自由、ですか?
「……でも、今の私は、ここでのびのびさせていただいています。このままでは、私は普通の人間になってしまう。聖女の力を使うには、以前のように厳しい生活をし、女神様の加護を得なければ……」
言いながら、気付いた。あれ? もしかして、私、めちゃくちゃやばいこと教えてるのでは? 聖女の力を手に入れるには、手っ取り早く、私を苦しめるといいんですよー。そう言ってるのと同じだよな、これ?
うあああ、しまった。黙っておけば良かったのに。私は激しく後悔した。
でも、いずれこうなることは決まってたのかもしれない。魔王様と参謀さんが、聖女の力に食いつかないはずないし。
私は今度、魔王軍でブラック聖女ライフを送るんだろう。まあ、人生なんてそんなもんだよな。私は完全に未来を諦めた。
「くっくっく。では、そなたに命じよう」
魔王様は邪悪な笑みを浮かべ、そして言った。
「もう聖女はやめるのだ」
「はい。これからは魔王様の命令に従って、聖女を……って、え?」
ちょっと待って? 魔王様、今、なんて言った?
「そなたの心を殺してまで、そのような力を得ようなどとは思わぬ」
あまりにもあっさりした魔王様の台詞に、私はあっけにとられる。
「しかし、魔王様! 聖女の力を手に入れるために、この娘をさらってきたのではないのですか⁉」
「いや、我ははなから聖女を利用するつもりはない。そして、この先もな」
え……? それならどうして、魔王様は私をさらったんだ? 確かに、私をさらっただけでも、エレアールの戦力は大幅に削れるけど……。だけど、それだったら私をさっさと殺すはずだ。
分からない。この魔王様が考えていることが、さっぱり分からない。
「して、ザイン。我の決定に異論があるのか?」
そう言われ、
「滅相もございません。全ては魔王様の御心のままに」
と、ザインさんは頭を下げた。
「そうだ、そなた、名は何と言う? いつまでも聖女と呼んでいて、すまなかったな」
今度、魔王様は私に向き直る。
「……ライザ、です」
変に緊張しながら、私は答える。
「そうか、ライザ」
名前を呼ばれ、心臓がどきっと脈打つ。聖女以外の呼ばれ方をしたのなんて、いったいいつぶりだろう。
「良いか? 今日からそなたは、ただのライザだ。エレアールの聖女ではない。よって、もはや捕虜でもない。これからは自由に生きるがよい」
きっとこれは喜ばしいことなんだろう。分かってる。だけど——
皆様に楽しんでいただけること第一の作品にしたいので、ご意見、ご要望をどしどしお寄せくださるとありがたいです! 全力でそれに応えさせていただきます!