どうやらこの娘は本物の聖女であるらしい
「……それと、警備隊から、ちょっとした問題が発生したとの報告が届いております。どうやら、結界の一部が弱まっているようで。おそらく老朽化かと。破られ、侵入されたのならば、一瞬でそうと分かりますから」
私は魔王様に午前の報告をしていた。
「だとしても、なるべく早く手を打ちたいものだ。しかし、困った。結界に精通した者たちは、皆出陣させてしまっている。現在、修復できるほどの腕前の持ち主は……」
「ふっ、私の出番ですね」
その時、後ろから嫌な声がした。振り向くと、ライザがポーズを決めて立っている。なぜ魔王様の執務室にこやつがちゃっかりいるのだろう。
「私が行ってきます。結界術は、こう見えて得意なんですよ」
しかし、
「くっくっく。許さぬ。なぜなら、心配だから」
と、魔王様。
そういえば、魔王様は、ライザを城からほとんどお出しにならない。城内を歩く時すら、必ず付き添われるくらいだ。まったく、過保護でいらっしゃる。
「ということで、我が共に転移して……」
「それはなりません! 魔王様には、今日中にこれとこれと、さらにこれにも目を通していただかねば!」
私は書類の山を魔王様の前に置く。
「そうであったな。すまないが、我は行けそうにない」
ふはは、残念だったな、ライザ! この私が、貴様と魔王様を二人で出かけさせるはずがないだろう!
「代わりにザインが行く」
「え?」
あまりの衝撃に、一瞬、頭の中が真っ白になった。
「頼むぞ、ザイン」
「はい。魔王様の御心のままに」
ああ、なんてことだ。魔王様のご指示とあれば、このザイン、断れるはずがない。
*
そして、私たちは結界付近に降り立った。
「ザイン様に来ていただけるとは!」
と、警備隊は沸き立つ。
「私はただのおもりだ。この聖女のな」
しかし、ライザを前に出した瞬間、明らかに歓迎ムードが消滅した。
「よろしくお願いします!」
と、阿呆のライザだけが、相変わらずにこにこしている。
不安そうな顔で警備兵たちが見守る中、ライザは結界に触れる。
「あー、これは糸が無理やり引っ張られて、布目が粗くなった状態ですね。糸の方もかなりやられちゃってます」
「糸や布というのは何だ?」
「結界っていうのは、何本もの魔力の糸で組まれた布のイメージなんです。その布が、外部のものを遮断する。糸をどう組むかで、結界の精度は変わってきます。組み方にも色々あって、強度を持たせる組み方とか、他にも、糸を作る魔力の種類を変えることで、結界の性質を変化させ……」
ライザは長々と語った後、
「ということで、この結界の組成は理解したので、簡単に直せますよ」
と、手をかざす。
「そういえば、貴様、魔力は今使えるのか?」
ライザは特殊な人間だ。なんでも、女神に祈ることによって魔力を得ているとか。そして、祈りのためには、痛みを伴った感情が必要らしい。
「大丈夫ですよ。私、ここのみんなを守りたいって、本気で願ってるんです」
そして、ライザは言葉通り、結界を一瞬で修復してしまった。
「貴様、まるで本物の聖女のようではないか……」
悔しくも、私は感嘆のため息をついてしまった。
「いや、私、本物って前から言ってますよね……」




