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魔王様、どうしちゃったんですか?

「……というわけで、祖国での扱いに比べれば、ここの生活は至れり尽くせりなんですよ! だから、私をさらってくださった魔王様には、感謝してもしきれません! 本当にありがとうございます!」


 私は深々と頭を下げる。


 最初は啞然としていた二人だったが、

「この小娘……」

と、側近の人が額に青筋を浮かべる。


「我々をおちょくるのもいいかげ……」


 その時、

「ザイン」

と、魔王様が低い声で側近——ザインさんの言葉を遮った。


 すごい雰囲気……。もしかしなくても、私、この人を怒らせてしまったみたい——


「今すぐ料理人に、ありったけの食事を作るよう頼んでこい。聖女に食わせる」


「しかし、この女は我々の敵、エレアールの聖女なのですよ!?」


「関係ない」


 魔王様は、そう言って私のことを見た。

 

「だってこの子、かわいそうじゃん……」


 ……いや、ちょっと待って。泣いてるんですけど、魔王様。


「かしこまりました。今すぐに行ってまいります」


 そして、ザインさんは出ていった。私は魔王様と二人残される。うーん、意味分かんないな、この状況。あ、魔王様がハンカチで涙をぬぐいだした。そしてハンカチ、子猫ちゃん柄だ。どうしよう。これ、突っ込むべきなのか?


 それから待つことしばらく。ザインさんが両手に皿を載せて戻ってきた。


「さあ、聖女よ。好きなだけ食べるといい」


「……ほ、本当ですか?」


 何か罠があるのかもしれない。一瞬そう考えて、だけど誘惑には勝てなかった。だって、すっごく美味しそうなんだもん! 私は物凄い勢いで、食事にむしゃぶりつく。


「ひゃっはー! 肉だ! 肉だああ! それに糖分! あと脂! やべえ、頭ががんぎまっていくうー!」


 私が感動していると、

「魔王様……。この娘、その……やばいのでは?」

と、ザインさんの顔が、若干引いているように歪んでいく。


「くっくっく。よほど料理が美味いのだろう。気持ちのいい食べっぷりだ」


 魔王様は相変わらずの暗黒微笑だ。


「しかし、これほどまでに喜ぶとはな。国元では何を食べていたのだ?」


「草、ですかね」


「草⁉」


 二人が声をそろえる。


「ええと、修行の一環なんです。聖なる力を高めるために、俗世の食物を断つっていう。そのせいで、私、基本食が聖域に生える草だったんですよ」


「それで……死なぬのか?」


「聖女の魔力で、生命力は保てますから。でも、心はばりばり死んでましたねー、あはは」


 私が笑うと、

「かわいそうに……」

と、またも魔王様はハンカチを目に当てる。


「ここでは遠慮はいらぬ。好きなだけ食べるといい」


 魔王様に言われるまま、私は出された食事を完食した。


「いやー、こんなにお腹いっぱいいただいて、どうもごちそうさまでした」


 深々と頭を下げる私に、

「くっくっく。それは良かった」

と、魔王様は言う。


「聖女よ、この魔王城ではゆるりと過ごすがいい。もちろん、捕虜として、だがな」


 結果、私は魔王様公認でくつろげるようになった——のだが……。


「魔王様……そこにいらっしゃいますよね……」


 そう言うと、扉の隙間からこちらを覗いていた魔王様が姿を現す。なんだろう、あれから、魔王様にめちゃくちゃ気にかけられてるみたい……。


「なんか……すみません。毎日来ていただいちゃって……」


「くっくっく。そなたを監視するのも、城の主たる我の務め。あと、これは差し入れだ」


「わあ、クッキー。美味しそうですね! ありがとうございます!」


「くっくっく。我が手作りしたのだ」


 うん、突っ込まないぞ……!?

皆様に楽しんでいただけること第一の作品にしたいので、ご意見、ご要望をどしどしお寄せくださるとありがたいです! 全力でそれに応えさせていただきます!

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