まお虐……!
そして、ついに衣装チェンジを終えた魔王様が現れて——
この気持ちを、どう表現すればいいんでしょう。そう、例えば、ステーキとミルクココアを一気に口に突っ込まれたような……。こんな凄惨なものを見たのは、僕、生まれて初めてかもしれません。そして、これくらい次にとるべき反応に困ったことも。うああ、もう、今すぐ掲示板の質問ボックスに書き込みたいです。
『すみません。至急の質問です。目の前で、魔王様がロリータ服を着ました。こういった場合、どう反応するのが正解ですか? ちなみにめちゃくちゃ似合ってません。だけど、それを言ったら、傷付けてしまうと思います。いっそのこと、ここは笑った方が逆に良いのでしょうか? 誰か、同じ経験したことある方、答えてくださると嬉しいです』
といっても、同じ経験した人がこの世界に存在するんでしょうか……?
もう、ここはライザさんの反応を真似するしかありません。ライザさん、自分のやったことなんですから、ちゃんと責任取ってください……!
「ふーむ」
見ると、ライザさんは顎を撫でながら、物凄く真剣な表情で魔王様を眺めてます。
「ちょっとふわっと回ってみてください」
「なんか、かわいめのポーズ取ってくれませんか?」
おまけに謎の指示を出し始める始末。そして、魔王様も魔王様で、真面目に言われた通りやってます。だけど、魔王様、確実にぷるぷるしてるんです。恥ずかしいんでしょう? 恥ずかしいんですよね、魔王様? だったら、断ればいいのに! どうして顔真っ赤にしながら、一生懸命手でハート作ってるんですか?
本当に何なんでしょう、この状況。僕、何を見せられてるんでしょう。魔王様にロリータ着せて眺めまわすって、どういうプレイなんですか? 辱しめプレイなんですか?
恐るべきまお虐(魔王への虐待)……! 僕は魔王様をここまで翻弄できるライザさんの力に震えました。
「なるほど。その格好だと、私がさらわれた直後のシーンはこうなりますね」
ライザさんはそう言って、勝手に回想を始めました。
*
気が付けば、私は薄暗い大広間に立っていた。ここは……城、だよな? なんか、やけにおどろおどろしい雰囲気なんだけど。あと……周りをどう見ても魔族と思われる方々が取り囲んでるし……。
うん、認めよう。ここ、魔王城だ。
というか、隣にいる、私をさらってきたこの人——あれ、誰だ、これ?
頭に生えた二本の角には、それぞれ大きなリボンが結ばれている。巨大な身体を包むのはピンク色のロリータ衣装。それもリボンとフリルが満載の、激甘なテイストのやつ。背中からは真っ黒の翼が生え、だけど、なんだかフローラルのいい香りがしてる。
見た目から読み取れる情報——カオス!




