国の中学生が必死に受験勉強ををしている時でも精一杯練習することが出来ていた。
そして高校に入学し、みんな新しい生活に慣れてきている、そんな中・・・
拓也のデビュー戦が決まった。
詳細は以下の通りだ・・・
第●回 アマチュアキックボクシング大会
場所:私立桜道高校 体育館内
日程:7月18日(土)
時間:15:00~
ルール:一人1試合、ヘッドギア・レッグガード着用、肘打ちなし、倒れてからの攻撃なし
日程的には約3週間後だ。試合までの期間が短すぎず長すぎず、いい頃合だろう。
だが拓也はこの上の情報を知った時、かなり驚いた。
拓也「この場所・・・俺の高校じゃないですか!!!」
そう。この場所、私立桜道高校は・・・拓也の通っている高校だ。
ついでに言うとこの日は土曜日だが、昼まで学校がある。夏休み前の終業式だ。学校が終わってから試合があるのだろう。つまり・・・誰か(主にクラスメイト)に見られる可能性がある。
先生「そうみたいだな。ま、丁度いいな。会場まで迷うことないし。」
拓也「よくないですよ・・・誰かに見られる・・・」
先生「見せたらいいだろ。お前、実際もうかなり強いぞ。絶対勝てるって。」
拓也「そうは言ってもですねぇ・・・」
本人はあまり自覚していないようだが、拓也はかなり強くなっている。
最近では先輩よりも強くなり、先生でしかスパーリングもまともに出来なくなっていた。だが、先生相手だと拓也は毎日ボコボコにされるため、実感が持てないのだろう・・・(田村先生は元プロで日本ランカーだったので、メチャクチャ強い)。実は先生しか相手がいない原因は他にもあるのだが・・・
拓也「上半身裸でやるんですか?」
先生「あ~・・・ああ。そうだな。」
先生は拓也に見えないようにニヤリと笑った・・・。
拓也「はぁ~・・・上半身裸かぁ・・・見られたくないなぁ・・・」
拓也はこういうが・・・実際見た目はかなり変わった。
体重もかなり落ち、代わりに筋肉がついた。
現在、身長177cm、体重67kg。
デブだった面影はなく、しっかりと挌闘家の身体に仕上がっている(ちなみに体重-13kg)。
しかし、デブだった頃があるのでどうしても抵抗があるのだ。
先生「それに絶対勝たなきゃいけなくなったから・・・いいプレッシャーにもなるだろ?」
拓也「・・・そうですね。そう考えればやる気が出てきました!!」
先生「お前はウェルター級で出すつもりだ。リミットは68kg。1キロ余裕があるから減量は特にないな。しっかり食っていいけど・・・一応毎日体重は量っとけよ。」
拓也「はい!!」
先生「じゃあ、今日もビシビシ行くぞ!!」
こうして、試合まで練習は更に厳しくなっていくのだった。
それから更に1週間後・・・
所変わって、とあるジムの中に数人の男が集まっていた。
???「じゃあ、次の大会の参加者はこんな感じでいいかな。」
先生「そうですね、会長」
最初の”会長”と呼ばれた男は、この周辺のほとんどの格闘技の大会の主催を行なっているジム、”ゴールデン・ジム”の会長をしている大森 源次郎(67)だ。結構なお歳だが・・・まだまだ元気だ。
他にも何人か集まっている。全てこの大会に出るジムの代表だ。
会長「それにしても・・・今回は高校生が多い。今までにこんなに一度に出たことはないな。」
???「今までは2人だけでしたからね。しかし、今回は4人・・・」
会長「ウチからも新しく高校生が出るよ。色んな意味で問題児だがね・・・。君のところも確か・・・息子さんだったかな?出るみたいだね城島君。」
城島「はい。息子の”拳”が出させていただきます。」
城島と呼ばれた男は丁寧に答えた。身体は大きく、あごひげを生やした優しそうな男だ。
???「ま、誰が出てきてもウチの”瞬”が勝つから関係ないでしょう」
会長「君のところの高校生も元気かね?確か・・・”一之瀬グループ”の社長の一人息子だったよね?緒方君。」
緒方と呼ばれた男はいかにもエリート系の雰囲気を出している、メガネをかけている男だ。
緒方「はい。今すぐでもプロテストを受けられますよ。家庭の事情で高校卒業までプロはダメらしいですがね・・・」
会長「そうなのか。彼は”10年に一人の天才”とか呼ばれてるからね・・・はやくプロになった彼が見たいものだよ・・・」
城島「実際やったらウチの息子のほうが強いですよ、会長」
緒方「階級が違うのに、強いも弱いも関係ないでしょう?そちらはそちらでやって下さいよ。その代わりあの熱血ぶりは何とかして下さい、たまにイライラするんですよ」
城島「なんだと?そっちこそ、門下生よりアンタのほうが迷惑だ。その口調がイライラするから、勘弁してくれ」
会長「まぁまぁ・・・仲良くやりなさい。」
城島と緒方が若干けんか腰になり始め、会長がそれをなだめていたときの事・・・
先生「あの・・・会長」
会長「ん?田村君、どうかしたかね?」
先生「今回ウチからでる、”小林 拓也”の試合の事なんですが・・・」
会長「ふむ。確かこの子も高校生だったね?」
先生「はい。それで・・・相手を格上にしてもらえませんか?それもかなりの格上に」
緒方「なんだ、その選手はそんなに強いのか?初試合だろう?無理をさせないほうがいいんじゃないのか?」
いつの間にか言い争いをやめた緒方が先生のほうを見ていた。・・・城島はまだ睨んではいるが。
会長「ふむ。私もそう思うが・・・何か問題でもあるのかね?」
先生「はい。簡単に言えば強いんです。でも・・・問題はそこじゃない」
城島「どういうことだ?」
いつの間にか、城島も話を聞いていた。
先生「スパーリング中の”殺気”が半端ないんです。ウチの道場では選手が彼とやって・・・その”殺気”に押されて、すでに三人辞めました。もう、相手をしたくないと言って・・・。たぶん彼は・・・同格とやると相手を精神的に”壊して”しまう。」
会長「そこまでなのか・・・」
先生「はい。彼は・・・そういう意味ではホントに危険です。普段は気弱で優しいやつなんですがね・・・」
会長「・・・わかった。”小林 拓也”君の相手に関しては、じっくり検討しよう。君がそこまで言うくらいだ・・・相当危険なんだな。」
先生「はい・・・宜しくお願いします。」
一方、拓也はそんなことがあったことは知るはずもなく学校で授業を受けていた。
拓也「(そろそろ定期試験があるからな~、授業真面目に受けないと。それにしても、試合かぁ・・・)」
前で教師が授業をしているが、拓也の耳にはあまり入ってなかった。
拓也「(いざ出るとなったら実感わかないなぁ・・・それに会場ココだし・・・)」
拓也「はぁ・・・」
拓也は誰にも気付かれないような小さなため息をついた。
このとき、まだ拓也は気付いてなかった・・・自分の中に潜むモノに・・・
そしてそれが・・・拓也の運命を大きく変えることになるとは・・・まだ誰も知らない・・・
どうも!安息香酸でっす!!
次回くらいからかな~・・・タッ君、デビュー戦です。
そういえば・・・タッ君のファイトスタイル全く書いてなかったッスねぇ^^;
・・・・・・試合のときに明らかになります!!
ではみなさん。また次回お会いいたしましょう!!