聖女のいる日々
その日の夜、魔王様は私をねぎらってくださった。二人で酒瓶を開け、食事を囲む。ひどく久しぶりのことだった。
「くっくっく。今日はご苦労だったな。付け加え、最近はずっとライザの面倒を見てもらった。礼を言うぞ」
「私の苦労などたかが知れています。魔王様はあの娘に、かなり気を配っていらっしゃるようですから」
「ライザは色々とあるからな。だが、そなたと出会いたての頃も、かなり世話を焼いた気がするぞ」
「そ、それは別の話です。付け加え、ライザにだけ名前呼びを許すなど、特別扱いがすぎはしませんか?」
「くっくっく。まあ、それには個人的な事情があってな。だとして、そなたには、魔王と呼んでいてほしいのだ。初めて我をそう認め、そして呼んでもらえた時、我は本当に嬉しかったのだからな」
「もちろん、そう呼ばせていただきますよ。そして、私がそうお呼びするのは、生涯かけて、あなた様だけです」
「それにしても、懐かしいな。そなた、出会って間もない頃は、我のことを何と呼んでいたか覚えて……」
「や、やめてください! 恥ずかしい過去の話は!」
その時、
「こんばんは! 丸焼きを一人で食べるのは流石に申し訳なくて、おすそ分けに来ました。ご一緒させてください」
と、巨大な皿を運んで、ライザがやってきた。
そして、あっという間に三人での饗宴が始まった。ライザは早速食べ物できまってるし、騒がしいことこの上ない。せっかくの魔王様との時間を邪魔するなど、やはりこの娘は——
「私が乱入するのって、いつもと逆で、これはこれでいいですね。いやー、来て良かったです。なんだかんだ、お二人とご一緒するのが、一番賑やかで楽しいと思うんです」
「くっくっく。確かに楽しいな。そうであろう、ザイン?」
「……そうですね」
この娘のいる生活も、案外、私は気に入っているのかもしれない。
「ところでザインさん、恥ずかしい過去って何ですか? 昔、何しちゃったんですか? 教えてくださいよ!」
前言を撤回する。
「あまり調子に乗るなよ、このがんぎまりが……!」
四章が終わりました! 明日から、第五章になります。新しいレギュラーキャラが登場する予定です! 実は前の回でにおわせ発言(?)もあり…...。ぜひお楽しみに待っていただけると嬉しいです。ここまでお付き合いくださり、ありがとうございました!




