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捕虜と出かける魔王様って……

 そんなこんなで、捕虜生活は穏やかに過ぎていった。私は特にすることもなく、ぼんやりと窓の外を眺めて毎日を過ごしていた。


「どうだ、聖女よ。ずっと部屋の中にいては退屈だろう。そろそろ外に出たいのではないか?」


 そんな私の様子を気にかけてくれたのか、魔王様はある日、そう提案してきた。


「いや……捕虜を外に出していいんですか?」


「くっくっく。安心しろ。問題に備え、我が隣で監視しておくからな」


「問題なんて起こしませんよ。私は完全に餌付けされてますし、ここで問題を起こすメリットなんてないでしょう?」


「いや、この魔族領を、そなた一人で出歩くのは危険だ。だが、安心しろ。そなたのことはこの我が守ってやる」


 あ、問題って、そっちの意味だったのか。まったく、優しいがすぎるな、この人。


 ということで、私は魔王様と外出することになった。いや、捕虜が魔王様と出かけるとか、大分状況がおかしいけどな。


 魔王城を出る前、魔王様は私、そして自分に認識阻害の魔法をかけた。私が聖女とばれても、魔王様が魔王様とばれても、どちらも大騒ぎは避けられないからだ。


 そして、私たちは城下町に足を踏み入れた。町は小さいながらも、きれいに整備されている。露店が並んで、人々が行きかっている。こうしてみると、人間の街とあんまり変わらない。


 それにしても、魔王領には、色んな見た目の魔族がいるなあ。私がきょろきょろしていると、

「ほら、聖女。食べ物だ」

 ふいに魔王様が露店で買った串焼き肉を差し出してきた。


「ありがとうございます」


 私は素直に受け取った後、

「くうっ、しみるうー! 口の中では肉汁が、そして、頭の中では脳汁が溢れてやがるぜ!」

と、またまた盛大に感動してしまう。


「くっくっく。良かった。そうだ、あちらの店のものも買ってやろう」


 そして、外出は食い倒れの路線に傾いていった。全部買ってくれたし、この勢いなら、今日で全制覇を目指せるんじゃないのかな?


 こんなことをしたのは、生まれて初めてで、私、いつの間にか結構……ううん、めちゃくちゃ魔王様との外出を楽しんでるのでは?


 その時、

「魔王様! またその娘にお構いになって!」

という声と共に、向こうからザインさんが駆け寄ってきた。


 思い出したんだけど、この人は、魔王軍参謀、智将ザインだ。結構有名人。そして、このザインさん、魔王様といると、いっつもどこからか現れるんだよな……。


「どうして私たちだって分かったんですか?」


 それにしても、よくも今も見つけられたな。魔王様が認識阻害の魔法をかけてるはずなのに。


「何を言っている。私はいかなる時も魔王様の波動を察知できるのだ」

と、当然のことのように言うザインさん。


「はあ……」


 だけど、まったく意味分かんないぞ、その理論。


「して、ザイン。我に何か用か?」

と、魔王様。


「魔王様、捕虜にこれ以上お構いになる必要はありません。それに、そもそもこの娘、本当にエレアールの聖女なのですか? 今とて、およそ聖女に似つかわしくないキャラクターになっていたではありませんか」


 いや、感情が高ぶると、ちょっと口調が変わるだけなんですけど。って、それはそれでおかしいのか?


「きっと、何らかの精神暗示をかけられているからなのです! この娘は、暗示で自分を聖女と思い込んでいる、ただ意地汚いだけの娘なのですよ! たまに現れる別人格が、その何よりの証拠です!」


 え、めちゃくちゃやばい設定にされてるぞ、私?


「まあ、何でもいいだろう。辛い目に合っていたのだ。聖女でないとて、放ってはおけまい」


 魔王様聖人……。


 だけど、

「私はきちんと聖女です!」


「ならば、証明してみたまえ!」

と、ザインさん。


「おうよ!」

皆様に楽しんでいただけること第一の作品にしたいので、ご意見、ご要望をどしどしお寄せくださるとありがたいです! 全力でそれに応えさせていただきます!

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