いよいよ聖女失格ですね
そして、私は聖女をやめた。ただのライザとして自由に生きる。それはまだ難しそうだけど、私はギル様の指導の下、ひとまず、一日一欲生活に励んでいた。
「ケーキ丸ごと一個食べたいです!」
「一日四食っていう贅沢をしたいです!」
などなど。
私のわがまま——「貴様の望み、食い物ばかりでないか! この意地汚娘が!」 とザインさんは言ってたけど——を、全部ギル様はかなえてくれた。おかげさまで、ギル様はいっつも私の部屋を訪ねてくるようになって、その結果、ザインさんもやって来るので、私の生活は毎日が賑やかだった。
「いつもありがとうございます。お礼として、私に何かできないでしょうか?」
私が言うと、
「くっくっく。その必要はない。だが……そうだな、もしもそなたが良いと言ってくれるのなら、今夜、我と共に夕食など……」
「えっ、そんなことでいいんですか?」
ということで、その日の夜、私はギル様と食卓を囲むことになった。
「ここの暮らしはどうだ、ライザ?」
と、ギル様は切り出す。
「おかげさまでとっても楽しいです! 魔王軍最高! 魔王城最高! って感じです!」
「くっくっく。ライザが楽しそうで良かった。実のところ、我は心配していたのだ」
「どうしてです?」
「そもそも、そなたは我に無理やりさらわれているのだぞ?」
「はっ! そういえば、そんな設定でしたね! すっかり忘れてました!」
驚いてる私に、
「くっくっく。ライザは変わっているな」
と、ギル様はしばらく笑った後、
「……ずっと尋ねたかったのだが、そなたは……嫌ではないのか? 穢れた魔族である我と、こうして共に過ごすことが」
と、今度は打って変わって、真剣な眼差しを向けてきた。
「そんなことありません。実のところ、私、魔族を穢らわしいとも恐ろしいとも思ったことがないんですよ。こんなことを言うなんて、いよいよ聖女失格でしょうけど」
「なぜそう思うのだ?」
「聖教会は、魔族を悪そのものだと言います。女神様にあだなす、穢れた存在だと。だけど、清らかなはずの聖人たちの方が、私にはずっと恐ろしくてたまらなかった。当然のように私を罵り、手を上げ、全てを支配した、あの人間たちの方が、よっぽど醜い生き物のように思えた。
どんな種族にだって、どんな人にだって、醜い部分はあるんだと思います。そこに、聖も魔も関係ありません。だから、私には、魔族だから穢れている、恐ろしいとは、どうしても思えないんです」
「くっくっく。そうか。そなたはずっと変わらないのだな」
「どういうことです?」
「我は以前、そなたに会ったことがあるのだ。ギークスの森の戦いでな」
それは、私がここに来る直前に従軍した戦いだった。
皆様に楽しんでいただけること第一の作品にしたいので、ご意見、ご要望をどしどしお寄せくださるとありがたいです! 全力でそれに応えさせていただきます!




